第13話 5月2週目(下)
まあそういうわけで顔合わせは終わり、花守家から出て行こうと立ち上がる桃川達。その中で竜姫にジンは話しかけた。
「竜姫」
「どうした」
「連絡先を交換しよう」
「いいのか?」
「うん。ジンは出会ってまだ少しだけれど、お前を高く評価している」
「? 何故だ」
「強いと分かっているのに、あの初めましてだ。きっと自分より強い者と出会っても、臆する事なく戦えるのだろう。それは凄いことだから、ジンはお前を高く評価している」
「あぁそうなんだ!確かに竜姫は自分より強いのがムカつくって言って、いの一番に突っ込んで行く。これは仲間からしたらとても頼もしいったらなんのって。今も無事に生きてるから分かるだろうがちゃんと勝ってるし、隊長してるだけあって、強いんだ! ジンは見る目があるなー!」
「なっ桃川! 貴方は少し黙っていてくれないか!!」
ジンの言葉に竜姫は目を見開いて、少しの迷いを見せたあと口を開いた。たが声を出す前に、桃川が竜姫が褒められた事にとても喜び、竜姫の事を褒めだす。
そんな桃川に顔を赤くした竜姫は、ぷるぷる震えながら桃川を睨みつけた。
「あははー! 竜姫のアカウント送っとくー!」
「ありがとう」
「……っ勝手に!」
「竜姫は嫌か?」
「嫌ではないっ! ……はぁ。桃川と違って普段忙しいのであまり返信は出来ないけれど、良いか?」
「うん」
他の皆が連絡先を交換従ったので、後で桃川に皆の連絡先を送って貰うことにした。
そしてジンも家に帰ろうとしたが、青青に引き止められた。
「じゃ、ジンも帰るよ。邪魔したね」
「ジン君もう帰るの」
「ジンはもう帰る」
「まだ居てもいいですよ。今日は顔合わせがあったから、私達暇ですし。白玉も遊びたそうですよ。ヘビだってほら」
櫻希もまだ居ていいと言って、庭からしっぽを振りながらジン達に駆け寄ってくる白玉へ視線を向けた。
なんか汚い。白玉は池に入ったらしく濡れてスリムになっていた。それに足も茶色く汚れていて、白玉は白いからとても目立つ。しかも、ヘビが足を出して四足歩行しながら、ジンを見るとバッと走ってどっかに行った。
「はぁ。ならもう少しだけいる」
「ならば菊鏡と一緒にオセロしませんか? 朝、テレビで久しぶりに見てからずっとオセロがしたい気分なんです」
「オセロ久しぶり」
「菊鏡、ジン、俺がオセロ持ってきますから待っていてください」
「うん」
「あぁ」
菊鏡に誘われてオセロをする事になったジンは、菊鏡に近寄り座った。オセロは柑吉が持ってきてくれるらしい。櫻希と金麿、青青と常日はオセロの見学をしに、寄ってきて座った。
夕紅はそのまま横になり、徳雅に頬をつつかれながらうえーと情けない声を出してのんびりしている。
「残念。俺はこの後も用事があるから一緒に遊べないけれど、ジンちゃんはゆっくりしていいからね」
「うん」
用事があるらしい日暈は紅貴と夜彦を連れて、広間から出て行った。
この場に残ったのは、他には義時と散夜のみ。それ以外は庭に出て白玉とヘビと遊んだり、昼寝すると言って自室に戻ったりご飯の準備します! といって台所へ行った。
シュノも呼んで一緒にご飯はどうかと誘われたけど、今日はジンが好きな肉うどんを作ってくれる日なので断った。
柑吉がオセロ以外にも人生ゲームを持って戻ってきた。人生ゲームを見かけてしたくなったらしい。菊鏡とジン以外は、人生ゲームをするみたいだ。
「あのゲーム終わったら、人生ゲームに参加しようよ」
「そうしましょうか。あ、トランプも持ってきたようですね。スピードもしませんか」
