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WORLD)SOUL(WORLD   作者: 六等星
新人合同訓練会編
44/47

41 デジャブ

敵も鎮圧し、残すはまだ人がいる可能性があるエリアの探索だけとなった。隊員たちはそれでも気を抜くことなく、急いで負傷者の保護へ向かった。


「こっちのエリアは終わったよ!」

「最終確認は!」

「済んだ!だから今そこに当たっていた人たちを私たちの方に回して!」

「場所は足りそう?」

「問題なし!」

「ここで引き渡すまで拘束!」

「なー暇だから遊んでくれないか?マリパ持ってきた。」

「それいつのやつですか?」

「レトロゲー扱いか…。」


まだ訓練の最中、しかしそれは着実に終わりに向かおうとしていた。そんなときに、八代とガイードを呼び止める声があった。


「そこの2人!ちょっとこっちに来てくれないか!お前らの力じゃないとどかせない壊れた家具があって、中に人がいるんだ!」


「分かった!すぐ行く!」

━力の見せ所です!━


当然助けを求める声を無視することなく、2人はその隊員についていった。


「ありがとう、こっちだ!ついてきてくれ!」


隊員の案内に従って、2人も後を追った。人混みからは離れていき、声もかなり小さくなったところで一つの家の中に入った。中はとても暗く、人の気配もない。


「で、負傷者はどこに?」


「悪いね、今までの嘘!」


家の中だと思われていた暗闇は、一瞬にして謎の空間、強いて形容するとしたら宇宙に近しい空間に飛ばされた。目の前にいた隊員の姿はなく、フードを被った顔を見せない怪しい影となって佇んでいた。


━敵ですか!━


八代とガイードはすぐに攻撃に移れるよう構えた。


「うぇいうぇいうぇいと。いやーこのウブな感じ、悲しいもんだね。とりあえず言えることは、僕、敵じゃない。むしろ仲間!」


「崩壊連星との関わりは?」


「あー、そんな奴らもいるね。俺嫌いなんだよね、崩壊連星。」


━それは何故?━


「だってアイツらぶっ壊すことしか脳がねえじゃん?ジェンガとかやったら1ターンで終わりそうだよね。トランプタワーも作れないし、パズルもなんもできない!だから嫌い!…あ、今そんな古いゲームって馬鹿にしたでしょ!分かってないなーこういうシンプルな方が」


「何が目的か言え!後敵じゃない証拠も!」

━じゃないとおしゃべりしません!━


「…悪いな。やっぱどうしても話すと楽しくってな!話すのって何度やっても面白いもんなのさ。止まらなくなっちまう。いや、止め方を見て見ぬフリしてるってとこか…いやん!何感傷に浸ってんだよ!恥ずかしい!」


八代たちにとって今までに味わったことのない妙な空気が流れる。どう口を開けばいいのか分からず、沈黙を選ぶほかなかった。だがその空気を、1人の少女の声が破った。


「もう聞いてらんない見てらんない。何?今の話。」


その少女の声の主も同じようなフードを被って、顔は見えなかった。


「あーいや、どうしても話すの楽しくてよ!…悪かったって。」


「分かればよろしい。んで、どうする?やれそう?これは。」


「さあな。とりあえず触れば分かる。」


「(触れば?)」


そう八代が疑問に思ったのも束の間、男はいきなり襲いかかって、拳を放った。八代は咄嗟に何かを掴んで守ろうとした。すると空間を掴むことができ、伸びた空間は男の拳に当たってガラスのように割れた。


「あ、おいこの空間掴めちゃってるじゃん!」


「解除したら外部にバレる。おマエは頑張って適応して。」


「はーっ人使いの荒いこと!嫌になっちゃうわ!あたし!転職サイト開こ!」


男は八代に向かって蹴りと拳を交えた乱打を叩き込んでいく。


「ほらほら、一方的じゃつまんないぜー?」


「(コイツの攻撃…性質が俺たちのと似てる!)」


━『天地貫槍』━


回り込んでいたガイードが男の背後から攻撃を仕掛けた。だが槍の先端は男の顔寸前で止まり、反撃を喰らって後退りしてしまった。


「へえ、それは使えんだ。悪くない!」


━これ以上させませ…うっ!━


「おマエの相手はワタシ。」


少女はガイードに向かって青いエネルギー弾を放ち、注意を引いた。男と八代、少女とガイードの構図が出来上がった。


「さてと、じゃあコイツはどうする?」


男は空間を掴み、槍のように伸ばす。そう『天地貫槍』だ。


「お前、俺たちの能力をコピーしたのか!?」


「自分の能力なんて言うわけないっしょ!」


「『天地踏破』」


八代は正面から向かってきた『天地貫槍』を、『天地踏破』で上に逃げたことでなんとか回避した。


「それもいけちゃうか!もっと見せろよ!」


男は下から突き上げるように槍を何本も作り出した。まだ完璧とは言えない出来の『天地踏破』では一本一本見てから回避するしかできず、訓練による疲れから集中力も低下し、ついに一本の槍が八代の足を掠め、真下に落ちた。


