31 なんとかなれ
「よし、じゃあ行くよ!短いけど海ほたるへのハザードドライブ…出発!」
4thはアクセルを踏み、出動者は細かい瓦礫や砂が散乱する悪路を走り始めた。
「頼む、食いついてくれよ…!」
「流石に世界鍵を持っていかれるわけにはいかないだろうから、こちらに寄ってくるはずだ。」
━「(走り出したか。よし。)『斬撃』!」━
千装隊長とライフブレイカーは攻撃が終わった後海ほたるの方向を向くように仕掛けた。目論見通りダイの視界には海ほたるの方へ逃げてゆく出動車が見えた。
「アイツらを逃すつもりか!」
━「(食いついた!)ああ。お前に構わず最初から世界鍵を運んでしまえば良かったな。そうすれば私たちの目的は果たされる。」━
「モク…テキ。」
ダイはその一言に立ち止まった。少し考えた後何かに気づいたダイはニヤリと笑ってみせた。
「フン!」
ダイは猛スピードで出した砂の手で千装隊長の足を掴み、橋に向かって叩きつけようとする。
「『削錐』!」
千装隊長とライフブレイカーはドリル状の足で橋を砂の手ごと貫き、少し左右にふらつきながらも体勢を立て直し、橋の上に着地した。
「4th!ダイが千装隊長を狙ってるぞ!」
「え、なんで!?」
「世界鍵の奪取が奴らの目的じゃないのか?」
━「何故私を狙うんだ?お前たち、世界鍵を狙ってるんじゃ?」━
ダイはその言葉を聞いた瞬間笑い出した。
「…まさか本当にそうオモっているとはな!僕の目的は…おマエを殺すことだ!」
━「何!?」━
「目的をカタったところで戦うことが変わるわけでもないからオシえてやる。お前はボクたちにとって邪魔だから殺す!それがモクテキだ!」
砂の攻撃は大波のように千装隊長に押し寄せる。大きく跳躍して砂の中に埋もれてゆく自動車や壁をうまく伝ってかわした後、出動車を追いかけるように走り出した。
"━「みんな聞いてくれ!奴の目的は私の殺害だ!世界鍵の奪取ではない!」━"
"「千装隊長の…殺害?」"
"━「ああ。気前よくペラペラと語ってくれたよ。だが私自身が目的となれば話は早い。なんとかして私が海ほたるに向かえばダイは自然に」━"
走る千装隊長とは逆方向に出動車が颯爽と駆け抜けていき、背後を守るように滑りながら止まった。
「千装隊長を…」
「殺す?」
「私たちの隊長を…」
「殺す?」
「SST8?」
「ど、どうしたの?海ほたるに向かうんじゃ」
SST8は肩と声を震わせる。特殊の2人が様子を伺おうとした瞬間、激昂を上げて攻撃体制に移った。
「テメェふざけんのも良い加減にしろよクソボケ!」
「死ね。」
「内臓晒して生姜や葱と合わせて包丁で叩いて醤油をひと回しした後食い散らかす!」
「生まれてきたことを後悔しながら失せろクズ!」
SST8は血走った目で特殊を見た。
「乗っちまった船だ。降りるなよ。」
「も、勿論そのつもりはないが…」
「ちょっと落ち着いて…」
"「千装隊長!俺らがダイをブッチブチにします!」"
"━「い、今なんて?……じゃあ海ほたるに着くまで私を護衛してくれ。消耗の回復をしたい。」━"
"「っしやってやらあ!」"
"━「海ほたるまで、だぞ。」━"
"「分かりましたでは!」"
━「(兎にも角にも皆の士気は上がっている。悪くない状況!)行くぞ!」━
千装隊長が走り出すと出動車はそれを守る形で後ろから走っていく。
「このゴに及んで逃げるとは落ちぶれたなスタビライザー!」
「うるせえ黙ってろ砂クズ!」
「エレクトロ!なんでもいいボタン押せ!」
━かしこまりました。ぽちぽちぽちっと!━
エレクトロがボタンを3つほど押すと、出動車から巨大な砲台が現れた。
「大砲を人にぶつけるのはまずくないか!?」
「経験則ああいうデカブツは一発くらっても死なん!撃て!」
砲台に力が溜まっていく。音が高くなっていき、最高音に達した瞬間、青い光が彼らの上を通っていった。