「大好きだよ」
「俺もです」
キリッとしたらキリッと返された。黒がジン白は菊鏡。中央に四つ並べて、オセロ開始。菊鏡が先手だ。
「トランプ久しぶりに見た。七五三とか一九三とか好きだったな」
「分かります。小学生の頃沢山しましたね。七並べが時点で好きです」
「ジジ抜きがババ抜きより好きだった」
「ですよね……ババ抜きはスリルがありません」
石を置いて裏返して、石が置かれて裏返されて。先に隅を取ったのは菊鏡だった。正方形を真っ二つにする白い斜線が、盤の上に出来る。
「ソリティアはスマホのアプリにもあるから、インストールしてるわ」
「あぁ確かにありますよね。俺もあとで入れましょう」
戦略なんて何も無い、適当に置いて裏返してる。だからか、一戦目は負けそうだ。菊鏡が置いた石が、私の黒を一気に五つも白に変えた。置ける場所があるのに、置いたところで白に変えられない。やはり負けた。
隣の人生ゲームはまだ序盤。色はそのままに、二戦目開始。さっきは菊鏡からだったから、今回はジンが最初。
「なんで序盤で、親が蒸発してヤクザに口座を売り、借金百億になるんだ!? な、なに……なにこれ、『人生ゲーム☆ハードモード〜生まれた事が間違い〜編』って……!」
「ゆ、夕紅! 私なんて倒産して外国の鉱山掘り行きですよ!!」
「何故死ぬのか。人生ゲームにデッドエンドなんて要らないが??」
「死んだらリスタートって何? 人生はやり直し出来ないんだよ!!」
夕紅と櫻希と徳雅が、とても気になる会話をしている。
何そのどん底な人生ゲーム。なんで死ぬの? 終わりがある人生を題材にしたゲームだからなの? ジンの脳内に疑問が増え続ける。
人生何が起きるか分からない。だから明日突然死んでもおかしくないけど、人生ゲームには必要ないと思う。ゲームなんだから幸せにしてくれたっていいとジンは思う。
「あんな人生ゲーム嫌だ……」
「同感です。トランプが一番いいですよね。トランプは死にませんから」
「普通死なないんだよ、人生ゲームでも」
ジンと菊鏡も後で人生ゲームをしようと思っていたけれど、聞いた感じヤバそうだからやめておくことにした。きっと正しい判断だ。隣を見ると、青青なんて理解出来ずに宇宙を背負っていた。
柑吉、なんてもん持ってきてくれたんだ。どこで買えるのこんなもの。
「なんだか物凄くトランプがしたくなりました。朝はあんなにもオセロがしたかったのに。オセロ欲がどうやら解消されたようで、今はトランプの事しか考えられません。あぁ、ほら俺は今トランプ脳なので、一列全部黒にされてしまった……」
「愉快だよなお前」
「はい? なんですか急に。褒めても何も出ませんよ……白しか」
「ああ綺麗な黒の一列に白が入り込んできた……」
「オセロの楽しい所は、置ける場所が限られているので逆転が出来にくいところですよね」
「そうだね。悲しい。終わりだ」
「おや、負けてしまいました」
「数えてないよ」
「俺は初めからずっと、数えていますよ。ジンの方が四個多いです」
「一、二、三、……本当だ」
ぽんぽん二人して置きあったら、あっという間に終わってしまった。石を半分集めて、綺麗に揃えるのは面倒だから畳に散らばらせる。どうせ最終的には六十四マスの中に収まるのだから、大目に見て欲しい。
今度は色を変えて始める。ジンが白。隅を狙っていこうと思う。ジャンケンをして勝ったので、今回もジンが最初になった。
「うぅ……火山が噴火して蜂の巣になり、死亡……。やっと中盤に入ったなのにっ。一番乗りだったのにっ……辛い」
