挨拶巡り−国王と宰相−
騎士団に行った次の日、王様達の時間が取れたので来てもいいよーっていう連絡が来た。早いな。三日ぐらいは待つようかなあと思ってたよ。
……聖王達は知ってる。国王達が瑠美が自分達に用があると聞いた途端、緊急の書類だけに目を通しそれ以外の書類は他の人間に押し付けていたことを。此処を去る為に挨拶に来るとは知らずにお菓子を用意しながら今か今かと待ってることを。「案外早かったねー」と何も知らずに笑う瑠美がかわいいから誰も教えない。
今日はジェットの案内で王様達のとこへ向かってる。普通は侍女だったり侍従だったりが先導してくれるんだろうけど、この王城内を完全把握してる自分達がいれば必要ないと言って何処へ行くにも断ってる。私がじゃないよ?みんながね?
いつもよりちょっと長めに歩き辿り着いた部屋をノックすると宰相さんの声で「どうぞ」と聞こえる。扉はジェットが開けてくれたが私は自分の!足で!部屋に入る。ふっ、私もしっかりと体力が着いてきた証拠てすな。
「お待ちしておりました。わざわざ足を運ばせてしまい申し訳ありません。お菓子と飲み物をご用意しておりますのでこちらへどうぞ」
ふむ。相変わらず爽やかな人だ。でもこの若さで宰相なんて役職についてるんだからきっと腹の中は真っ黒なんだろうな。
なんて失礼な事を考えてるとはバレないように笑顔でお礼を言ってジェットと共にソファに座る。……テーブルの上のお菓子が美味しそう。お話の前に少し食べてもいいかな?でも自分から「食べていいですか?」なんて聞いたら行儀悪いよね。でもこのケーキ美味しそう。
「これが食べたいのかい?どうぞ」
そんな私の葛藤なんぞ知らぬとジェットが今まさに私が食べたかったケーキをお皿に盛り差し出してきた。強い…!あなたのその強いメンタルが羨ましい!いいのかなあ、と部屋の主二人を見ると笑顔で頷かれた。では遠慮なく頂きます。
「……!」
今日も美味しいよ!調理場の皆様!
あまりに美味しそうにしてたからか追加で差し出されたもう一個食べてしまい話を切り出そうとした時にはいつの間にか目の前に王様と宰相さんが座ってこっちを見て待ってた。……すみません。でも二人ともニコニコしてたから怒ってはないみたい。ほっ。
「それで、今日はどうしたんだ?」
「えーと…ダルダさんにらもう伝えたんですけど、近々森に帰ろうと思って。だから今日はそれを伝えに来ました。突然来たのに……」
「ここを出てくのか!?」
美味しいお菓子のせいでちょっと頭から抜けかけてたけてた。いけないいけない、と本来の目的とお世話になったお礼を言おうとしたら突然王様が声をあげて遮られてしまった。えっ、帰っちゃダメな感じ?
「出て行くというか帰るというか……ここにいてもやる事ないですし」
「……そんな事気にせずとも好きなだけいればいいだろう」
「いやいや、仕事無しにあんな立派な部屋に住んでタダ飯食らいなんて嫌ですよ」
そんな悲壮感たっぷりな顔で見ないでよ。しっかり社会人になる前にこっちに来たとはいえ、そんな言葉に甘えてはいけない。貰うばかりの関係なんぞ碌な事にならない。
「では、またこちらに来たくなったら気軽に遊びに来ていただくのでよろしいのではありませんか?あの部屋はもうルミさん達のお部屋ですので」
あの部屋とっとくの?と思ったけど、壁をぶち抜いてまで用意してくれた部屋だ。内装や家具にもお金がかかってるはずだし、また潰して部屋を作り直すよりそのままにしておいた方がお金的にも労力的にもいいのかも。ロブさんの料理が食べたくなるかもしれないし。
「そちらに不都合が無ければそれでお願いします」
「かしこまりました。すぐに森へ帰られるのですか?」
「そうですね……」
ダルダさんにも挨拶したし、ロブさん達には騎士団に行く前にジェットと一緒にお礼を言いに行ったし……。うん、大丈夫かな。
「一度部屋に戻ってからそのままみんなの転移で帰ろうと思います。もしまたこちらに用事がある時はどこに連絡すればいいですか?」
「私にお伝えしていただければと。連絡手段に関しましてはそちらの都合のいい方法でかまいせん」
「分かりました。ではこれで失礼します。突然来た私達によくして頂きありがとうございました。また何かあったら連絡します」
「いつでも待ってるぞ。用が無くてもいつでも遊びに来ていいからな?城がつまらんなら城下を案内しても……」
「貴方にそんな暇はありません」
バッサリと切られた王様ががっくり項垂れるが宰相さんは気にせずにこり。いい関係性だと思いますよと思いながらこちらもにこり。
さて、じゃあ帰りますか。




