17 離さない
【8月18日16時26分 カフラマンカザン】
ロルフは修理を終えた後、すぐに高速には戻らず、まだカフラマンカザンの町にいた。買い出し。アヤソフィアまで400キロなら、ロルフはノンストップでも走り切れる。運転は交代ですることに決まったが、飲料水、軽食くらいはあった方がいい。あとはアリーのおやつとご飯。
インターの手前にスーパーがあった。小さいが、必要なものは揃った。ミネラルウォーターのペットボトル半ダース、ブラックの缶コーヒー2本、エナジー・ゼリーをいくつか。アリー用のソーセージ、スライスハム。それと、旅行者用の歯磨きセットとシャンプーセットを2つずつ。
なぜか楽しそうに買い物をするヴィの後を、ジェイは無言でついていった。カゴを持って。
ヴィはパヴルから貰ったiVitraの電子マネーで決済した。パヴルのカードだが。
「アリーが帰って来ない」
スーパーの駐車場でロルフの運転席に乗り込みながら、ジェイが呟いた。
「どこ行ったかわからないの?ロクツィオで」
ジェイがソフトトップを開けた。フルオープン。
「さっきまで途切れ途切れに繋がってた。山の方だ。ご飯まだだったから。食事中はプライバシーなんだ」
「それは心配。オープン、いいね!汗かいた後だから風が気持ちよさそう!」
「オープンになってる方がアリーが乗りやすいから」
アリーアリーアリー。さっきからアリーの話しかしない。カラス同士で仲良くしてればいい。ばか男。
ヴィはため息をついてシートベルトを閉めた。
突然、ロルフのエンジンが咆哮をあげた。ジェイの右足がスロットル・ペダルを蹴っていた。
ロルフはスーパーの駐車場で、まだDレンジにも入っていなかったのでただ空吹かししただけだったが、ジェイは叫んだ。
「アリー!」
「どうしたの?!」
ジェイは返事するより先にロルフを発進させた。
「……わからない……強いロクツィオが来た。アリーになにかあった」
「なにかって……危ないッ!」
横道から出てきていた車の鼻先を掠めた。
「ちょっと!落ち着いてよ。事故ったらアリーどころか……危ないって!」
クラクションを鳴らされた。対向車が来てるのに強引に追い越しをかけたからだ。
正気か?尋常じゃないスピードで、ジェイはロルフを走らせる。
ジェイの横顔は冷静だった。焦ってパニックを起こしてるわけじゃない。迫るインター入り口の分岐を、完璧なアウト・イン・アウトで直角に曲がる。フェンスぎりぎりで。スキール音がこだまする。そして長い270度ランプウェイ。ジェイは減速どころか加速し、四輪のトルクをコントロールしながら曲がっていく。恐ろしいスピード。
ヴィはもう声も出せない。
やっと本線に乗った。スピードは既に150オーバーだが、ジェイはスロットルを踏み続ける。フルオープンなので体感速度がすごい。この風音では会話も無理だ。髪の毛を後ろから引っ張られてるみたいに、2人ともスリックバックになる。
先行車にすぐに追いつく。大型パネルトラック。
ジェイはサイドミラーをチェックしながら、車間距離を詰める。スッと、ロルフがトラックに吸い寄せられる。スリップストリームに入った。ジェイは左に軽くステアを当て、スムーズに追い越していく。
速い。とにかく速い。メーターを覗き見ると、もう200キロを超え、さらに加速していく。だがそこで、ロルフの加速が鈍る。登りに入ったからだ。気がつくと、左右は平原ではなく山だった。草木のない、剥き出しの崖。ジェイがやっとスロットルを緩めた。前方に車が多い。トレーラー。ミキサー。大型ダンプ。勾配はそれほどでもないが、みんな遅い。
ぐん、と、減速Gがかかる。ジェイがブレーキングしたのだ。前のトレーラーが異様に遅い。
ジェイがまたミラーを確認しながら、左にウインカーを出す。だが、トレーラーがそれを待っていたかのように車線変更した。ウインカーを戻し、スロットルを開けて直進する。
「……ちょっと!」
ヴィが叫んだ。トレーラーが幅寄せしてくる。
「つかまれ」
ジェイがそう言ったかどうかわからないが、たぶんそう言った。全身が前に飛んでいきそうな激しい減速G。フルブレーキング。シートベルトが食い込む。
トレーラーが見る間に前へ出る。ジェイは路肩ぎりぎりまで寄せて、それからトレーラーのテールにステアを切る。
