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アニマルメモリーズ  作者: syun
二章
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七話 ラクダの追憶

夢の中で、視界の奥から、歪んだ記憶の断片が、濁流のように溢れ出してきた。

それは、俺の記憶じゃない。

この不格好で重い「ラクダの肉体」が、その細胞の一つ一つに刻み込んでいた、過去の追憶だった。

世界は、今よりもずっと優しく、暖かかった。

まだ俺の体が、大人の半分にも満たないほど小さく、細かった頃の記憶。

生まれたばかりの俺の足は、今よりもずっと頼りなく、砂漠の熱い砂に足を取られては、何度も何度も無様に転んでいた。俺の体の幼体は、他の子供よりも圧倒的に成長が遅く、歩くことすらままならなかったのだ。

野生の掟なら、そんな足手まといは、その場で置き去りにされて餓死するか、肉食獣の餌になるのが当然の結末だ。

だが、そのたびに、ボスラクダの前に立ち塞がる「巨大な影」があった。

一頭の雌のラクダ。

そして俺を救ってくれたラクダ。

俺の体の本当の「母親」だった。

彼女は、ボスラクダが俺を蹴り飛ばそうとするたびに、自らの巨体を盾にしてその衝撃を受け止めていた。

野生の群れの絶対的な規律に背き、牙を剥いて威嚇し、激しい怒りを買いながらも、決して俺のそばを離れようとはしなかった。

群れが移動を始め、俺が砂丘を登れずに力尽きて転がり落ちると、彼女は決まって歩みを止め、群れから遅れる恐怖に怯えながらも、俺の元へと引き返してきた。

言葉なんて、そこには一つもなかった。

「大丈夫よ」とも、「愛している」とも、彼女は言わない。

ただ、砂まみれになって震える俺の小さな頭を、その大きな、生温かい鼻先で、何度も、何度も、優しく小突くのだ。

トン、トン、と。

不器用で、だけど途方もなく温かい、その肉体の接触。

それは、歩けない俺を「立て。生きろ」と、静かに励ます無言のメッセージだった。

彼女が根気強く、何日も、何週間も俺の背中を押し続けたからこそ、この不自由な足は、灼熱の砂漠を歩けるまでに育ったのだ。

群れから完全に追放されたあの時も、彼女だけは、群れのすべてを捨てて、俺の後を追ってきてくれていたのだ。彼女は常に、俺の気づかない少し後ろから、その静かな眼差しで俺を見守り続けていた。

目が覚めた。

怪我は治っていない。

血も止まらない。

涙も止まらない。

痛いからではなかった。

俺の知らないあたたかさを知ったから。

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