罪と罰と覚悟
罪と罰と覚悟〜お楽しみください
三日月舞
The First Mission〜罪と罰と覚悟〜
靴底が鉄板に触れたその刹那、戦闘モードへ移行した。結はボートの上でライフルのスコープ越しに舞の動きを追い続けていた。
舞は貨物船のデッキを獣のように素早く移動する。
三人の警備員の背後に静かに回り込む。
一人目の警備員の首元に手刀を叩き込み、崩れ落ちる前に二人目、三人目も素早く沈めた。
結の目に、舞が四人目の敵に向かって飛びかかる姿が映った瞬間、スコープの中央に新たな標的が現れた。
舞のすぐ背後に忍び寄る第五の敵だ。
結の指がトリガーにかかる。
迷いや躊躇は全くなく、引き金が静かに落ちると同時に弾丸が放たれた。
銃声は船上では聞こえない。
狙撃された男は舞に接近する寸前に頭蓋を貫通する一撃を受け、甲板上で崩れるように倒れて動かなくなった。きっと何が起こったのかも分からないままだったのだろう。
舞も結も、人を殺すことが平気なわけではない。
しかし現にこうして、結は頭を撃ち抜き
舞はナイフで四人目の敵の喉を切り裂く――
引き金を引いた指が、ナイフを握る手のひらが、痛いほどに強張っていた。
二人の脳裏にこのミッション前に交わした会話が蘇る。
「舞?私このライフルで人を殺すんだよね?」
結の手がブルブルと震えている。
舞はその手をギュッと握り返した。
「私も震えているよ、ほら」
アンドロギュノスに入るまでは、人を殺すことなど人生にあるとは思わなかった。
結は以前ゆかが言った言葉を思い出す。
(私は生まれて生きている!そのことだけよ!死ぬその瞬間まで生きる!そう思っているわ!)
私は決めたはずだ。
覚悟?
人を殺す覚悟など、ありはしない。
人を殺し、それでも生きていくという覚悟があるだけだ。
血塗られた手は私達だけでいい。
泣いているふたなりを救うために私達は罪人になる。
きっと私達も今こうして殺した兵士のようにどこかで罰を受けて死ぬだろう。
――その時まで、死ぬその瞬間まで生きる!それだけだ!
そんな話をした。
舞といるとそんな覚悟もすんなりと受け入れられた。
結といるとそんな覚悟もすんなりと理解出来た。
「舞!」
「結!」
『行くよ!』
結の口元に笑みが浮かぶ。
ライフルを構えたまま、額に薄く汗を浮かべつつもその瞳には自信が宿っていた。
結の髪を海上の風が揺らす。遠くに見える貨物船を見据えながら無線に話しかけた。
「舞、完璧な動きだったよ!次の指示をくれれば、どこだって狙い撃てるからね」
「やっぱり監禁場所は船底の方だろうね……ルートお願い」
スコープ越しに船底方向を凝視し、脳裏に最短ルートを描きながら、ライフルをしっかり構えたまま通信機に向かって声を送る。
「了解!船底へ続くハッチは、左舷側の貨物エリアにあるみたい。デッキの北側を通って貨物コンテナの影を利用すれば見つからずに接近できるよ。敵の巡回ルートも把握してるから、三十秒後にA地点から侵入して」
「了解!」
きっちり三十秒後にハッチが開くのがスコープに見えた。
足音を消しながら船底に向かう。
「あった」
舞の視線の向こうに鉄格子の牢屋があった。
鉄格子の前に三人のマシンガンを持った男がウロウロしている。
三人……しかも全員マシンガン装備……
誰か一人でも、ほんの一瞬でも仕留め損なえば――
きっと中の五人の命は……
舞は状況を知らせるために視覚共有カメラを起動させた。
結は瞬時に状況を理解した。
「そのまま視覚共有して、なるべく舞は視線を動かさないで」
視神経にエナジーを込めると結の瞳が銀色に輝く。
結はエナジーライフルにエナジーを込める。
キュイーンという音とともにインジケータに
《EM》のランプが点灯しエナジー弾が準備された。
視覚共有のモニターとスコープの3D視覚化映像を右目と左目で見ながら合成していく。
すごい集中力だった。
船も揺れている。
結は呼吸を止め……エナジー弾に貫通のイメージを叩き込む……
完全に船が透けて見えた。
――バシュ!
船の装甲を突き抜け、一番手前にいた男がいきなり壁に吹っ飛んだ。
「な、な……!」二人目がマシンガンを構える前に
額に穴が開きそのまま崩れ落ちた。
三人目は何も言うことも出来なかった。
舞の飛ぶ斬撃エナジースラッシュで首が床に転がったからだ。
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