私が知らなかった事、みんなが知らなかった事
いつの間にか寝てたみたいで起きたらもう夕飯の時間になってた。
丁度呼びに来てくれた侍女さんに案内してもらい食堂へ移動する。今度はちゃんと自分で歩きますよ!…そんな悲しそうな顔しても乗りませんからね、アンバー!
しかし悲しいかな。私一人歩幅が合わず、結局ジェットの腕の中…。
途中何人かの侍女さんとすれ違ったけど、こちら…というよりアンバーとアズールを見て驚きはしても特に混乱してる感じはなかった。どうやら、寝ている間に王宮の人達へ私達の説明が行われたらしい。
とりあえず私達が急に来ちゃったから今は王宮内だけ。準備が終わり次第、国民全員に通達するらしい。これも、早ければ一日で終わるって言うんだから魔道具様様だね。それが終われば自由に国を歩いていいって!ありがとうございます!
で。説明されたにしろみんなアポなしで来やがってと怒ってるんじゃないかと思ってたけど、全くもってそんなことはなかった。アンバー達を見るみんなの目がこっちが驚くぐらいキラキラしてたから。こんなに歓迎されるなんてみんなってすごいんだねって言ったら、きっと珍しいだけだよって全く興味なさ気に返された。
なんでも、この世界の人達はみんな聖獣という存在は当たり前に知ってるけど一生の中で目にする機会はほとんどないらしい。というのも、聖獣は基本質のいい魔力があるところや自然が多い場所を好むらしい。だから私がいた原始の森から出ない聖獣も沢山いるし出て行ったとしても、人間がほとんどいない場所なんだとか。だから目の前に聖獣、しかも聖王がいるこの光景はみんな涙を流して拝みたくなるぐらいのレベルらしい。……実際静かに泣いて拝んでる人がいて少し引いてしまったのは内緒だ。
そしてそれとは関係無しにジェットを見て顔を赤らめる侍女達。分かるよその気持ち!めっちゃイケメンだもんね!…などと思いながらも私のテンションは上がらない。むしろ“その事実”を目にするたびに下がっていく。
「どうしたんだい?あいつらと一緒に食べるのが嫌なの?」
「違うよ?違うからそういうこと大きな声で言うのやめてね?」
どうやら憂鬱さが顔に出てたらしい。それを王様達に会いたくないからと思ったみたいだけどせめて小声で聞いて欲しかったよ。見てよ案内してくれてる侍女さん、すごい勢いで振り返ってびっくりしちゃってるじゃん。
そんなことないと言うとほっとした様子でまた歩き始めた。王様達が原因なんかじゃない、けど今ここでは言いづらい。後で教えると言って会話を切る。もう着いたからね。
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夕食はとっても豪華でおいしかった!ただ、少し料理が冷めてたのはもったいなーとは思ったけど王族の食事なら毒見とかもあるんだろうしこんなものかと諦める。
食堂には王様以外にも、ルドルフさんとダルダさん、クラウスさんもいて想像していたよりも賑やかで堅苦しくないものだった。問題があったとすれば、この三ヶ月で縮んだ私の胃には量が多すぎてほとんど食べられなかったことぐらいかな。
半分もいかないうちに満腹になった私を信じられないものでも見るような目でみんなが見ていたけど、その中にアンバー達もいたから私的にはそっちの方が驚いたよ。「なんでみんなも驚くの?」って聞いたら、「こんなに食べないと思わなかった」と言われた。
その流れで「今までご飯何食べてたの?」という話になりロロの実を説明したらみんな驚き、次の瞬間には真面目な顔をして「簡単に誰かに話してはいけないよ」と何度も言われた。
今までそんな実を聞いたことないし、国宝級以上に伝説級の代物だから欲深い人間に知られればどんなことをされるか分からないってさ。言われなくても誰彼構わず言いふらさないし、私なりにここにいる人達なら大丈夫だろうと思っての判断だ。私が判断したっていうよりも、私が話そうとしてもみんなが止めなかったからっていうのがほんとだけどね!
