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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月舞
運命の出会い編

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不穏

不穏〜お届けします。


三日月舞

 運命の出会い編〜不穏〜




 本当に充実した毎日だった。

 

 朝起きるとすぐ横に愛しい人が寝ている。

 どれだけ寝顔を見ていても飽きることがない。

 舞は時計を見て「おはよう、結」と起こす。


「ん……おはよ……もう……また寝顔見てたでしょ?恥ずかしいよ」

 

 そんな朝の繰り返しが二人の幸せだった。

 こんな日が永遠に続くと思っていた。

 

 2人は休みを合わせ、水族館デートで楽しい時間を過ごした。

「私、今こんなに幸せなの……怖いくらい」

「結、私もだよ」

 

 浮かれていたのか?

 周囲の視線に気づかず、二人は普段通りの会話をしていた。

 男が二人を影から見ていた。

 明らかに普通の人間ではない。

 身体つきにも、立ち姿にも、暴力が染み込んでいるような男たちだった。

 

 ペンギンショーは混んでいて、通路はまるで満員電車のようだった。

 二人は人の波に飲まれながらその手を離さずいた。

 

 男が結に近づく。突然結が小さい悲鳴をあげた。

「キャッ!!」

 

 舞の心臓が、早鐘を打つ。

 すぐに結の手を引き寄せた。

「結!どうしたの?」

 

 小声で結が震えた声で

「今……スカートの上から誰かに触られたの。痴漢、かな……」

 

 舞の鼓動がドラムビートのようになる……

 (落ち着け私……気のせいかもしれないし……慌てちゃダメだ)

 

 結の手を取り女子トイレに駆け込む。

 舞が深呼吸し、記憶を探る。

 人混みの向こうに、同じ男の顔を二度見た気がした。

 

 (私のせいだ……やっぱりアイツらが動き回ってると思った方がいい)

 

 カバンをゴソゴソとまさぐり舞は1枚の名刺を結に渡した。

「これを持ってて」

 名刺には可愛い妖精の絵と『環境保護団体』と言う肩書きと、「ゆか」という名前と電話番号が書いてあった。

「可愛い妖精さん。この人は誰なの?どうしてこれを私に?」

「この人はゆかさん。もし私がいない時に困ったことになったらこの人に連絡して助けを求めて欲しいの」

「環境保護団体?」

結が不思議がる。

「環境保護団体って書いてるけどこの人は、私たちみたいな人のことを知ってる。すごく頼りになる人なのよ。でもそんなことにならないように私が結を守るから」

 

 きつく、抱きしめる。

 その力強さに結は心地よささえ感じていた。

 

「うん。ありがとう」

 舞の真剣な顔に結の顔も引き締まる。

 少し緊張した顔で

「わかった……少し怖いけど……」

「今日はもう帰ろうか?痴漢とか私が見つけたら容赦しないわ!大丈夫だからね!」

 

 結を抱き寄せ耳元で囁く。

「私は少し、防犯用の道具を見てくる。結はこのまま私の家に帰って、すぐに鍵をかけて待ってて」

「身を守るためって……」

 結が不安そうに聞く

「万が一の時のためよ。本当に」

 

 結はキョロキョロと辺りを注意しつつ舞の部屋に向かう

 (大丈夫だよね?早く帰ってきて)

 

 

 舞は防犯グッズを買い足すつもりだった。

 けれど、胸の鼓動が治まらない。

 バッグの中のスタンガンを握りしめた瞬間、胸騒ぎが跳ね上がった。

 舞は踵を返し、走り出した。

 

 

 結がマンションに入り震える手で鍵を開ける。

 震えてうまく鍵が入らない。

 ガチャガチャと音がしてその音にすらビクビクしてしまっていた……

 ようやく鍵が開きドアを閉めて鍵を掛けた。

    

 ホッとした瞬間――鼻先に嫌な臭いがかすめた。

 何?タバコ??

 

 心臓が締め付けられるような恐怖が、結の身体を襲う。

 本能が危険を告げていた。

 誰かいる!

 

 鍵を開け、ドアノブに手を伸ばした瞬間――

 万力のような力で腕を掴まれて部屋の方へ引きずられた。

 三人の男達が視界に入る。

 鍵はかかっていた。

 それなのに部屋の中に人がいる。

 悲鳴をあげようとした瞬間、男の巨大な手のひらが結の顔を覆う。

 結の口どころか顔半分覆い尽くし、息も出来ないほどだった。

 腕を捻じあげられ痛みで動けない。

 

 男の手が、結のスカートに伸びた。

 乱暴に布を掴まれた瞬間、全身が凍りつく。

 

「やっぱりそうだぜ」

「当たりだな」

 

 羞恥心、恐怖、怒り、不安。

 すべてがぐちゃぐちゃに入り交じったまま、結は男の脛を蹴った。

 

 背中を男に蹴られ、ドアにぶつかりけたたましい音が鳴る。

 

「この実験動物が!」

 

 男の意味の分からない罵声。

 そして硬い靴底の感触。

 背中を蹴られた結は、ドアに頭を打ちつけた。

 意識が遠のく。

 その向こうで冷酷な声がする。

 

「お前もう終わりだ、一生モルモットだよ!」

 

 頭が真っ白になる。

 

 舞……舞……舞……舞……舞……舞……舞……舞……………………助けて!!