ヴィは思わず悲鳴。追突する――だがトレーラーのリアバンパーが右に流れていく。かわした。
またスロットル全開。2.0直列4気筒SOHCが絶叫する。トレーラーの前に出る。また減速。今度はダンプだ。
ジェイは慎重になる。トレーラーの挙動は明らかに変だ。
ダンプが急減速。左にミキサー、右はトレーラーが突っ込んでくる。
ジェイはトレーラーの前に割り込んだ。背後に巨大なフロントグリルが、メッキに陽光のハレーションをギラギラさせて襲いかかる。スロットル。フロントグリルが退がっていく。左後方からダンプも加速を始めるが、ロルフの敵ではなかった。前方が開けた。
「……な……なんなの、今の」
「罠だ」
「わ……な?」
「アリーはたぶん捕まった。周りの車は全部敵。かも」
ジェイは130まで速度を落とした。制限速度だ。警戒速度。この辺は見通しがいいのが救いだ。後続のダンプは追いついて来ない。
「罠って……誰が?」
「ヴェシリア・セレンだろう。あの女は狡猾だ」
「ヴェシリア……セレン。なぜ?首席審問卿が……あなたが敵だと、知ってるってこと?アリーのことも?」
「推測だ」
頼むから一度に全部話してほしい。相槌を打つ間にも、ロルフは時速130キロで進んでいる。
「監視、計略、知謀、2年前のままなら、あの女なら気づく」
省略し過ぎだ。
「2年前って?」
「話してる時間はなさそうだ」
言うなり、また減速Gがヴィに襲いかかった。髪が一斉に顔に被さる。
交通規制。工事。3車線が一気に1車線に。ここで前後を塞がれたらおしまいだ。
路上には前後とも、今は車影はない。路肩には数台、トラックやユニック。人影もない。
ジェイは80キロまで減速した。ヴィは過敏なほどに周囲を見回す。聞こえるのは風と、ロルフのエンジンと走行音のみ。不気味に静かに感じる。
カーブ。緩やかに左に曲がっていく。ジェイがさらに減速した。カーブの先、アウト側に人影。
黒服。こんな山の中で。そして――左手に鳥かご。
(ジェイ!ジェイ!)
アリーがいる。かごの中。
右手で、止まれと合図している。黒服が増えた。全部で5人。
「……どうするの」
「アリーがいる。停まる」
「それで?わたしたちも捕まる」
「他にどうしようもない」
アリーが大切。そうよね。わかった。
ジェイがウインカーをあげ、ロルフを右へ、ゆっくりと寄せる。
ヴィは鳥かごを持つ男を凝視した。男の左手を。その手はがっしりと、鳥かごの持ち手を握りしめている。親指の付け根が張りつめ、全力がかかっているのがわかる。
ウインドウを降ろし、シートベルトを外す。ジェイがヴィを見る。
「わたしに任せて」
ジェイが頷くのを待たず、ヴィは左手を、ウインドウ全開のドアにかけた。ジェイがブレーキペダルの踏力を強める。減速G。ヴィはまだ、シートに腰を沈めたままだ。
ロルフが男の真横にさしかかり……停止寸前。
アリーが翼を広げた。
その瞬間をヴィは待ち構えていた。左手を支点に腰をあげる。ロルフが停止し、減速Gがヴィの身体を左に傾ける。その慣性モーメントで加速した右手刀の切先が、男の左手首、橈骨茎状突起の僅か上を突いた。
突然電気ショックを受けたかのように左手が痺れ、逃避反射を起こして、拳がパッと開く。男の意志を無視して。
アリーがびっくりしてかごの中で羽ばたき、飛んだ。全てがスローモーションに見える。
親指だけがまだ持ち手の内側にあった。男の手の反射運動は止まらず、中のアリーの反動も加わって、その親指に引っかかった鳥かごが持ち上がる。その下から、ヴィの右手が鳥かごを追いかける。
届くか。
指先に金属の感触。
届いた。
中指、そして人差し指が、格子の隙間に滑り込み――引っかかった。
「ジェイ!」
(ジェイ!)
"こわいおんな"が鳥かごを引き寄せ、ジェイがロルフを発進させた。
"こわいおんな"がシートにストンと戻る。鳥かごを抱えて。
アリーは、かごの中でバザバサと暴れた。
鳥かごの扉が開き、手が突っ込まれ――
(やめろ!なにする!)
――アリーを鷲掴みに捕まえる。
そして鳥かごだけを後方にぶん投げた。
ジェイがスロットルを蹴る。
「アリー……おかえり」
"こわいおんな"がアリーを撫でる。
(はなせ!ころすきか!)
「……。ただいま、だって」
"こわいおんな"が笑った。
「おかえり。かわいい!」
アリーは鳴き喚いた。
(はなせ!ころされる!)
