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第16話:幕間(2日目の様子と母娘会議)

今回は短いですが、あしからず。

~2日目~


 前日に引き続き、今日もシレンがやってきた。やはり子分を二人連れてだ。

 あれから、シレンから話でも聞いていたのか。並茶&薄茶も昨日よりは落ち着いている。


「しょうこりもなく、またあらわれたな。今日も俺たちイスタ村騎士団が相手をしてやる。」

 気勢を上げるシレン。他の二人もつられて剣(木製)を構える。今にもGOKKOアソビが始まりそうだが、既にプロテクター(パイ生地構造)を装着した俺に焦りはない。


 このまま、すぐに戦いになだれ込んでもいいのだが、それではイマイチだ。一定の様式美は必要だが、マンネリは避けねばならない。

 そのための練習も、完了している。


【母なる大地の精霊よ。我が願いを聞き届け、宿敵を打ち砕く槌となせ。石槌隆起(ハンマーライズ)


 詠唱と同時に地面から石柱がせりあがってくる。 威力を加減しているので、スピードはそれほどではない。

 角度はおよそ30度。方向は俺の足元から後方へ向けて。

 結果、四角柱は半ば土に埋もれたまま半身を地上にさらす。ちょうど、30度・60度。90度の角をもつ三角柱が横に寝た形だ。


 俺はテッペン。直角の頂点に立って子供たちを見下ろした。前にガラードンとの模擬戦でやったように、ハンマーライズを自分にあてて移動したのだ。

 呆気に取られているシレンたちを尻目に俺はさらに呪文を唱える。


【母なる大地の精霊よ。我が願いを聞き届け、心念じるところを形と成せ。石練成(ストーンクラフト)】×2


 一つ目のストーンクラフトで石柱の表面をツルツルに仕上げ、二つ目で背後の壁面に階段を作る。

 そう、これで滑り台の完成だ。

 見れば、シレン以外の二人は腰を抜かしてへたり込んでいる。

「フハハハハ、お前たちのような強敵を無策で迎え撃つほど、俺はうぬぼれてはいない。どうだ、これでお前たちはここまでたどり着くことも出来まい。」

「何を、こんなもの!!」


 やはり、シレンはノリがいい。並茶&薄茶は置き去りになっているが、一目散に滑り台を逆走してくる。

 大げさに煽りはしたが凄まじい急傾斜という訳でもない。四つん這いになりながらも着実に上って来る。

 そこで俺は再び悪魔笑いを放った。

「フハハハハ、かかったな!!」


 突然勝ち誇った俺をシレンが困惑の目で見返してくる。ククク、いい表情だ。絶望せよ。

 俺は背負っていた一本の棒をつかんだ。これは今朝早いうちにハンクに頼んで作ってもらった。なんの変哲もないT字型の棒だ。

 俺はソレを慎重に構えると、軽く前に突き出した。この作戦に力は不要。あくまで狙いが大切なのだ。


 突き出されたT字は(あやま)たず、シレンの両足にヒット。斜面に張り付くために踏ん張っていた両足を軽やかに払った。既に両手をついているシレンは転びはしない。そのかわり、

「うわあああああああ」

 素っ頓狂な悲鳴をあげて坂の下に滑り落ちていった。


 俺、爆笑。シレンの間の抜けた声に並茶&薄茶の2人も思わずクスリとした。

「ひ、ひきょうだぞー!」

 坂の下から声をあげるシレン。それを見下ろして俺は勝ち誇る。

「魔物に対して、それは誉め言葉だ。尻尾を巻いて逃げ出すがいい。」

 いい歳して俺は何をやっているんだ。と、思わなくもない。


「くそ、お前たちもいくぞ。騎士団の力を見せるんだ。」

 シレンが並茶&薄茶の兄弟に発破をかけて、再び滑り台を駆け上がって来る。二人もおずおずと続いてきた。

 フハハハハ、よかろう。お前たちが力尽きるまでいたぶってくれるわ!!



 イスタ村での2日目はこんな感じだった。一応、友達が増えたと言っていいのではなかろうか。ちなみに並茶&薄茶の兄弟はキタイとロタールというらしい。


 しかし、子供の相手をしているとどうしてもミラのことを思い出してしまう。

 まだ、2日目だが、元気にしているだろうか。リヨンと一緒になにか無鉄砲なことをしてケガでもしていないだろうか。心配だ。



~母娘会議~※三人称視点


「ねえ、ママ。ロク、だいじょうぶかな。いじめられたりしてないかな。」

 ロクが人の村に行ってから二日目の夜。夕食の準備を手伝いながら、ミラはリヨンに尋ねた。


「そうね。ロクは強いから、いじめられたりはしてないだろうけど、弱虫だから寂しがってるかもね。」

 心配そうなミラに対し、リヨンの顔には呆れたような表情が浮かんでいた。「やれやれ、困ったもんだ。」という所だろうか。


「ママは、ママはさみしい?」

 ミラの問いかけに、リヨンは右の羽根を顎にあてて考える素振りをする。その間も右足はお玉をつかんでシチューの鍋をかき回しているのだが。

「ん~、ちょっとだけ。身体ばっかり大きくて、気は効かないし、イマイチ頼りないけど、悪い奴じゃないもんね。」


 リヨンの答えに、ミラはニコニコと笑う。

「わたしもロクのことスキ。」

 わたし「も」と何のてらいもなく言われて、リヨンは少し赤くなった。


「そりゃ、ロクは良いヤツよ。優しいし。でも、どうなの。妙齢の人頭鳥(わたし)と一緒に暮らしてるっていうのに、全く意識とかしてくれないし。そりゃ、岩石精(ゴーレム)ってそういう種族だけど、それでも……。」

 ブツブツとつぶやいた言葉はミラには聞こえなかったらしい。不思議そうに顔をのぞいてくるミラの視線に我に返ると、リヨンは忙しなく鍋をかき回した。



 そんな話をした後だからだろうか、今日は一際食卓が広く感じる。別にロクが留守にするのが初めてという訳ではないのだが。

「ロク、いつかえってくるの?」

「うーん、村の人間と仲良くなるって言ってたから、しばらくは掛かっちゃうんじゃないかな。」

「そっかー。はやくかえってくればいいのにね。」

 ミラが素直に寂しがるからだろうか、リヨンも少しばかりロクが恋しくなってくる。


「ねえ、ミラ。明日にでも、ちょっとロクの様子を見に行かない?」

 リヨンの誘いにミラは躊躇いを見せた。どうしたのだろうか。普段の彼女なら嬉々として乗ってきそうな話だというのに。


「また、おいはらわれたりしない?」

 どうやら、前回村の人間に追いはらわれたことを気にしているらしい。リオンはミラを安心させるように、鷹揚に笑った。

「だいじょーぶ。こっそり行けば見つからないし、もし見つかってもママとリヨンだけなら空を飛んですぐに逃げられるわ。」


「それに、私たちはロクの邪魔をしに行くわけじゃないの。お手伝いをしに行くのよ。」

「そっか。おてつだい!!」


 この一言で、まだ迷っていたミラも一気に乗り気になった。ロクに会えるうえに、お手伝いによってロクの用事も早く片づけられるという完璧な計画。破たんは全くない。(5歳児調べ)


 先ほどまでの盛り上がらない雰囲気は既に100万キロのかなた。二人はキャッキャと計画を練りながら楽しく夕食を終えた。


 こうして、妻子によるロクの職場見学が実施される運びとなったのである。

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