第二十六話 ナスの味噌田楽
端の方で餃子を包んでいると、ドアが開いた。
「こんばんは」
確かいつか電気ブランを飲んでいた紳士だ。
「いらっしゃいませ」
彼は慣れた様子でカウンターに座るとウィスキーを頼んだ。
「今日は何か食べていこうかな……」
そう言われれば、前回はお酒ばかりでつまみを口にしていなかった。
見ているうちにだんだん思い出してきた。憧れの先輩に独立した後ネガキャンされたって言ってた人だ。
「何かおすすめの野菜はありますか?」
「野菜……ですか」
この人もベジタリアンなのだろうか。この人が前回来た後、何日か経って来店したネガキャンしてやったとか言っていた、別の老紳士もベジタリアンだったな。
と、その時ドアが開いて、ちょうど今思い出していた、白髪の老紳士が入ってきた。
「おやおや、これは懐かしい顔だ」
「これはご無沙汰しております。ラボの件では大変お世話になりました」
「いやいや、後輩が困っていたら手を差し伸べるのは当然の事だよ」
あー、やっぱりこの二人知り合いだったのか。でも表面上お礼を言ったりそれに答えたりしてる割には、なんだろうこの端々に滲むトゲトゲしさは。
「で、おすすめの野菜は?」
多少イラついている様子の彼が繰り返す。
「あ、すみません。今ちょうど旬を迎えているナスが入っています。味噌田楽なんてどうでしょう」
「味噌田楽? それはどんな料理なんだね?」
「半分に切ったナスを多めの油で揚げ焼きして、甘辛い味噌を塗った料理です。トロッとして美味しいですよ」
「「じゃあそれで」」
二人の声が重なる。この間の二人組といい、仲悪そうなのにどうしてこういう時だけ息ピッタリなのか。
「おや?君も私の真似をして野菜のみを食べるようになったのかね?」
「別にあなたの真似をしたわけではありませんよ。それに今は気分的に野菜料理を頼んだだけで、野菜しか食べないわけでもありません」
「ほほう。まぁ、何事も模倣からから始まるものだからね」
「さすが、未完成の発明品を買い取って改良してお金儲けを利用しているだけはありますね」
「はっはっは」
「ふっふっふ」
なんだろう、なんか怖い!
二人とも笑顔で、あくまで紳士的に振る舞っているのに、目が笑っていない!
そうこうしているうちに味噌田楽ができてきた。今持っていくの嫌だなぁ、と思いつつ、皿を運ぶ。
「お待たせいたしました。ナスの味噌田楽です」
二人の前に料理を置いてやると、早速食べ始めた。
「おお、これは美味しい。特にこの、皮がパリッとしたところが、香ばしくて、美味しい」
「君は何を言っているのかね? この実のトロッとしたところこそ至高じゃないか」
意見は合わないけど、味噌田楽自体は二人とも気に入ったらしい。
その後もなんやかんやと意見は対立していたけど、結局二人で横並びのまま飲んでいた。
本当に仲が悪いなら席を離れればいいのに、そうしないとこを見ると、本当は仲いいのかもしれないな、と半分呆れながら見ていた。