"こわいおんな"はにこっとした。
「なんて言ったの?」
「……。ありがとう。かな?」
後方では、4人の黒服が呆然としていた。何が起こったのかわからずに。
もう1人――鳥かごを持っていた男は気絶していた。顔面に、その直撃を喰らって。
【16時51分 アヤソフィア首席審問卿執務室】
|"Exploratio Vi"《威力偵察》、完了。
ヴェシレ。見事な判断力、素晴らしい動きだ。あれほど成長しているとは。そしてあの男のドライビング。冷静だ。ディルシズと比較しても互角以上。ただの化け物ではない。あのカラスの価値もわかった。
ヴェシリアはチェアの黒革に身を埋めた。モニターの中で、ロルフが走り去っていく。視線を落とし、瞼を閉じる。
インノケンティウスは、私だけではなくあの子にもアスラン道を教えた。もちろん直接ではない。父は武術など嗜みもしない。財力で師を手配したのだろう。あるいはクルチュに示唆したのか。
あの子を――あの子の身体、私のスペアを護るため。
私たち姉妹は怪物に育てられた。怪物の後を継ぐために。その教えを復讐の刃にかえて、私はインノケンティウスを抹殺する。
あの子は、何のためにここへ向かっているのか。もう1人の怪物のためか。怪物を愛したからか。
愛、故か。
くだらない。
愛など不要。
妹よ……いや、ヴェシレ・クルチュよ。来るなら来い。
私にはもう、スペアなどいらない。
ヴェシリアは目を開くと、再びモニターに向かった。スペクルムでディルシズを呼び出す。
「次のGradusに移行しなさい」
ディルシズの男が頷く。
「Assultus Gradus Ⅱ 移行。承知しました」
ヴェシリアはフッと笑う。
「手加減する必要はありません。全力でいきなさい。よろしくて?」
無表情なディルシズの顔が引き攣る。
ヴェシリアは唇を歪ませたままスペクルムを切る。
限界を、見せてもらおう。
【18時17分 ボル、ハドリアヌス・テシスレリ アヤソフィアまで261キロ】
「……お手洗い、行きたいんだけど」
失敗した。ペットボトル1本、飲み干しちゃうなんて。
ロルフはその後、平穏なドライブを続けていた。少し安心して、アリーにお水をあげようとしたら拒否されて、ジェイが手のひらから飲むというからやってみたら突っつかれた。やっぱりクソガラス。ムカついて全部飲んじゃった。おしっこしたい。
ジェイは返事せず、西日に目を細めながらただ運転に集中してる。風の音で聴こえないのか。
「お手洗い!行きたいんだけど!」
「え?……ああ、わかった」
さっきテシスレリの看板があった。あれから妨害とかないけど、別に油断してるわけじゃない。生理現象なんだから仕方ない。
あった。ハドリアヌス・テシスレリ。昔のローマ皇帝の名前。アナドル高原を出ると、ローマ色がだんだん濃くなる。
ジェイがウインカーを出し、ロルフはスムーズにテシスレリに入った。別人のように安全運転だ。スピードも、ずっと制限速度を守ってる。
駐車場はトラックだらけだ。ジェイは建物の近くに空きを見つけて滑り込む。噴水の近く。アリーが飛び出して噴水に直行すると、水を飲み始めた。クソガラス。
「あなたは?いいの?」
返事しない。なんなのこいつら。
ヴィは乱暴にドアを閉めると、スタスタとトイレに向かった。ジェイは噴水を見ていた。噴水の中央の石像を。
アンティノウス。珍しく本物によく似てる。と言ってもジェイがかつてよく見ていたのは青銅鏡に映った歪んだ顔だった。
あの時も上手くはいかなかった。皇帝の愛妾という立場は役に立ったが……ローマでは、なにもかも複雑すぎる。
(ジェイ。ていさつ。
いけるよ。もう。)
アリーは捕まったショックからは立ち直っていた。失敗を挽回したいのか、張り切っている。
(にどと。つかまらない。
みはり。みつけてやる)
高速走行中の車内は、アリーにとって決して居心地のいい環境ではない。特にフルオープンだと、うっかりしていると車外に放り出されてしまう心配もあった。そうなったらニシコクマルガラスの飛行速度ではもう追いつけない。
(よし、アリー。高速に沿って先に行ってくれる?"見張り"に気をつけて。人間のそばには絶対に降りないで)
iPortaでインウェニ・ハリタを開き、航空写真モードにして、それをロクツィオでアリーに送る。
(これ見える?ここで待ち合わせしよう)
(わかった!がんばる
ジェイも。がんばれ)
アリーが飛び立ったのと入れ替わりに、ヴィが戻ってきた。
「この石像の人。すっごい綺麗な顔ね。誰かとは大違い」
ジェイは苦笑するだけだった。
「ねえ。ここのお店、お肉がすごく美味しそうなの。急がないんでしょ?」
