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城巡りに行きましょう

 目を開けると知らない天井。ぼーっとしながら今の状況を確認する。アンバーに包まれてるのいつものことだが、何故か地面の上でなくベッドの上…。あー、今は王宮にいるんだった。


「起きたか?よく寝ていたな」


 顔だけ動かすとアンバーが優しい目でこっちを見てた。目が合うと「おはよう」と言いながらスリスリしてくれる。このまったりした時間が心地いい。


「おはようルミ~!」


「やっと起きたか」


 だんだんと覚醒してうーんっと体を伸ばしていると、セレナはピョンとベッドに乗りアズールはすぐそばにお座りする。おはようと言いながら二人のことも撫でる。


 ふかふかのベッドにもふもふなかわいい子達。あぁ…なんて幸せなんだろう。


 目も覚めて十分癒されてからやっとベッドから出る。ワンピースに着替えると、ジェットがお茶を入れてるところだった。おはようと言ってソファに座るとどうぞとお茶が出される。すぐに飲める丁度いい温度。当たり前だけどめっちゃおいしい。


「国王が一緒に朝食を食べないかって言ってきたけど、僕から断っておいたよ。ついでにルミの分のご飯は言えば届けるって言われたけど僕が作った方がおいしいから断ったよ」


「…ありがとう?」


 笑顔で言われて目の前のご飯をよく見てみる。ジェットの手作りであろう、一口サイズのサンドイッチに小さめのカップに入ったスープ。確かにおいしそうだけど、これどこで作ったの?ここキッチンないよ?


「というか、さらっと流したけど王様からのお誘いって断って平気なの?」


 王様に誘われたら行かなきゃなんじゃないの?そしてジェットさんや、お茶もご飯もお裁縫も出来るなんてどんだけですか。一家に一人のジェットさんですか。


「なんで僕達が人間の王ごときに従わないといけないの?」


「私達だけじゃなくて~ルミもよ~?」


「なにが?」


「私達はもちろんだけど~ルミだって従う必要ないのよ~?ルミは私達の愛し子なんだから~」


 いいのか?みんなは分かるけど私は一応人間なんだし…って思ってアンバーを見ると、アンバーもその通りだというように頷いてる。愛し子というのは思ってたよりすごい立場だったらしい。


 そんなこと思いながらも、お腹は空いているから「いただきます」と食べ始める。えっ、見た目普通のサンドイッチなのにすごいおいしいんだけど。なにこれ。びっくりしながらあまりのおいしさに夢中で食べてると、視界の隅で嬉しそうにニコニコと頬を緩ませたジェットが見えた。


「今日は何するんだ?ずっと部屋にいるのか?」

 

 最後の一切れを食べてるとアズールが欠伸しながら聞いてくる。う~ん、どうしようかなあ。街はちょっと気になるけどみんなで行ったら流石にダメだというのは分かる。でも他にやりたい事もないしなあ。


 なんて思ってると、コンコンとノックの音。返事をすると入ってきたのはダルダさんだった。


「おはようルミ。食事中だったか?ごめんな」


「おはようございます。もう食べ終わったので大丈夫です。どうしたんですか?」


 最後のサンドイッチを飲み込み、訪問理由を尋ねる。


「昨日きたばかりでまだ王城の中もよく分からないだろ?だから中の案内でもしようかと思って来たんだ。外に行きたいのなら無理に止めないが、まだ通達も終わってないから止めといた方がいいと思うぞ」


 ダルダさんの提案に、それもいいかなと思う。今はみんなといるから私もここにいられるけど、そうじゃなかったら王城なんて滅多に来れない場所だもんね!


 瑠美の思った通り確かに王城なんて誰でもほいほい来れる場所ではない。……が、聖獣、特に瑠美は例外で、「仲良くなりたい」「可愛がりたい」と熱望しているジン達なら喜んでいつでも案内してくれるだろう。というより、今この時も着々と瑠美の部屋が出来上がってきている。


「行きたいですけど、いいんですか?私部外者ですし、それにダルダさんって団長さんなんですよね?お仕事と訓練とか…」


「あいつ…ええと国王には許可もとってあるし、騎士団にもちゃんと伝えてあるから気にしなくていいぞ」


「じゃあ…お願いします。みんなは?」


 王様をあいつ呼ばわりするなんて。昨日の態度でも思ったけど仲がいいんだね。そこまで準備というか根回しされてるなら遠慮なく案内してもらおう。みんなはどうするのか聞くと、セレナはお散歩、アンバーは昼寝、ジェットはお裁縫…お裁縫?……何をするのかなんて本人の自由だよね。で、アズールは私と一緒に王城巡りに参加するって。


「お前一人で行って揉め事でも起こされるのは勘弁だから俺も行く」


 言い方はあれだけど、ようは心配してくれてるんだよね!ありがとうございます!かわいい!…と叫べば拗ねてしまうからギュッと首に抱きついてグリグリするだけにした。大丈夫、私は分かってるよ!



――――――

――――――――



 さすがというかなんというか…。


 広すぎ!!!


「ここは夜会なんかの時に使うホールだ。んでこっちに行くと…」


 何事もないかのように案内してくれるダルダさんの腕には、恐らく遠い目をしながら説明を聞く私。しょうがなくない?いい年してなぜお子様抱っこされねばならんのだ。アズール、そんな不機嫌そうな顔するぐらいなら彼から私を奪還してくれ。あっ、目逸らされた。おいっ!


 どうしてこんなことになったかといえば、全てはこの広い王城と一歩一歩がでかいダルダさんのせいだ。私に合わせて大分ゆっくり歩いてくれていたが、いかんせんインドア中のインドアの私の体力は少ない。


 早々にバテ始めた私をひょいと持ち上げた彼は何を思ったか、アズールに乗せることなくそのまま片腕で抱っこして案内を再開した。あまりに自然な動作にアズールすら何も言う暇もなかった。下ろして欲しいもしくはアズールに乗っけてくれと言ったが遠慮するなと却下された。遠慮じゃない、懇願です。その後何を言っても下ろす気配がないから諦めた。


 しかし…すれ違う人みんな私を抱っこしているダルダさんを見て、口をあんぐり開けて目をまん丸にしたなかなかの阿呆面を晒してる人や、二度見三度見はては目を擦り見間違いを疑う人もいた。


 チラっとダルダさんを見るが特にそんな視線は気にしてないみたい。ダルダさんは栗色の髪を刈り上げているし目じりもちょっと吊り上ってていかつい感じがするけど、橙色の瞳がすごく優しい色をしているから全然怖くない。腕もすごい太いからジェットとはまた違った安定感があってなかなかいい感じ。だからって自分からお子様抱っこを望んでいる訳じゃないぞ!



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