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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月
訓練編

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研鑽

研鑽〜お楽しみくださいね♪


三日月

訓練編〜研鑽〜

 事故による遅れは出たが、ついにフェアリー研修が幕を開けた。

 

 教官は元フェアリーのサラ。

 現役を退いているとは思えない引き締まった身体。右眼に眼帯をしていた。

 激闘の証なのだろうか。

 その立ち姿だけで、訓練所に緊張が張り詰めた。


 舞と結も、呼吸を整え背筋を伸ばした。サラがよく通る鋭い声で二人に告げた。

「少し遅れはしたが、今からフェアリー研修を始める。お前たちのことは、ちゃんと聞いている。

 しかし、だからといって、この研修を甘くしたりはしないから覚悟しなさい。

 お前たちの『揺るぎない覚悟』を期待しているよ」

 

 その声には、甘えを許さない厳しさがあった。

 

 舞と結は同時に起立し「はい!よろしくお願いします!」と答えた。

 凛とした二人の佇まいにサラの口元が少し緩む。

「うむ……期待しているよ」

 厳しさの中に期待が混じる声だった。

 

 研修は一瞬も気が抜けなかった。

 寝る間も惜しんで座学の予習復習。

 早朝からのランニング。

 基礎体力の底上げも容赦なく行われた。

 

 

ある日——。

「今から百メートル走の記録をとる」

「はい!」

 声が揃う。

 訓練場のトラックに設置されたスターティングブロックに足をセットし、集中した。


「On your marks」

 

「Set」

 

「Go」

 スタート音が鳴る。

 

 二人は圧倒的な反応速度でスタートした。

 蹴り出した瞬間、スターティングブロックが嫌な音を立ててひしゃげた。


 どんどん加速していく。トラックの土を蹴り、風を切る。

 二人はほぼ同時にゴールした。

 

 タイムを見て二人も、サラも、そこにいたすべての人が、目を疑った。男子の世界記録すら軽く塗り替える記録だった。

 

「――これは……」

 

 サラも思わず息を呑んだ。

 

 それ以後も身体能力という点で二人は凄まじい能力を発揮していった。

 研修前の変異覚醒事故の影響としか思えなかった。二人の細胞一つ一つが活性化し、エナジーを放出しているようだった。

 

 

 訓練の合間にエナジー測定も行われた。

 科学技術局が開発した、特殊な装置。

 エナジーの測定や制御を行う、カプセル型のマシン。

 マユリが心血を注いで完成させた装置だった。

 

 マユリが自慢げに愛おしそうに撫でながら説明した。

「ようやく完成したのだよ!

 エナジー測定マシン、通称【COCOON】と呼んでくれたまえ!

 ほらまるで妖精が繭から孵化するような見事なネーミングセンスだと思わないかい?

 ――さ!服を全部脱いで入るのだよ」

 

 COCOONが二台並ぶその部屋には一切の窓もカメラもなかった。

 二人は顔を見合せ、小さく頷いて、服のボタンに指をかけた。

 下着姿になった舞は声ぐらい届くであろうと思い、尋ねた。

「全部?裸になる意味あるの?」

 スピーカーから声がする。

 隣の部屋でマユリはキーボードを叩きながら答える。

「もちろんなのだよ、その中には不要な無機物、衣服の繊維や下着の金具すら測定ノイズになるのだからね」

「そういうことなら仕方ないね」

 結が覚悟を決めて下着も外した。

 

 二人の共鳴紋の輝きはあの事故以来、認められなかった。

 二人はCOCOONの中のシートに、身体を預けた。


 上から半透明の蓋が閉まっていく。

 密閉空間の閉塞感は少なかった。


「入ったね、今から私だけそのCOCOONルームに入室するのだよ。

 何かあったら大変だからね」


 隣の部屋からマユリが入ってくる。

 

「今からCOCOONによるエナジー測定を始めるのだよ」

 と好奇心を隠せないように言った。

 

 COCOON内は温かく、適度な明るさで、

 舞はまるで羊水に浮かんでいるような感覚に包まれた。

 

 マユリがコンソールのキーボードをすごい速度で叩く。

 画面に鮮やかなグラフが表示され、ピッピッピッ……安定した音が静かな室内に流れた。

 

 モニターには半分眠りに落ちているような脳波が表示されていた。

 夢を見ている時のレム睡眠の波形と酷似していた。

 

 マユリが独り言のように呟く……

「鬼因子とヴァンパイア因子……」

 

 マユリがエンターキーを押した瞬間、COCOONが計測している二人のエナジー許容量が跳ね上がった。

 普段からくりっとしたマユリの大きな目が、こぼれそうなぐらい見開かれた。

 

「な!なに?この数値!」

 マユリはCOCOONの中の二人に半透明の蓋越しに視線を送り、呟くように言った。


「さすがにこれは表には出せないのだよ」

 

 装置を止め、ゆっくりと息を吐く。背中の傷がズキリと痛んだ。

 

 マユリは一瞬迷い、そして数値を書き換えエンターボタンを叩いて、隣の部屋に移動して行った。

  

「検査終了!お疲れ様なのだよ」

 と言い、遠隔でCOCOONのハッチを開けた。


 服を着ている二人を見守りながら一人呟いた。 

「生ける核融合炉なんてシャレにならないのだよ……

 二人は私が守る」

 

 

 二人のエナジーの許容量と出力は信じられない数値を叩き出した。

 基礎体力は過去最高の成績だった。

 それでも二人は慢心という言葉を知らないように努力も怠らなかった。

 

 誰よりも早く起き、誰よりも遅くまで訓練を続けていた。


 サラはそんな二人の背中を見つめ静かに頷いた。

「……強くなるよ、お前たちは」

 そう言って、汗だくでスクワットを続ける二人をいつまでも見ていた。

読んでいただいてありがとうございます


次回更新は明日19時です

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