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騎士に拾われた僕  作者: liege


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試験後


 色々とあったけど訓練場へ戻ると、朝より明らかに人が減っていた。

 ついさっきまで剣戟と歓声で満ちていた場所が、今は妙に静かだった。

 整列する受験者たちの間にも、どこか張り詰めた空気が漂っている。


「……少ないね」


 隣でテッサさんが小声で呟いた。


「うん」


 僕も周囲を見回す。

 朝に見た顔が、いくつも消えていた。

 その中で、ノエルさんとユリクレアさんの姿はすぐに見つかった。

 二人は他の受験者とは少し離れた場所に並んでいる。

 周囲にいるのも、身なりの良い受験者ばかりだった。


「あれ?」


 テッサさんが首を傾げる。


「317番、421番。そちらへ」


 教導官に呼ばれる。

 僕とテッサさんも、その列らしかった。


「え、私も!?」


 慌てて僕の隣へ来るテッサさん。


 列へ並ぶと、ノエルさんがこちらへ軽く身を寄せた。


「どうやら、ここにいる時点で合格みたいだね」


「え?」


 テッサさんが目を丸くする。


 ノエルさんは声を潜めたまま続けた。


「不合格者は、もう帰されてるみたいだよ」


 その言葉で、テッサさんの顔が少し強張った。

 僕も改めて周囲を見る。

 確かに空いている場所が多い。

 試験開始時よりかなり人数が減っていた。

 やがて前方へ、教導官たちが並ぶ。


 中央には眼鏡の教導官。

 その横にリズさん。

 少し後ろに、リラさん。

 リラさんと目が合う。

 にこりと微笑まれた。

 ……なぜか前にいるリズさんがびくっとしていた。


「諸君らは、騎士団入団試験を突破した」


 ざわり、と空気が揺れる。

 安堵した声。

 小さな歓声。

 張り詰めていた空気が少しだけ緩む。


「今後は各隊長の判断により、それぞれの配属準備へ入る」


 そう号令があってから来たのは気まずそうな表情のリズさんだった。後ろにはリラさんもいる。


「や、やあ。()()()()()。…えっと、隊長のリズ・カーヴェルだよ。よろしく…」


 そこから説明が始まった。


 聖王国には大きく三つの騎士団が存在する。


 王直属の近衛騎士団。

 国境防衛を担う辺境騎士団。

 そして最も人数の多い聖王騎士団。


 聖王騎士団は王都巡回や地方支援など、幅広い役割を持つ騎士団らしい。

 だからか、内部は更に第一から第三騎士団まで細分化されているんだそう。

 

 その中の第三騎士団の中の実働部隊の中でも、僕が所属するのは特殊遊撃部隊とのこと。

 リラさんによると、戦闘能力が高く、流派がランカスターを源流とする事が条件なんだとか。僕はリラさんに認めてもらえたのかな。

 今年新設された部隊だそうで、まだ隊員は少ないという。


 隊長はリズさん。

 隊員ここに居る人達と数人候補者がいると言っていた。


 リラさんは指南役に重きを置いてるので部隊は持っていないんだとか。

 また、宿舎は今日から入舎できるとの事で驚いた。



 そのまま説明が終わり、それぞれ移動を始めようとした時。


「……おい」


 低い声にテッサさんと一緒に振り向くと、ユリクレアさんがこちら側を見ていた。

 長い黒髪が揺れる。

 深緑の瞳は真っ直ぐ僕へ向いていた。

 一瞬、周囲の空気が静まる。


「模擬戦、良かった」


「……?」


 誰へ言ったのか分からず少し考える。

 ユリクレアさんはわずかに眉を寄せた。


「貴様だ」


 僕らしい。


「……ありがとうございます」


 そう返すと、彼女は小さく頷いた。


「次は負けん」


 その声には悔しさと、どこか楽しそうな熱が混ざっていた。

 言い終えると、そのまま踵を返す。

 黒髪を揺らしながら、歩き去る。

 その背中を見送りながら、テッサさんがぽかんと口を開ける。


「うわぁ……」


「?」


「認められてるじゃん、ノクス君……」


 その声は、驚きと嬉しさが混じったものだった。




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