アリーとの時間調整には良さそうだ。
店のドアを開けた瞬間に、まず肉の焼ける匂いが2人を襲った。野生的な匂い。臭いというのではないが、獰猛な香り。
ジェイはこの10日間、フランク料理に圧倒されてきた。その香りも芳ばしくはあったが、どこかコントロールされた人工的な香り。一方ヴィは、昨日サフィと食べたスシと、そのあとは病院食。そんな2人の鼻腔には、とても刺激的な匂いだ。鼻腔だけではなく、胃に直結する香ばしさ。
続いてヴィは、ウインドウに並ぶ彩り鮮やかなジャムの瓶に魅了された。教会での暮らしでも、ジャムはもちろん身近だった。いちごやブルーベリー。お父様とよく作った。だがここに並んでいるのは……オレンジやマーマレード、蜂蜜、薔薇のジャムまである。教会のジャムとは華やかさが違う。
そして、調理場の奥から聞こえる音。脂が熱せられる音、ぱちぱちと炭が爆ぜる音。
スタッフの、料理人然とした男が一瞬値踏みするような視線で2人を見たが、すぐに愛想よく、テーブルではなくショーケースに案内される。そこは肉の陳列棚で、好きな肉を選ぶと焼いてくれるらしい。
ジェイとヴィは、もはや脳ではなく胃袋にコントロールされていた。羊、豚、牛、選べない。スタッフに予算を聞かれて、ヴィはiVitraを見せて電子決済だと告げる。途端にスタッフの笑顔が一段階レベルアップした。任せてくれれば最高のディナーを約束する、と。断るなどできるはずもなかった。
北側のガラス張りのテラス席に案内される。濃緑の山、というか森。アンキュラではあまり見ることのない景色。この更に北は、もう黒海だ。
ヴィは海を見たことがない。本物の海は。ネットで、地中海のリゾートの綺麗な写真や大西洋の広大な青い水だけの世界のことはもちろん知っている。でも黒海はそれらとは違う。黒。北。閉塞感。この旅の先に待ち受けるもの。
目の前に広がる深い森もまた同様だった。空は見える。まだ青い。でも木々の隙間には白い霧が立ち込め、幻想的というよりは不気味な寒気を感じた。夏なのに。
ふいにコロンヤの香りがして、ヴィを故郷に引き戻した。ジェイがウェットティッシュの袋を開けて手を拭いていた。レモンの香り。アンキュラを離れてまだ数時間なのに、とても懐かしい。
それからは食祭が開宴した。黄金色のスープ。風船みたいに膨らんだパン。たくさんの小皿に分けられた前菜。
ドリンクはもちろんソフトドリンク。ジェイはアイランという塩味のヨーグルトドリンク、ヴィはコーラを注文した。コーラも初めてだが、肉料理に合うと言われて。
肉。黒い鉄板の上で香ばしい音と匂いを立てて、次々と運ばれてくる肉。ラムチョップ、牛フィレ、シシ・ケバブ。とても食べきれない量。更にとどめと言わんばかりに、子豚のロースト。てかてかとした艶は、蜂蜜でも塗られているんだろうか。恐る恐るフォークで突くと、ほろっと崩れそう。
コーラは確かにピッタリだった。真っ黒な見た目にちょっと驚いたが、爽やかな炭酸が肉の脂を洗い流してくれる。美味しくて、おかわりした。
ローマ。慣れ親しんだ共和国ではなく、ラテン語が飛び交い、寝転がって飽食の限りを尽くす、自称ローマ人たちのローマ。アヤソフィア大宮殿。
こんな贅沢はわたしには合わない。確かにどの料理もとても美味しいし、コーラだって三杯も飲んだけど。食べ過ぎて胸焼けがする。またコーラを頼もう。
げっぷが出た。はしたない?いいんだ。何事も経験。ジェイはまた、いつものように、だんまり。楽しい会話もなにもなし。黙々と、手掴みで肉を貪ってる。わたしのことなんか見もしない。
「ちょっと。食べてばっかりじゃなくて、話しなさいよ。少しくらい」
やっと顔を上げる。変な顔。
「……2年前。なにがあったの」
じっとわたしを見つめてる。か……とぼけた目で。それからついに!しゃべり始めた!百年ぶり!
「2年前。この身体に転生した」
「それは、前に聞いた!違う。べせれあのこと!なんなのよぉ、あの女」
「……ヴェシリア?会ったのはこないだが初めてだけど。2年前っていうか、その前のことだな。記録を見た。地上の。教皇と、ヴェシリア。知略にたけ、観察して、人の心を操る。あの2人がローマ……いや、世界を狂わせてる。人々の信仰心を利用して。その記録を見た、地獄で」
「ハ、アハハハハっ!地獄ぅ?おもしろ〜い!」
また変な顔して。ばか男。なにが地獄よ。わたしに言わせれば、こうしていることの方が、よっぽど……ばか男。人の気も知らないで。ばか男。
「……で?べせれあが、なんなの?あんなおばさん、わたしがやっつけちゃうよぉ?」
またコーラを飲む。おいしーい!
