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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月舞
The First Mission

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ダイブ

ダイブ〜お楽しみください


三日月舞

The First Mission〜ダイブ〜

 ライフルを傍らに置く。

 マユリから受けた抱擁の温もりがまだ身体に残っていた。

 結は頬を染めたまま舞の方を見る。

 

 射撃場の蛍光灯が二人の決意に満ちた横顔を照らしている。

「舞、これからどんな任務が待っていても、私たちなら乗り越えられるよね」

 

 部屋に戻ると机の上に分厚いファイルが置いてあった。意を決してファイルの最初のページをめくった。



 《The First Mission》


 

 とだけ書いてあった。

 



 ――漆黒の闇の中、小型の輸送機が高度8000メートルを飛んでいた。

 

 貨物室にはプロペラの轟音が響いている。

 輸送機の金属製ハッチは冷たく硬く、舞は縁に肘をかけて外を見つめていた。気負いも特別な高揚もなかった。高度8000メートルの冷気が頬を刺す。眼下に広がるのは遠くに見える明かりと暗い海面だった。

 

 目標の貨物船は、本当にこの暗黒の中にいるのだろうか?

 レーダーには確かに反応がある。だが、漆黒の闇を見ていると不安がもたげてくる。

 

 レーダーだけが頼りで何度も確認する。

 

 舞は通信機のスイッチを入れる。

 はっきりとした冷静な声が出る。

 震えはない。


「結、聞こえる?ミッション準備状況知らせて!」

 すぐに結の元気な声が返ってきた。

「舞、オールグリーン!ライフルもいつでも狙える位置にあるから安心して」

 

 舞はうなずき最後の装備確認をする。

 左右のナイフを抜刀しブレードを確認する。

 そしてまたホルダーに戻す。

 左手の多機能アーマーの動作を確認して、

 ウェーブスーツも確認する。

 降下作戦用の減速フィールドを発生させることが出来る特殊な戦闘スーツだ。


 1週間前のことを思い出す。

 

 The First Missionと書かれたファイルを熟読した。

 

 内容は――太平洋上を航海する貨物船。

 表向きは輸出用貨物だが実際は捕らえられたふたなりの少女の人身売買船だった。

 作戦が立案され舞と結がその任務に抜擢された。

 貨物船には拉致されたふたなりがいると当局が確認し、舞は単独で空から侵入、結は一キロ離れたボート上からライフルによる索敵と狙撃支援を担う任務だ。

 二人で何度もシミュレーションして練り上げた。

 それを思い出しながら舞はハッチの縁を握り直した。深く息を吸い込んだ。

 初めての任務という緊張が全身を走る。

 

「舞?私たちなら出来る!私がサポートするのだから大丈夫よ」

 結の頼もしい声が聞こえる。

 

 ふぅ〜っとゆっくり息を吐く。

 ヨガの呼吸法だ。

 ゆっくりとチャクラにパワーを送っていく。

 身体の奥底から力が湧いてくる。

 

 ヘルメットのモニターにカウントダウンが表示される。パイロットに声をかける。

「ありがとう!帰りも安全にね!」

「フェアリー舞こそ、ご武運を!」

「OK!ハッチオープン!」

 プロペラの轟音が耳をつんざく。

 

 5……

 スっと目を閉じる……

 4……

 五感が研ぎ澄まされていく

 3……

 ゆっくり目を開ける

 2……

 息を大きく吸う

 1……

 ゆっくり1歩踏み出す

 0……

 まるで公園に散歩に行き、水たまりを軽く飛んで避けるように、漆黒の闇の中に飛び込んだ。


 あっという間に輸送機が離れていくのが見えた。

 

 頭から自由落下で降下していく。

 舞の視界と世界がグルンと裏返った。

 

 結は貨物船から、およそ一キロ離れた場所に高速ボートのデッキに座って愛用武器エナジーライフルを構えていた。

 高性能スコープを覗く鋭い眼光は獲物を狙う狩人のようだった。

 

 ヘルメットのモニターに舞との視覚共有のモニターもついている。

 舞の視覚が闇夜にダイブした。

 

 舞の体が闇に溶けた瞬間。

 ウェーブスーツの制御システムが起動した。

 背中から微細な振動が走り、空気抵抗を操るフィールドが展開される。

 風が唸りを上げて身体を包み込む。

 急降下のGが、内臓を引き下げる感覚に身体が悲鳴をあげる。それでも視界はぶれない。

 

「結、降下開始。風速、想定範囲内」

「了解。軌道修正値、送るね。……今のままで完璧よ、舞」

 左手の多機能アーマーに、淡く光るラインが浮かび上がる。

 (言われた通り、取説読んだからね)ニヤリと笑う。

 貨物船の輪郭が、夜の海にぼんやりと巨大な影を浮かび上がらせた。鉄と油と塩の匂いを孕んだ、無機質な要塞。


(……いた)

 

 舞の心拍が一瞬だけ強く跳ねる。

 けれど次の瞬間、すっと静まった。

 集中。

 雑念ゼロ。

 思考と身体が、ひとつの刃になる。

 

「結、目標視認。侵入ポイント、前部デッキ右舷。

三十秒後に接触」

 

「風向き良好。狙撃ポジションはすでに確保済み。

いつでも、舞の背中は守ってるからね」

 

 その一言が、背中に温度を灯す。

 舞はわずかに口角を上げた。

 「……ありがとう」

 そして、

 闇と海と鋼鉄の境界へ——

 

「減速フィールド最大展開」

 激しい減速Gで身体が悲鳴をあげる。

「くぅぅ――」

「相対速度船と接触まで3、2、1、着地!」

 着地の瞬間、ウェーブスーツが衝撃を吸収し、音もなく甲板に妖精が舞い降りた。

 

読んでくださって、ありがとうございました。

次回更新は明日19時です。


そしてよろしければブックマークや評価など頂けると

私自身の励みになります。

どうかよろしくお願いいたします。

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