「この光っ!エネルギー砲か!?」
ダイが巨大な両腕を前で組んで身構えた。しかしその攻撃の正体は…。
「…水?」
「水遊びがしたいならシタに行け!」
ダイは出動車の足場を狙って巨大な拳で殴りつける。橋は轟音を上げながら崩れ落ちてゆく。
「落ちるぞ!」
「落ちない!うおおおおあああっ!」
4thは雄叫びを上げてハンドルを握りアクセルを壊してしまうのではと心配になる程強く踏み込み、レーサー顔負けのドラテクで無事に橋に復帰した。
「しぶといやつめ!」
━「(なんとか耐えてくれているみたいだ。流石だな。)」━
「うるせえお前のほうがしぶといわ早く失せろ!」
━「(暴言が聞こえたような気がするが気のせいだろう。)」━
5thは怒りのままにエレクトロにボタンを押させる。
「なんとかなれ!」
━ぽちぽちぽちぽちぽちぽちぽち!━
出動車からは鉄球が回転しながら飛んで行ったり、煙幕が飛んで行ったりと実用的な攻撃もあれば、やかんや下駄、壊れた傘などのガラクタも飛んで行った。
「なんかないかなんかないか!」
「ドラえもんの映画にこういうシーンあるよね。」
「行ってる場合か!一体どうしてこんなガラクタ詰め込んでるんだ!?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「心配っすね。皆さん大丈夫だといいんすけど。」
「俺たちは祈るしかねえな。勝てなくても負けなきゃいい。…どうか無事でいてくれ。」
「その通りっすね。」
「大丈夫!ワタシ様たちが改良しておいた出動車があれば絶対勝てる!」
「改良?…もしかしてまた何か勝手に付け足したんすか!?」
「い、いや?まあちょーっと使えそうなものは片っ端から突っ込んでみたけど…。」
「処分しようとしていたガラクタが無くなっていたのってノアの仕業っすか?」
「…。」
「コラ!」
「わああいやでも弁明させてくれ!ちゃんと絶対役に立つ機能も入れといた!超スーパー王道の!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…さっきからふざけやがって!ガマンならない!」
ガラクタを投げ続けられて怒り心頭のダイは体からもう2本、太い砂の腕を作り出した。
「いい加減ぶっ潰れろムシ共!」
「うわあっまずいよ!」
「こんなとこでやられる訳に行くかってんだ!最後のボタンに賭けるぞ!エレクトロ!」
━頼みますよ!━
エレクトロが最後のボタンを押した。すると出動車の下部が勢いよく開き、細く力強い炎が現れる。
「速度が上がってる!」
「どうやら当たりを引いたようだ!」
━ええ!ブースターですよ!━
速度が大幅に上昇した出動者はダイを置き去りにし海ほたるに向かって走り出す。
「千装隊長!乗ってください!」
━「分かった!」━
千装隊長は驚きつつも咄嗟の判断で一瞬速度を上げて出動車に並んだ後すぐに掴み乗り、危機を脱した。そのまま凄まじい速度で進んでいき、遂に海ほたるの直前まで辿り着いた。
「千装隊長!止めるの手伝ってもらえますか!」
━「分かった!私が方向はコントロールする!4thはブレーキを踏み続けろ!」━
「了解!」
4thは全力でブレーキを踏み続ける。千装隊長とライフブレイカーは背中についていた飛行装置を変形させて地面を抉るように突き刺していき、無事に出動車は止まった。
━「ありがとう。よくやったな、皆。」━
千装隊長は笑って隊員の顔を見た。SST8はもう言葉も出さずに和やかになっており、特殊の2人はもうその光景を何も考えずに受け入れることにした。
━「ここなら言っていた通り、飛行装置を多用せず戦えそうだ。」━
千装隊長は向かってくるダイを見据えて気合を入れ直す。
━「ここが最後の戦場だ。行くぞ!」━