「……ヴェシリアは、頭脳明晰で冷徹で……それはなんだ。何を飲んでる」
ヴィのグラスを奪って匂いを嗅ぐ。
……コーラじゃない。黒クワスだ。それも、発酵がかなり進んだ、実質ビール。甘いビール。
やられた。店員が間違えるはずはないし、こんなに発酵が進んだ黒クワスなんて、普通は店になんかない。個人の家にならあるかも知れないが。だが何のためだ?
店内を見回す。一見して怪しそうな、例えば黒服だとかサングラスだとか、そんなやつはいない。とりあえず出よう。
「返せ!わたしのコーラ!」
ジェイは無言でヴィを担ぎ上げた。肩に。店員が驚いて駆け寄ってくる。
「お客様?!」
「抱っこ!抱っこがいい〜!」
「ごめん、飲み過ぎたらしい。コーラを」
店員には意味がわからなかった。だがこの客の会計はもう済んでる。金さえ払っているなら、いつ、どうやって帰ろうが好きにすればいい。いちゃつくなら他でやれ。
「……ありがとうございましたー」
店員はすぐに関心を失い、散らかったテーブルを片付け始めた。
【18時57分 コンスタンティノープル、エレシン・ホテル】
『対象V泥酔。店外へ』
「ちょっと失礼しますわ、会長」
ヴェシリアはiPortaのメッセージ通知を一瞥すると、軽く会釈しながらテーブルを離れた。壁際に移動する。
ヴェシリアにとって、目立たないというのは無理だった。|Pontus Euxinus《黒海》洋上風力発電事業のレセプションの立食パーティー、そのいちゲストに過ぎないのに、この高級ホテルの広大なボールルームに集まった数100人の中でもひときわ目をひく圧倒的な存在感。彼女が側を通ると、ローマやフランク、諸外国のVIPが一様に頭を下げて一礼する。
壁に背をつけ、VIPたちをいなしながらメッセージを打つ。
『対象2名の乗車を確認し、出発の気配が無ければ誘導せよ』
焦る必要はないが、長時間車中で休憩されたらせっかくの黒クワスが無駄になる。
「やあ、ヴェシリア。楽しんでいるかね?」
「ええ、社長。奥様もご一緒に?」
ヴェシリアは再びパーティーに戻った。
呑気なものだ。明日には全てが変わるというのに。
女神の如きパールホワイトのローブ・デコルテの、深く鋭いドレープに差し込まれたiPortaがまた振動した。テーブルのVIPたちに背を向け、通知を見る。
『対象2名乗車。フルオープン。待機中』
「ヴェシリア!聞いて欲しい。アンキュラに娘夫婦がいてね……こっちに呼んだ方がいいかな」
「ご心配お察しいたしますわ」
和かな笑顔で振り返る。電力会社の重役が、赤ら顔でヴェシリアを見ていた。
「騒がしくなって参りましたもの。よろしければ、保安庁の黒服をエスコートにおつけいたしますが?」
「本当かね!それなら安心だ。お願いできるかね?」
「もちろんですわ。」
ヴェシリアは笑顔のまま、おもむろにiPortaを取り出してVIPたちの目前でメッセージを打った。
『そのまま監視。10分経過して動かなければ揺動』
「手配いたしました。さあ、どうぞパーティーをお楽しみくださいな」
ヴェシリアがシャンパングラスを掲げると、テーブルの全員が慌ててグラスを持ち上げた。
ヴェシリアは笑顔のまま、グラスの中の琥珀の液体を飲み干した。VIPたちのグラスのドン・ペリニヨンP2と見た目は同じだが、ヴェシリアのそれはジンジャーエールだった。強い炭酸が喉を焼く。生姜の刺激が舌に残るが、やがて消えるだろう……Assultus が終わるまでには。
【19時17分 アナドル高速道、ボル山トンネル アヤソフィアまで242キロ】
太陽は既に山の向こうに沈んだ。空はまだ明るいオレンジ色だが、山影を走る路面は黒い。ロルフのHIDライトが青白く切り裂いて行く。周囲に車はなく、エキゾーストが狐狼の遠吠えのように響く。
ヴィを担いだまま店を出て、ロルフの助手席に寝かせてソフトトップを開けた。担がれてる間は長い脚をバタバタさせ騒いでいたが、シートベルトをつけるとおとなしくなり、そのまま寝てしまった。フルオープンにしたのは、少しでも風に当てようと思ってのことだ。
iPortaでインウェニ・ハリタを開いた。ヴィが起きなければ当面はナビはなしだ。この先のルートを確認し、記憶した。