散夜の嘆きが聞こえてきたが、ジンは今どこに石を置くかをすごく悩んでいるので、見ることが出来ない。
五個裏返る未来を選ぶか、四個裏返る未来を選ぶか。悩ましい。
人生は悩みの連続だ。人生は一度きり。今欲張らなきゃいつ欲張んるんだ。死んでからでは遅いんだぞ。よし、五個にしよう。
「あ、斜めもいけるじゃん」
「気付いてなかったんですか? 視野が狭まっていたようですね。目先の利益に囚われ過ぎるのはよくありませんが、稀にそれ以上を得ることが出来ます。結局は欲張って諦めずに突き進んだ者が、最後に笑うんですよ。--ほら、一気に八個も白に変わってしまいました」
「うひょーい。やったー」
「棒読みが過ぎますね。笑えます」
「笑ってないじゃん」
「心の目で俺の笑顔を見てください」
「臓器の目で見させてほしい」
半分を埋める半分攻めを仕掛けていたジン。一番端の列は白だから、頑張れば黒を沢山白に出来る。ワクワクだぜ。
置いて裏返して置いて裏返して。最後。
見るからに白が多い。ジンは勝てて嬉しいので、ふんって得意げに笑った。
「あぁ負けました。次はトランプしませんか」
「いいよ。何をする」
「……んー。そうですね。神経衰弱しましょう」
「いいよ」
石を仕舞ってオセロを横にはけて、菊鏡がトランプをよく混ぜて畳の上に綺麗に並べた。
「死んだ。リスタート三回目はいいや。俺もトランプする」
「徳雅、三回も死んだんだ」
「最悪」
「笑えますね。それではジャンケンで勝った人から時計回りにしましょう」
「分かった」
ジャンケン、ポンッ。ジンはグー、菊鏡はパーで徳雅はチョキ。一瞬見合って、あいこでしょっ。しょっしょっしょっしょっ。長い戦いだった。連続してあいこになるなるとは思わなかった。
此度の戦いの勝者はジン。ジンから最初に二枚めくる。揃わなかった。ジン達は菊鏡を頂点にした三角形を作っているの。なのね次は菊鏡、結果揃わず。徳雅も、揃わず。二週目でジン、揃える。揃ったからもう一度引いて、揃わなかった。
皆位置を覚えているので、あっという間にトランプが減っていく。残り十二枚。一度も誰もめくっていないトランプは三枚。菊鏡の番。もう結果は見えていた。
滑らかな手捌きでトランプはめくられ、揃えられていく。初見のトランプ三枚なんて、もはや知っているも同じ。菊鏡が、勝った。
「ふむ。良い戦いだった。……
神経衰弱やめてジジ抜きしよう」
「そうですね。幅取りますし」
「俺、指スマしたくなってきた」
「急にどうした」
「神経衰弱が懐かしすぎて、小さい頃の記憶がよみがえった」
「……最後暇だったもんね」
適当にカードを一枚抜いて、残りのカードを分ける。隣の人生ゲームでは、夕紅が何も話さずに項垂れていた。悪い人生を歩んだようだ。
ジジ抜き。ジョーカーを抜くババ抜きとは違い、二枚のジョーカーを入れてジョーカー以外のカードを抜く、それ以外はババ抜きと同じルールのゲーム。
一体どのカードがジジなのか分からない状態に、スリルとドキドキを味わえる素晴らしいゲームだ。
さて、早速一つ誤算がある。トランプの揃いがよくて、残りのカードが二人よりも圧倒的に少ない。悲しい。ジンは直ぐに勝利してしまうだろう。ジジが混じっていなければ。
なんて楽しいゲームなんだ。そう思ったつかの間に、ジンは全てのカードを失ってしまった。なんてつまらないゲームなんだ。
ジンはいそいそと徳雅に近付いて、手札を覗き込む。徳雅が見やすいように動かしてくれたので、ジンの記憶と照らし合わせる。どうやらジジは今、菊鏡が持っているようだ。
