拒否します
今日もいつも通りジェットに起こされ、ダラダラと身支度を整える。といっても顔を洗って着替えるだけだけど。どうでも良いことだけど、私は朝が弱い。夜ならいくらでも起きていられるけど寝てしまうと普通に半日以上は寝てる。
最初は何も言わなかったみんなも、私の生活リズムと王宮の人達の生活リズムの違いに気付き更に余りに不規則な生活は健康によろしくないと知ったようで。これはいけないのでは?と思ったみんなの協力のもと規則正しいものにされた。その結果、朝はしっかりと起きて夜は寝なさいと言われれば直ぐにベッドへ。ご飯も三食おやつ付き。小学生か!って思わなくも無いけど、みんなは私の為にと言ってくれてるから文句はない。むしろ嬉しい。
今日はどうしようか。本でも読みに書庫にでも行こうかと考えているとコンコンとノックの音が。
「……王様?どうしたんですか?」
「いきなりすまない。ちょっとお願いしたいことがあってね」
ジェットが開けた扉から入ってきたのはなんと王様。一応立ち上がってどうぞとソファに座ってもらう。ちらっと扉の方を見たけどもう誰も入って来ない。王様ってこんな気軽に一人で出歩いていいもんなのか?
「それでどうしたんですか?」
「ルミも王宮に来て随分と経っただろう?だから夜会でも開いてルミの紹介でもしたいと思ってるんだがい…」
「結構です」
「……え?」
最後まで言わせずに思わず拒否してしまった。だってその後続くのって「いいだろうか?」みたいな言葉でしょう?良くないに決まってるだろうが!
「夜会というのはパーティーみたいなものですよね?私そういう華やかな場所って苦手なんです」
嘘です。大っ嫌いです。
「いや、しかしある程度の人間にはルミの事を知っていて欲しいし、年の近い令嬢達もいるから気の合う者もいるかもしれんぞ?」
「確かに私とみんなの存在を知ってもらうというのは大事でしょう。でもだからって夜会を開く必要はないと思います。それとまだこの世界のマナーも知らないのに出席しても、きっと御令嬢方を含めて貴族の皆様に不快な思いをさせてしまいます。気の合う以前の問題でしょう」
「しかし……。いや、いきなりこんなな話をしてすまなかった。夜会の話は聞かなかった事にしてくれ」
そう言うと、王様は心なしかしょんぼりしながら帰って行った。すまんね。
「人間って何かあるとすぐ集まるわよね〜」
「どうせ愛し子としてルミを見せびらかしたいだけだろ。くだらねえ」
扉が閉まった途端愚痴り始めるお二人。そうだね〜と軽く返しながらアンバーの側に戻る。アズールの言い分はともかく、セレナの言ってる事はその通りだと私も思う。向こうでも何か行事が終わるたんびに打ち上げだとみんなが騒ぎだす。そんな何回も集まってもご飯食べたりするだけでしょ?と冷めた思考の私は、毎回どうしても行けないのという理由をでっち上げて全て不参加だ。そんな私が打ち上げなんてものと比べられもしない異世界の夜会に出席?はは、ありえない。
「んー、ここにいてやる事がそれぐらいしかないならもう森に帰る?」
「僕達はそれで構わないけど、ルミはいいのかい?帰ったらベッドも何もないんだよ?」
「確かにここでの生活は快適だとは思うけど、森での生活も特に何も不便じゃなかったし」
それに。
「ここで静かにしてるより、森で自由にしてる方がみんなの性に合ってるでしょ?」
そう言えば、みんなキョトンとした後ニコニコとして擦り寄ってきたり頭を撫でたりしてくる。そっぽを向いてる奴もいるけど、尻尾がブンブンしてるから機嫌はいいらしい。かわいい奴め。
「我らの事まで気遣うなんぞルミは優しいな」
「確かに森の方が落ち着くのは確かだけど、こうしてルミの側にいれれば窮屈さも不自由さも特に無いんだけどね。でも、ルミが森でも良いって思ってるのも本当みたいだから帰ろうか」
「大好きよ〜」
「私も大好きだよー」
ごろんとしながらセレナとぎゅうぎゅうじゃれあう。こうして何の恥ずかしげもなく好意を口にできる様になったのもみんなのおかげだ。