20キロ走るとボル山にぶち当たり、高速は逆S字状にカーブする。長いトンネル。その先はしばらく何もなく、ここから35キロのカイナシュル・インターまではテシスレリもない。アリーとの待ち合わせは42キロ先のトゥルサン・パルク・テシスレリだ。時間にして約20分。アリーからは今のところ、特に報告も警告もない。
「……ばか男!……」
ヴィの寝言。20分では目も酔いも醒めそうにない。
大きなテシスレリを通過した。エルマルク。右カーブ。曲がった先に、ボル山トンネル。3キロちょっとの長いトンネルだ。カーブを曲がり切った右手に高速道路管理会社の建物があり、その陰に小さなパーキングエリアが見えた。黒いミニバンが数台。
突然、そのうちの一台が音もなく急発進して、ジェイの前に飛び出してきた。ブレーキペダルを蹴る。ロックさせないよう、踏力をコントロールする。ぶつかる距離ではなかったが、危なかった。
「?@%$こ!」
ヴィが何か叫んだが聞き取れない。ミラーに、パーキングエリアからミニバン数台が次々と出てきたのが映る。
――来たか。
そう思った時にはもう、ジェイとロルフはトンネルの半円の口に飲み込まれていた。橙色のコンクリートの回廊。風の轟音に混じってロルフのエキゾースト・ノート、あとはロードノイズと……微かにモーターの駆動音。前には横一文字のLEDのテールランプ。Roggだ。EVミニバン、最新型。どうりで音もなく現れたはずだ。これの飛び出しを避けた際、ジェイは左車線に移っていた。左は壁。トンネル内のナトリウム照明に染められたオレンジの壁。
速度は130。ジェイはステアを右に当て、スロットルを踏みつける。
だがEVの加速力は、ロルフのそれを凌駕していた。楽々とジェイの行く先を塞ぐ。さらに後方からもう一台、同じくマットブラックのRogg、ジェイの横に並びかける。そして空いた左車線にも、後方からフル加速してきたRogg、真後ろには見慣れたエンブレム、VdP。これもEVらしい。エンジン音が聞こえない。
ダイヤモンド・フォーメーション。包囲され行き場がない。
右のRoggのスライドドアが開き始めた。黒服のサングラスの男。ロボットのようになんの感情も読み取れない。乗り移ろうというのか。間隔は僅か数センチ。一跨ぎ。左もピタリと塞がれ、どうすることもできない。
風圧がすごいはずだが無表情のまま、男の手がロルフのロールバーを掴む――とその瞬間。
「€〒るなッ!」
男の手が下から薙ぎ払われた。ヴィだ。同時に、風の壁を突き破って左掌底を男の顎に叩き込む。全く予想外の攻撃に男はのけぞり、そのまま反対側のドアまで、Roggの車内に倒れ込んだ。運転手が気を取られたのかロルフに接触しそうになり、右に避けた。舵角が抵抗となり、Roggが後退する。
「座ってろッ!」
叫びながらジェイは、そこに出来た空間にロルフを突進させ、ヴィの上着を掴んで引き摺りおろす。バランスを崩して倒れかかって来るが、ジェイは右腕でシートに押さえつける。
「うふっ……あははははっ!」
ヴィが意味不明に高笑いする。
後退した右のRoggだが、運転手は有能だった。瞬時にミスを立て直してLEDをギラつかせ、EVの敏捷なトルクにものを言わせて、右の壁すれすれにまた並びかけてきた。LEDがオレンジ色の壁に白く冷たく反射する。前のRoggの加速にも勝てない。また同じ包囲網。
ここでまたヴィが動いた。何を考えているのか、何も考えてないのか、ヴィはなんと、開いている右Roggのスライドドアに――飛び込んだ。
さすがのジェイも呆気に取られる。130、いや既に150キロオーバーでトンネルを並走する車に、なんの躊躇いも逡巡もなく、一瞬で飛び移ったのだ。
ひょいっと、暴風も気にもせず。
Roggの車内から振り返り、笑いながら手を振っている。
アルコールの支配下でないとできない行動だった。もし生還できたとして、もう一度やれと言っても、素面のヴィなら絶対にしない、できないに違いない。
ヴィは、これは夢だと確信していた。
明晰夢。何度か見たことある。夢の中で、これは夢ね?って気づくやつ。気づいた瞬間から、わたしは無敵になる。なんでもできちゃう!
だから、ほら!走ってる車から車へも、こんなに簡単に飛び移っちゃった!楽しい!
さて。運転手さん、あなたは邪魔。この車はもうわたしのだ!