「あったりい!」


「ゔっ!」


━ミツキ!━


「だから相手はワタシ。行かせないよ。」


青いエネルギー弾を線状に撃ち込み、その爆風でガイードとの連絡は閉ざされた。


「うーん、これも駄目だったかあ。」


男は跪く八代の前で空間を大きく掴んだ。


「…俺も人間だな。まだ殺しには抵抗しかねえや。」


男は腕を振りかざす。


「まあ、時間重視ってことで!bye!」


「うらああああっ!」


八代の意志は不屈の意志。一回落ちた程度では折れる意志ではない。足を怪我し、跪くふりをして地面を広く掴み、大槍を作り出した。

真正面から槍は衝突する。


「いいねいいね!前言撤回、期待値爆上がり!」


しかし、上の方にいる男の方が力は強い。八代は押され、ジリジリと斜め下は槍は下がっていく。


「力は俺の方が強いみたいだ!重力に負けるな!黒淵のとこでやってんだろ?」


何故それを知っているのか、などと質問する余裕はなかった。八代は今、なんとしてでもこの男を退け、生き延びなければならなかった。でないと、空のまま死ぬことになるから。しかしそんな窮地は、人を成長させる。それは経験が証明済だ。


「ん…?」


男は、八代の槍を突き出している右手とは反対の左手から、何か違和感を感じずにはいられなかった。


八代は左手で掴んでいた。それは、大地でも、空でも、この空間でもなかった。八代自身でも、何を掴んでいるか分からなかった。

分かるはずがなかった。どうしてか、って?何故ならそれは


      世界だから。


八代は男を槍ごと遥か後方に吹き飛ばし、空間を割り、彼らを閉じ込めていた謎の空間は消えた。家からは衝撃による煙があがり、彼を包み込んだ。


「何してるの!」


━助かった、んでしょうか?━


「悪い、俺も、何されたか分かんねえ。」

「…え?」

「分かんねえんだよ!すげえぞ!初めてだ!」

「本当に?」

「マジマジ!分からなかった!知らなかった!おい!今何やったんだよ!」


男は興奮気味で、少女もそことなく嬉しそうだった。八代は何が起きたか自身でも理解できず、ただ左手を見た。


「分から…ない。」


「ははっ!だろうな!だって今の俺お前より知識あるもん!」

「変なとこでマウントとらなくていいから。とりあえず、これでいいんだよね?」


「ああ。」


━ちょっと待って下さい!ミツキに何かしたんですか!?そして結局貴方たちは何者なんですか!?━


「確かに、このまま何も伝えずに帰るってのもよくねえな。」

「発言には気をつけなよ。」

「わーってるわーってる!


さて、じゃあそのガイ…ードの質問に答えてやろう。そしたら帰る。


まず一つ。俺はアイツを調べただけだ。怪我も治ってるはず。」


「あれ、本当だ!さっき足をやったはずなのに。」


「ほらな。んで、次。


恐らく、お前らどっちも記憶喪失だろ?」


「…ああ。」

━ええ。━


「俺たちはお前たちの、記憶を失う前を知っている。」




「え」━え━


「嘘じゃねえ。本当に知ってる。ただ、今は話さない。」


「なんでだよ!」


「それじゃハッピーにはならねーからだ。ずぇーったいにな。だから、お前らについてはまだ何も言わん。ま、この感じだといずれ分かるかもしれねえけどな。だからアドバイスってか、忠告。仲間を増やしておけ。そうすりゃお前らが倒れてもきっと、そいつらが支えてくれる。」


男が意味ありげな一言を呟いた直後、空気を荒く殴り倒しながら家を破壊して降下する影が一つあった。破片は八代とガイードに当たらず、煙は晴れた。そこに佇んでいたのは運天とドッドドだった。


━「おい待ちやがれ侵入者ども。お前ら今日訓練に参加してる隊員の中にいなかったな。話でもしてかねえか。」━


「うわっやべ!ちょ、早く!」


「もう作った!入れ!」


━「ノリの悪い奴らだ。」━


「サンキュー愛してるぜ!あ、それからも一つ情報。


俺たちとお前らはダチだった。


じゃあな!」


そう言い残して、風の手が後数センチのところに迫っていたところで、2人は消えていった。当たらなかった風は前方の家々を薙ぎ倒して消え去った。


「…友達?あんなのと!?」

━てかそれだけですか!?━

「でも、大きな情報は手に入った。俺たちを知っている奴が、この世界にいる。なんとしてもまたアイツらに会って話をしないと。」


━「おいお前ら。怪我ねえか?」━


運天とドッドドが2人のもとへ駆け寄った。


「あ、さっきの敵」


━「今は普段通りの心優しき正義の味方だ。あれは侵入者で間違いないか?」━


━え、ええ。━


━「チッ…おい松本。侵入者が出た。訓練は即座に中止。俺が全員避難させるから封鎖手伝え。」━


運天は自身に向く怒りを抑えながら、八代とガイードに話しかけた。


━「変な姿勢で乗るな。下手に動くな。そしたらすぐに逃げられる以上。」━


運天とドッドドは有無を言わずに2人を風に乗せて飛ばした。


「うわっ、飛んでる!」

━ありがとうございます!━


━「礼されていい立場じゃねえ。早くここ出ろよ。」━


運天はそう言い放ち、他の新人隊員のもとへと向かった。風にやられる最中、2人の脳内にはあの男と女のことが満ちていた。遥か遠くで、非常に曖昧で、シルエットすら見えないようなあの2人のことがどうにも忘れられず、言葉を頭の中でずっと繰り返していた。


"「悪い、俺も、何されたか分かんねえ。」"


"「俺はお前たちの記憶を失う前を知っている。」"


"「俺らとお前らはダチだった。」"

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