まだゲームは始まってそんなに時間が経っていないので、二人のカードは多い。引いて減らしてを二人は繰り替えしていく。その間に何度かジジが移動したが、たぶん二人も気付いたと思う。
今ジジを持っているのは徳雅。他五枚。終わりが近いぞ、頑張れ徳雅。勝手にカードを見てるから徳雅を応援しているが、冷静になるとどちらが勝ってもどうでもよかったわ。
「ワクワクだぜ」
「早く引いてください、菊鏡様。何を悩む必要があるというんですか」
「待て」
「はーやーくー」
「待てと言っている。そこら辺にいる駄犬でさえ、意味の無い待てを遂行出来るぞ」
菊鏡が悩み引くのを躊躇うと、徳雅が急かす。そうだぞ、お前は前髪のせいで顔が見えずらいから、表情から読み取りにくいんだ。
前髪切ったらどうだろうか。邪魔そうな前髪と自分の前髪の長さを棚に上げて、ジンはそう思った。
菊鏡がやっと動いてカードを引く。揃った。減った。菊鏡の残りのカードが減った。徳雅引く。揃って減る。菊鏡引く。揃わず増える。徳雅引く。揃わず増える。を繰り返した。
「この枚数で、これって……運命は残酷だ」
「よっし!!」
「あ……」
菊鏡が遂にジジを引いたらしい。そして更に平行線を繰り返して、残り合計三枚。ジジは徳雅に戻った。もういいよ、決着がつかなすぎる。見てご覧、隣の人生ゲームを。
あと十マスくらいでゴールに着きそうな人が出てきたよ。なんで残りはまだ中盤に居るんだ。人生ゲームに時間かけ過ぎだろう。全速力で駆け抜けろよ、人生という名のゲームをよ。
菊鏡が腕を伸ばす。指先が触れたカードは。
「……ジジだ」
「もういいよ。早く終われよ」
「飽きてきた。流石に最初のジジ抜き、しかもあと少しで終わる所に数十分も費やすなんてアホの所業だ。まだダチョウの方が有意義に時間を過ごせるだろうに」
「ダチョウは脳みそが小さいから無理だよ。家族だって認識できないんだから」
「久しぶりのトランプで、こうなるだなんて……トランプって本当に楽しですね。そして隣の人生ゲームは、最後の最後で暗殺されて人生ゲームやり直しですよ。もう生まれてこない方がいいと思います」
「ほら、トランプ出してください。引くので。--こう言われてるぞ、金麿」
「はい、どうぞ」
「マジ無理。人生ってクソ」
「憐れに思う。生まれてきてしまった事が間違いだった」
「あお、これがタイトル回収でしょうか」
「そうだと思う。お兄様」
「なんだろう、生きるって楽しいなっ」
最後、散夜に同意。生きるって楽しいね。
そしてやっと決着が着いた。負けたのは徳雅だった。
「……この世はクソ」
「八つ当たりの規模がデカいですね」
「俺がツンツンしてあげるね」
「しなくていいです。止めてください夕紅様」
ぶーぶー。スマホが鳴る。シュノからの電話だ。そういえば花守家に居ること連絡してなかった。
「今日はもう帰るよ。ありがとう。楽しかった」
「そうですか。俺も楽しかったです。また遊びましょう」
「うん。またね」
「またねー」
「またね、ジン君」
「バイバイ、またね」
広間の皆に挨拶して、庭を遊ぶ白玉達に声をかける。生と天司が遠くで手を伸ばして振ってくるので、振り返す。
「白玉、ヘビ。帰るよ」
「わん」
「ぴー」
白玉とヘビが玄関へ向かったのを見て、ジンも玄関へ向かう。途中で雛守に会って完成した今日のおかずのおすそ分けを貰って、家に帰った。
「ただいま。お前達は先に風呂入れよ」
「わんわん」
「ぴぃ」
「ふふっおかえりなさぁい。ジン、白玉、ヘビ。楽しかった?」
「うん」
「わんっ!」
「ぴー! ぴー!」
「そう、良かったねぇ」
ジンが最後に入り、ドアは閉められた。