昨夜、デフネを気絶させたアスラン・ペッドを運転手に見舞う。酔っていて強く押し過ぎ、運転手はびくん!と痙攣して硬直、気絶はしたがスロットルペダルを踏みつけた。Roggがぐっと加速し、先行Roggに並んでいく。ヴィが運転手越しにステアリングを掴む。
ジェイは加速しながら、左足で一瞬、ブレーキペダルをちょんと踏んだ。直後のVdPは反射的に強くブレーキング。右Roggが前に並んだ瞬間、ジェイはそのテールに滑り込む。左にいたRoggはすかさず反応し、ジェイの左から離れない。
時速165キロからさらに加速し、3台のRoggと1台のロルフが、密着したままトンネルを左にカーブしていく。右壁に張り付くように。4台のステアリングを握る誰か1人でも挙動を乱せば、次の瞬間には大クラッシュだ。その編隊のウイングマン、右前を務めるのは、失神した右足と酔っ払いの腕だが。
後方に下がったVdPも追い縋るが、挙動が重たい。ついてこれない。じわじわと離されて行く。
【19時21分 コンスタンティノープル、エレシン・ホテル】
「――なにか面白い動画かね?」
声をかけられて、ヴェシリアは一瞬、険しい表情のまま相手を見た。すぐに笑顔に変えるが、相手はビクッとしてグラスを取り落としかけ、逃げるように離れていった。ばか者め。
再びiPortaを注視する。
ナトリウム光が乱反射してピンクに光る画面。黒い影、赤いテールランプが左一文字から右で2つに途切れる。Roggとロルフのテールがくっついたまま、じわじわと遠ざかる。
後方に置いていかれつつあるVdPの、車載カメラの映像。
面白い動画。まさにその通りだ。
ヴェシレの行動は完全に想定外だ。酔わせたのが裏目に――いや。
先行する黒い影の隙間に、白い光の点。トンネル出口が見る間に大きくなり、画面がホワイトアウトした。
動画を再生したまま、ヴェシリアはメッセージを打つ。
『R2をリモート』
【同時刻 ポル山トンネル出口 アヤソフィアまで238キロ】
4台が西日の中に吐き出された。時速170キロ。3車線の右側に固まって、長いカーブを曲がっていく。横Gが絶え間なく4台をガードレールに誘う。こだまするのは、ロルフの咆哮のみだ。
右前に位置するRoggがじわじわと前にでる。左前のRoggの運転手は接触を恐れて右足を踏み込み切れずにいるが、先頭に立ったRoggは全くおかまいなしに加速を続ける。そのテールに連結されているかのようにロルフが続く。
ヴィはもうステアリングを握っていなかった。反応しなくなったからだ。遠隔操作されていた。
勝手に走ってる。夢だもんね。便利ー!じゃあ、ばか男のとこに戻るか。寂しがってるかな?んふふ……あれ?ロルフじゃない。なにこの車。邪魔〜。ばか男どこいった?……いた!後ろか。
ヴィは再び運転席に身体を伸ばし……リアゲートを開けた。
ジェイは即座に異変に気づいた。この速度で、リアゲートが開き始めている。どうしようもなく、スロットルペダルを緩めて車間をとる。
「やっほー!ばか男ー!元気ぃ?ハッピィ?」
ヴィはリアシートのウォークインからサードシートに移って手を振った。屈託ない笑顔で。
ハッピーなのはあなたの頭だけだ。ジェイはつられて、口角が無意識に上がった。だがすぐに、ヴィが次にやろうとしていることに気づいた。
ありえない。死ぬ気か。
ヴィはサードシートを乗り越えようとして無理なのがわかると、屈んで何かした。サードシートの背もたれが倒れる。長い脚がサードシートを跨いだ。また飛び移るつもりだ。
無理。不可能だ。巻き込む暴風。落ちたら轢くしかなくなる。たまたま幸運にもロルフのボンネットに着地出来たとしたら、急激なフロント荷重にコントロールを失う。どっちにしても酔っ払いと心中。
ジェイは覚悟を決めて車間を詰めた。Roggのリアゲートに、ロルフのノーズを潜り込ませる。
ヴィは近所に散歩にでも行くように、普通に一歩右足を踏み出す。その瞬間にRoggが舗装の継ぎ目を乗り越えて、ダダン!と振動した。ヴィはバランスを崩し、踏み出した右足が空を切る。
ジェイは背中が疼くのを感じたが、翼を広げてもなにもできないのは明白だった。この速度の風力では、飛び出した瞬間に後方に吹き飛ばされる。
終わった。ジェイは目を背けたくなるのを我慢して、ヴィを見つめた。
「ちょっとぉ!ちゃんと運転しろよぉ!」
アスラン道の上級者としての本能か、ただの千鳥足か。ヴィはふらっと半回転してRoggに踏みとどまった。
「この下手くそ!」
遥か彼方から遠隔操作中のディルシズが運転していることなど露しらず罵倒すると、ヴィはジェイに向き直る。にっこりして。
