28 RE IGNITION
「どこ見て走ってんだよ!!!アウトロード!!!」
━「ああ!?」━
━アンに復讐することが意志なんですか!?━
ガイードは八代に続く形でそう問いた。
━「そうだって何度言えば分かるんだボケ!」━
「な訳ねえだろ!」
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「この声、特殊の子たち…何やってるんですか!?」
「喧嘩!?」
「…おや?仲間割れですか?だったら好都合!」
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━「なんでお前らが否定できんだ!」━
「千速と過ごしてたときもずっとそう思ってたのかよ!」
━「ッ!」━
「んな訳ないだろ!」
八代の反論に、アウトロードは言葉が詰まった。
━全部行森お爺さんに教えてもらいました。楽しそうに笑って、千装隊長に勝つために特訓して…そのときもアンへの復讐を考えてたんですか!?━
━「あのジジイ…勝手に余計なこと吹き込みやがって!」━
「答えろアウトロード!」
八代はアウトロードの目を真っ直ぐ見る。
「お前は何を望んでたんだ!」
「2人とも!危ない!」
「楽しかったですよ、2人とも。長い夢の中へ行ってらっしゃい。」
八代とガイードを囲むようにありとあらゆる瓦礫が猛スピードで迫る。
「お前の本当の意志はなんだ!」
━「俺の…意志。」━
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━ここは…魂世界か?━
アウトロードはただ真っ直ぐ伸びる荒野の道路の真ん中に立っていた。風が吹き、砂埃が舞い周囲は見えにくい。アウトロードが1度目を閉じ、それから目を開けると、そこには1つの影があった。
━シンイチ!?━
アウトロードは千速に駆け寄った。
━シンイチ!シンイチなんだよな!?━
「うん。そうだよ。」
━本当なんだよな!?夢じゃねえんだよな!?━
アウトロードの頭の中は千速と再会できたその喜びで埋め尽くされていた。
"━じゃあその意志とやらはどうすんだ?━"
アウトロードの背後には、アウトロードがいた。そう、これは本物の千速とアウトロードではない。
━…記憶か。━
"「アウトロード。」"
千速は優しく呟いた。
"「僕は世界が見たいんだ。本とか、ネットとか、そういうのに載ってる世界を全部、この目で見てみたい。だからさ、僕を連れて行ってよ。」"
"━はん!それはできねえ約束だな!━"
"「えっ!?どうして?」"
"━載ってるじゃなくて載ってないのも、連れてってじゃなくて行くんだよ!━"
━…ああ。━
"「…そうだよね!」"
━…そう、だったな。━
"━まずは日本一周だな!━"
"「どこから行こうかな…富士山頂?稚内?与那国島?」"
アウトロードは激しくエンジンを吹かせた。その風は砂埃と共に記憶の足跡たちを消し去り、青い空を広げた。太陽の光がアウトロードのエンジンを照らす。
━…ボケが。どこでもねえよ。俺らが今から行くのは…。━
魂世界が閉じる。
━全ての先だ!━
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凄まじい衝撃音と共に瓦礫が煙となって舞い上がる。
八代とガイードの無事はもう絶望的だと誰もがそう思ったその瞬間。
「な、何故!?」
瓦礫の中から3つの影が現れる。
「確実に殺したはず…あんなに離れている距離を…。」
黒い煤を出していたエンジンは、再び点火された。
「救えるはずが!」
出力は最大?いや、限界のその先だ。
━『ターボ・ジェット』!━
『ターボ・プロップ』よりさらに一段階上の『ターボ・ジェット』の最高速度はマッハにも達する。アンとはそう離れていない故、衝突時はマッハには達していない。しかしそれでも、音と共に駆けるほどのポテンシャルを秘めた火力であれば事足りる。
アンは吹き飛ぶ、というよりも消し飛ぶように自動車に何台も穴を開け、遮音壁と共に崩れた。
━お前らのお陰でようやく思い出したぜ…。━
「アウトロード!」
━今のは!?━
アウトロードは再びエンジンを激しく唸らせる。
「…これは使わなくていいか?」
━んなもん要らねえな!土産として持って帰れ!━
アウトロードは手を八代とガイードに向けて差し出した。
━行こうぜ!━
「応!」━行きましょう!━
八代はアウトロードの手を握り、ガイードは八代の中に隠れた。
「…あれ、今流れに任せて手握っちゃったけどさ…なあガイード…ガイード!?」
━幸運を祈ります!━
━行くぜーッ!━
「…結局これかよォォォォォッ!?」
「『パイルアップ』!」
アンは瓦礫を浮かせてさながら宇宙船の進行を防ぐ小惑星帯のようにアウトロードの突進を阻んだ。このまま突っ込めばクラッシュは必然。でも彼にはもう、仲間がいる。
「『べんびばんぼぶ!』」
━よくやった!━
背中に乗った八代が瓦礫を砕いていく。もうアウトロードは止まらない。
━オラ降りろ!━
「っぶね!」
━『ジェット・プロップ』!━
「あがっ!?!?」
加速時間が長かった分、威力は初撃の『ジェット・プロップ』よりも格段に高い。それはアンの魂と融合した肉体も成す術がないほどだった。
━天地貫槍ってちゃんと言ってもらえませんか?━
「マジで一回変わって大変さを分かって!」
「…段違いの威力…何を…!」
━お前なんかもう眼中にねえ。その先を見れるようになっただけだ!━
アンは地面に手をついて、高速道路やその柱を自身ごと浮かせた。
「何を今更!人が、魂が、そんな一瞬で変われるわけないでしょう!」
押し寄せる波のように瓦礫が襲いかかる。その中からアウトロードは大きく上に突き出る。
━『ジェット・プロップ』!━
アウトロードは瓦礫を蹴り飛ばしていく。だがそのせいで速度は大きく減少していき、アンの前に着く頃には『レシプロ』レベルになってしまっていた。
「遅い!その程度」
━『リバーサ』!━
「なっ…!まさか!」
アウトロードは逆噴射してアンを空中に打ち上げた。
「(威力が弱い…でも吹っ飛びは大きい!あの逆噴射の意味は!)」
アンが上を見た瞬間、輝く異世界の空を隠す二つの影が現れた。
「変われるよ。人も魂も。それがどんなに小さなきっかけでも。」
アウトロードは上を見る。
━言ったろ。俺は先を見てんだ。お前への復讐なんかもう…━
「『天地貫槍』!」━『天地貫槍』!━
落下速度も加算された天地貫槍の威力は、SST8、アウトロードによってダメージが蓄積されているアンを破るのに事足りる。
━考えちゃいねえし、シンイチも望んでねえよ。━