 

 男が結の髪を掴もうと手を伸ばす。

 ――刹那

 すごい勢いでドアが開き疾風のように舞が飛び込んできた。

 先頭の男にスタンガンを当ててスイッチを押す。

「がっ……あ、が……ッ!」

 男は変な声を上げながら悶絶して動かなくなった。

 

「結!!逃げて!逃げるのよ!」

 舞は残りの男にスタンガンで威嚇しながら結を立たせる。

「逃げて!お願い!!」

 

 結は四つん這いで部屋を出てふらふらと外に歩き出した

 

 ああ……舞……来てくれた。

 ――でも

 

 舞はドアの前に立ち塞がり拳を上げた。

「先には行かせない!」

 後ろ手にドアの鍵をかける。

  

 一人の男が舞に突っかかっていく。

 前蹴りが、男の鳩尾に突き刺さる。

 男が怯まずに向かってきてタックルされた。

 そのまま抱きつかれ肘で殴ろうとするが頭を鉄のドアにぶつけられ頭がクラクラと視界がぼやけた。

「ちくしょう、行かせない!」

 (結だけは……守る!)

 

 覚悟を決めた瞬間、舞の魂の奥底からなにかがせり上がってくる気がした。

(な……何?これは?)

 

「おい、ちょっと待て」

 三人目の男が部屋の奥から顔を出す。

 その顔を見て舞は衝撃で息ができなくなった。

 身体がガクガクと震える。

 先程まで魂の奥でうねっていた何かが、恐怖に塗り潰されていく。

 

「お前は……」

 握っていた拳にも力が入らない。

 男は記憶を探るような目をして舞の顔を凝視する。

「あん?……」

「!!」

「ははーん思い出したぜ」

「六年前か?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、

 舞の世界が凍りついた。

 絶望したように身体から力が抜けた。

 脳裏にはっきりと機械音が蘇る。

 身体の奥から全てを吸い上げられるようなあの不快感まで。

 あの音。

 あの灰色の天井。

 拘束具の冷たい温度。

 忘れたはずの全てが舞の皮膚の下で一斉に蘇った。

 

「もう逃げられないのはわかってるよな?」

 

「あ……あ…………お願いします……。あの子だけは巻き込まないで……。私が代わりになるから……」

 

 諦めと絶望が舞を支配する。

 涙が流れる。

 唯一結は……結だけは……

 

「本当に約束よ……あの子だけは巻き込まないで……」

 

 男は納得した顔で舞を立たせた……

 スタンガンで伸びてた男が立ち上がる。

 舞の頬を張った。

「このふたなり実験動物が!」

 

 舞の唇が切れ血が流れる。

(ちくしょう……私に護る力があれば)


 

 

 

 結は涙をボロボロ流しながら部屋を出てマンションからも出た……外は雨だった。

 傘もささず雨か涙か分からないぐらい泣きながら、結は少し離れた路地に座り込んで動けずにいた。

 

 舞が男達に連れられ車に乗せられた。

 結が激しく動揺する。

「助けなきゃ」

 しかし恐怖で一歩も動けなかった。

 自分への悔しさで涙が溢れる。

(私に力があれば一緒に戦えたのに)

 

「早く乗れ、実験動物」と背中を蹴られ舞は後部座席に頭から突っ込まれた。

 リーダー男が残りの二人に小声で指示を出す。

「わかってるな?もう一人近くにいるはずだ」

 

 舞が車に押し込まれ車が走り去る……

 ――結は咄嗟にナンバーを覚えた……

「ま、まい……ああ……どうしよう……警察?舞……どうしたらいいの……」

 

 その時、思い出した。あの名刺だ。

 結はポケットから名刺とスマホを取り出す。

 何回もスマホを落としながら震える指で番号を押す。

 呼出音がしばらく鳴り留守電に切り替わった。

 

 すがる思いで状況を説明する。

 声は震えていた。

 それでも、頭のどこかだけが少しずつ冷えていく。

 言わなければならない言葉をひとつずつ必死に言葉にした。

 この一言一言が舞を助けるヒントになるはずだ……舞……舞……

「舞を助けてぇ」と叫び留守電の制限時間になり切れた。


 どのくらいの時間が経ったのだろう。

 冷たい濡れたアスファルトに座り顔を膝に埋めて震えていた……

 

 すぐ前に人の気配がした。

 はっとして顔を上げる前にタバコの匂いが鼻をつく。

「こんな近くにいるなんてな」

「探させやがって!」

 

 顔を上げた瞬間張り手が頬を打ち痛みで全ての思考が止まった。

 抵抗する気力も、意思すらも、張り手一つで飛ばされたようだった……

  

 唇が切れ、血の味が口内に広がる。

 ぞくり、と背中が震えた。

 (あ……甘い)

 心臓の鼓動がゆっくりと大きく鳴る

 

視界の色が赤いフィルターがかかったようになり

 結の世界から音が消える。

 

 身体の奥底からなにか得体の知らないものが這い出てくる。

 結という器を破り、怪物が目を覚まそうとしている。

 そんな悪寒と恐怖が、喉元まで込み上がった。

 

 

 雨が強くなり唇からの血が薄まると怪物の気配が消えた…………

(なんだったの?さっきのは……)

 

 そしてまた男の暴力が結に向く

「今夜は二匹だぜ!」

 

 下卑た笑い声が、途中で途切れた。

 一筋の疾風が吹いて誰かが走り込んできた。

 

 次の瞬間、振り抜かれた拳が男の顔面を捉える。

 男の身体が五メートル近く吹き飛び、壁に叩きつけられた。砕けた歯が雨に濡れた地面に跳ねた。

 男は壁まで吹き飛び白目をむいて動かなくなった。

 

 もう一人の男は腹に強烈な連打を浴びて自分の吐瀉物の中に顔を埋めて動かなくなった。

 ビシャっと湿った音がした。

 

「お待たせ、遅くなってごめん!」

 

 青い髪のチャーミングな女性が結に手を差し伸べながら笑っていた。


「私は、ゆか——もう大丈夫よ」


 

 


 

読んでくださりありがとうございました♪

次回更新は明日の19時です。

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