もうなるようになれ。半ば呆れて、ジェイは再び接近した。Roggかロルフ、どちらかが僅かでも何かしたら接触する近さまで。ヴィが右足をロルフのボンネットに乗せた。
もうやり直しはきかない。ロルフのボンネットが身体の一部のように感じるほど、ジェイは集中した。
来い。ゆっくり。慎重に。
ヴィはそんなジェイの脅えともいえる心配など、全く気にしていない。スタッと歩き出す。ただ頭上のリアゲートにはつかまっていた。それがヴィの命を救った。
Roggが再びダダン!と揺れ、ボンネットの上でヴィの足が滑った。両足が浮く。リアゲートにぶら下がる形となった。リアゲートが下がる。ボンネットに足がつく。
ジェイはもう生きた心地がしない。変身より心臓に悪い気がする。
ヴィが手を離した。リアゲートが跳ね上がり、反動でヴィの頭に落ちてくる。直撃かと思った瞬間、ヴィはボンネットの上にしゃがみ込み、さらにフロントガラスに倒れ込むようにしがみついてきた。
Roggがリア荷重の急な変動に挙動を乱した。ロルフのフロントサスも沈み込んだが、それでもジェイは耐えた。ブレーキもスロットルもステアリングも、ミリでも動かせばヴィが落ちる。
【19時22分 コンスタンティノープル、エレシン・ホテル】
VdPの映像はホワイアウトからは復帰し、下り勾配で車重も加速を助けて、4台を追い始めていた。だがまだ距離がある。
ヴェシリアはカメラを切り替えた。4台の最後尾、ロルフの左側を並走するRoggの広角サイドカメラ。
魚眼レンズに映し出された映像に、ヴェシリアはジンジャーエールを吹きそうになった。咳き込む。鼻腔が痛む。
改めて見直す。映像が理解できない。
滑稽に歪んだ映像の中で、ロルフのフロントガラスに、人間が潰れたカエルのようにへばりついている。信じられない思いで、画角補正をかける。ヴェシレだ。ダークブラウンのミディアムウェーブが風にかき乱され、パンツスーツの上着も裏返って脱げそうだ。
そして続いて、さらに信じられないことが起きた。
ロルフがこちらに突っ込んでくる。
【同時刻 ボル、第一大架橋 アヤソフィアまで234キロ】
ヴィがフロントウインドウにへばりついている。両手で上端をしっかりグリップしているが、ボンネットの上では踏ん張りが効かない。顔面をガラスに押し付け、笑い出したくなるほど潰れている。実際、ジェイは笑いが止まらなくなっていた。可笑しいのではなく、もう狂気の笑いだ。
悪夢としか思えない。悪魔が悪夢にうなされるとは、これ以上笑えることがあるか。
ジェイは右手で、フロントウインドウに覗くヴィの右手を掴んだ。
「離せ!捕まえる!」
ヴィに聴こえるはずもないが、とにかく大声で叫んだ。もう狂ってしまったか。
ヴィの右手が浮く。ジェイががっしりとその手首を掴んだ。ヴィも同じくジェイの手首を掴む。爪が食い込むほど、強く。
その鋭い痛みを合図に、ジェイは左手でステアリングを引いた。
急な遠心力が、ヴィをフロントウインドウから引き剥がし、右方へ飛ばす。ジェイの右腕の筋肉が膨張した。離すものか。シャツがはち切れ、血管が膨れ上がる。
左にいたRoggが反射的に避ける。ジェイはスロットルを蹴り飛ばす。
2人の固く結ばれた右手。ジェイの盛り上がった右肩を支点に、ヴィの身体は遠心力と加速Gで振り回され、助手席の向こうへ弾き出される。その背後には渓谷。鬱蒼と広がる暗い森、そして霧。手を離せば、ヴィは闇に吸い込まれる。絶対に離さない、絶対。
Roggとの接触寸前。ジェイはステアを右に。同時に全力で右腕を引き寄せる。血管が破れ、血が吹き出す。
ヴィは左手で助手席のヘッドレストを掴み――そのまま、助手席越しにジェイの胸に飛び込んだ。
ジェイは前のRoggの、ゲートが開きっぱなしのリアビュー、左右のサイドミラーをほぼ同時に見た。後ろに車影はない。ブレーキング。ヴィの身体が横転し、ステアリングパッドに後頭部をぶつけた。
ホーンが鳴る。ジェイは視線を落とす。
「こら。見るなばぁか」
髪はぐしゃぐしゃ、目は涙目。顔は真っ赤。ジェイの血飛沫のせいではなく、酔っ払いだから。
ジェイは、今度は狂気ではなく、爆笑した。可笑しかった。心から。
【19時23分 コンスタンティノープル、エレシン・ホテル】
ヴェシリアはフゥッと息を吐いた。そして、息を止めていたことに気づいた。
ロルフはヴェシレが飛び込んだ後、カメラからフレームアウトした。だがもうこれ以上、見る必要はあるだろうか?
ない。充分だ。Assultus は目的を果たした。
『撤収。Gradus Ⅱは完了。ご苦労様』
ディルシズにメッセージを送信すると、続いて航空事務局長にもメッセージを打つ。
『ヘリを。至急』
ここまでは満足だ。あとは……
Iudicium《最終判定》。




