番外:おしえて、カタリ先生!!
王都の女司教カタリ・テレーズ。
覚えていただけているでしょうか。
今回の出演はまだ司祭だった頃の彼女と、その愛弟子アルビ・トゥールーです。
「せんせ~!」
聞きなれた声に呼び止められ、女性司祭のカタリ・テレーズは足を止めた。
「アルビ、どうしました?」
振り向いて、そう声をかければ弟子であるアルビが上目遣いにこちらを見ていた。急いで来たのか、髪がわずかに乱れ、顔も上気している。
「ハイ、魔法について先生にお聞きしたいことが。」
そう言う少女の表情は真剣そのもの。まだ10にもならない幼さだが、その秀才ぶりは折り紙付き。
カタリの自慢の弟子だった。
「どういったことですか?」
そう尋ねてやると、質問の許可を得た少女は勢い込んで口を開いた。
「このまえの説明では、ヒトには魔物とちがって魔力的な属性はないんですよね。」
「ええ、そうよ。」
「それなら、なぜ全属性の魔法を扱える人がいないのですか。」
この質問に、カタリは戸惑った。
「あ、あら、説明してなかったかしら。」
「はい。」
「ごめんなさい。うっかり、説明したものだと。」
申し訳なさそうに謝るカタリ。
アルビの物覚えは良い。その彼女が聞いていないと言うのなら、自分が説明し忘れた可能性が高かった。
「それじゃあ、改めて説明しましょう。」
「はい、お願いします。」
気を取り直し、コホンと咳ばらいをしてからカタリは説明を始めた。
「貴方の言った通り、人間の魔力には魔物とちがい属性がありません。そのうえ、量も少ないのです。つまり、人間は本来的に魔法に向いていない生き物と言えます。」
聞き入るアルビの表情は真剣だ、それにつられるようにカタリの口調も真剣みを増していく。
「そこで重要になるのが魔法陣と呪文、それに魔法具です。これらを正しく組み合わせることで、少ない魔力は増幅され、属性を与えられます。」
ここまでは、すでに説明してあった内容のハズ。カタリが一旦言葉を区切って確かめると、アルビは問題なくついて来ている様だった。
「ここまでの理屈で言えば、確かに人間は全ての属性を使えることになります。魔法陣や呪文を正しく使えば全ての属性の魔力を扱えるはずですからね。
でも、実際にはそうではない。それは何故か、」
説明が本題に差し掛かり、アルビの熱も上がって来る。食い入るような生徒の視線をカタリは微笑ましく感じた。
「答えは簡単。人間は魔法に向いていない生き物だからです。」
「?」
「向いていないから、折角の魔力を感じて操ることが出来ないのです。」
「ああ、なるほど!!」
説明の半ばでおおよそを察したのか、快哉を叫ぶアルビに笑みを向け、カタリは説明を続ける。
「本来の自分の魔力を感じられる人がそもそも稀ですし、そのうえ増幅・属性付与された魔力は本来の自分の物とは変わっていますから、さらに扱いが難しくなります。
ですから、結局は自分と相性の良い、感じて操ることが出来る属性の魔法だけを使うことになるんです。」
「なるほど、よく分かりました。ありがとうございます。」
笑顔でペコリと頭をさげるアルビ。つられてカタリも笑顔も大きなものになる。
「また分からないことがあったら、いつでも聞きにいらっしゃい。」
「はい、ありがとうございます。」
アルビがもう一度頭をさげた時、廊下の反対側から彼女を呼ばわる声があった。
どうやら、彼女は清掃の奉仕活動の最中だったらしい。
途端に少女はうろたえ始める。
「あ、いけない。先生、失礼します。」
挨拶もそこそこに慌てて去っていく小さな後ろ姿。カタリはそれを暖かな気持ちで見送った。
ちなみに、彼女も上司にあたる司教に急ぎで呼び出されていたところなのだが、それを思い出して大いに慌てるのが、今からおよそ10秒後のことである。
なぜ、今まで解説用の番外をかたくなに爺さんで書いていたのか。
過去の自分に反省を促したい。
それと、投稿開始から1年が経ちました。なんとかペースとモチベーションを維持してこれたのは、読んでくださる皆さんのおかげです。来年もヨロシクお願いします。