「そういえば、君達はどうしてあの森に来たんだい?」
ジェットの質問に私も王様達を見る。それ気になってたんだよね。
「それはねぇ、原始の森の魔力が大きく変化していたからその調査の為にダルダ達二人を行かせたんだぁ」
クラウスさんがそう言うとみんなは納得したのか「なるほど」という顔をして食事を再開してしまった。みんな今の説明で分かったの?
「分からないって顔ね〜。ルミの魔力は私達の力になるって言ったでしょ〜。だから、ルミがこの世界に来た時からこの世界の魔力はどんどん豊かになってるし心なしか森の魔力も綺麗になってるのよ〜」
「だから今までずっと過ごしていたあの森は、今やこの世界で一番純度の高い綺麗な魔力で溢れている。それが外から見ても顕著だったのだろう」
「それはもう凄いよぉ!本当はボクも行きたかったんたけどぉ、ルドルフにダメって言われちゃったからさぁ」
キラキラした顔をしたと思ったら途端に落ち込むクラウスさん。忙しいな。そしてそんな彼を冷たい目で見るルドルフさん。なんか寒気が。きっと私が聞いたらいけない事情があるんだろう。私は聞かないよ。怖いから。
というより、そんなこと知らなかった。みんなの感じだと相当変わったらしいけど、私には森の変化なんぞお全く分からなかったよ。まあ綺麗になるんならいい事だよね。
そんなこんなで食事を終え部屋に戻ってきた私は、横になったアンバーのお腹にダイブしてグリグリともふもふを堪能する。
「あらら、疲れたかい?お茶でも飲む?」
「んー…じゃあ飲むー」
顔を埋めたまま答える私に、クスクス笑いながらカチャカチャと用意するジェット。
「ところでルミ~?食堂に行くまでずっと難しい顔していたのはどうして~?」
「あー…」
忘れてたことを思い出せばまた複雑な気分になる。ノロノロと起き上がりすでに出来ていたお茶を飲む。みんな気になるのかこっちを見てる。・・・そんな気になるの?
「そばで辛気臭い顔されたらイライラするだろうが。早く言え」
だから言い方!もう慣れたからいいけど。
「…いやさあ、ジェットって背が高いじゃん?」
「僕?そうかな?」
いきなり話を振られて不思議そうにしながらも答えるジェット。その様子に「はあ…」とため息をつく瑠美に何かまずかったのかとあわあわする。
「ジェットは本当は竜でしょ?だから人型でも大きいのかなと思ってたの。森に比較出来る人間がいなかったっていうのもあるけどね?でも今日王様達を見て、あれ?もしかしてここの男の人ってみんな背が高いのかな?と思ったんですよ」
一旦区切ってお茶を飲む。みんなを見ても…あんま分かってなさそうだな。
「男の人だけなら別によかったの。でもね?地下室から食堂まで案内してくれた人とかそれ以外にもちょいちょい侍女さん…女の人もいたでしょ?」
そこまで言えばなんとなくみんなも分かったみたい。
「つまり、ルミはこの世界の人間が自分より背が高いことを気にしているのか?」
「まあ…そうです…」
直球で聞いてくるアンバーにグサっときたがなんとか返す。他の面々も、理由は分かった。分かったが何故それ程気にするのかが分からないって顔をしてる。
「だって男の人だけかと思ったら女の人もみんな高いんだよ?どの人も女の人でさえ絶対百八十センチはあったじゃん。どういうことよ」
「どうもこうも見たまんまだろ」
「なんでそんなこと気にするの~?ルミだって大人になれば大きくなるわよ~」
「………え?」
「え?」
しばし見つめ合う私とセレナ。…ちょっと待って?嫌な予感が…。
「私…二十一歳。もう大人。これ以上伸びない」
「「「「………………」」」」
…そうですか、声も出ないぐらい驚いてるんだ。みんな驚いてるってことはみんなそう思ってたってことですね。へー、ふーん、そうですか。だから王様達と話してた時に私が『少女』って言われてても誰も気にしなかったんだねー。
未だ驚きで固まるみんなを無視し静かにお茶を飲む。まあね?私も大人ですって言わなかったのもわる……くはないよね?いや、ここは異世界なんだから認識の違いは沢山あるはず。うん、私も悪かったってことで。




