26 蟻地獄
━「『削』」━
「粉々にしてやる。」
千装隊長とライフブレイカー、ダイのお互いの攻撃は正面から衝突した。砂は少し飛び散る程度にまで硬くなっており、千装隊長の削る攻撃もあまり効いていない。
「さっきまでの僕だとは思うな。」
ダイは背中から無数の砂の腕を出し、千装隊長の方へと向けた。
「ここ。」
「っ!」
6thは目眩しとして煙幕をダイの顔面に向かって発射した。ダイは視界が奪われてしまい、千装隊長への攻撃はバラけ、容易く対応されてしまった。
━「『砕』」━
「フン!」
それでもすぐに切り返したダイの大きな拳は千装隊長とライフブレイカーの『砕』を止めた。
「そこまでやってこの程度か。」
そう余裕そうにダイが言い放った瞬間、千装隊長とライフブレイカーの左肩から鉄の紐が射出され、瓦礫を掴んでダイの背中に豪速球のようにぶつけた。
━「この程度だ。」━
「…まだだ!」
ダイは全身を覆っていた砂の一部を足から地面に伝わせ、千装隊長とライフブレイカーの足を巻き込んだ。
━「足を取りに来たか。」━
「強がっていたってもう避けることはできないぞ。」
ダイはガラ空きとなった千装隊長とライフブレイカーに拳を叩き込もうとする。ただ、その背後から光る影が一つ。
━「今だ!」━
「了解!」━了解!━
「なっ!?」
「『電光石火』」━『電光石火』━
背後に潜んでいた5thとエレクトロが飛び出し、指先から電気の塊が千装隊長とライフブレイカーを捕えるために露出したダイの体の一部に直撃した。痺れと痛みにより一瞬力が抜けたダイは拘束を解いた。そこをすかさず千装隊長とライフブレイカーは攻撃しようとしたが、すぐに復帰したダイは再び防いだ。
━「タフなやつだな。あんな子供のような見た目からは想像できなかった。」━
「子供の成長とは思っているよりも速いものだ。」
一連の流れを通して実力や攻撃方法をあらかた察知した両者は、再び睨み合った。そして言葉もなしに同じタイミングで駆け出した。
ダイは先ほどよりも厚い砂を身に纏い、防御はより強固なものとなっていた。千装隊長とライフブレイカーに速度では勝てないと察知したダイは、2人の攻撃が止んだタイミングを狙ったカウンターを仕掛けようとしていた。だが、問題なのは相手は千装隊長とライフブレイカーということ。
━「『殴』!」━
両肩、両腕のアームギアが作動する。それは無数の拳の雨となってダイに襲いかかる。
「ただの殴打など取るに足らず!」
ダイはその凄まじい殴打に怯むことなく受け止め続ける。しかし時間とは常に流れるもの。どんなに威力を抑えようと、ダイの砂は段々剥がされていく。
「…クソ!」
痺れを切らしたダイは一か八かで攻撃に転じた。細く伸ばされた砂は拳の雨を見事に掻い潜っていき、それを抜けた先で大きな砂の塊となって襲いかかる。
━「ライフブレイカー、解除!」━
「なっ!?」
千装隊長はライフブレイカーとの魂装を解き、ダイの股の下を潜り抜けた。まさかの行動に驚いたダイだったが、背後への攻撃が得意であった。千装隊長目掛けて、一度は6thに防がれてしまった砂の手を繰り出す。そして一本の砂の手は千装隊長の首を掴んだ。
「掴んだぞ馬鹿め。そのまま首を捩じ切って殺してくれる!」
ダイは千装隊長の目を憎そうに見ながら上へ掲げる。だがそこで千装隊長は喉から声を絞り出した。
「今だ…ライフブレイカー!」
━目標確認。━
ダイの背後から轟音が迫る。その音の方向からは、ライフブレイカーが飛来していた。
「お前は囮!?」
━『突』!━
魂装解除の瞬間、千装隊長を下に滑り込ませる力で自身を射出し、空からダイへ奇襲を狙っていた。それは見事に成功し、ライフブレイカーは塊となって振り向いたダイの腹に直撃した。
「ライフブレイカー!」
投げ出された千装隊長は再び魂装に戻ることで、頭から道路に落ちることはなく、無事に立て直すことができた。
衝撃で巻き上げられた砂が視界を塞ぐ。千装隊長とライフブレイカーはダイがいると思われる方向を警戒し続けた。段々と砂は夜風に飛ばされていき、視界は晴れていく。
「…うう、うわーん!」
ダイの姿は戦闘前の少年の姿に戻り、目に涙を浮かべて座っていた。
「姿が戻った?」
━ふむ、力が解けてしまったのでしょうか。━
「ひどい!そんなに打たなくたっていいじゃんか!」
「先に襲ってきたのはお前だろ。千装隊長、確保しますか?」
5thがそう聞くと、千装隊長は口元を隠して小声で連絡をとった。
━「…4thと計良。…」━
「…?今なんと?」
━「あれはこれじゃ終わらない。」━
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「これで最後だ!」
━了解。━
「ありがとうございます!」
「死ぬかと思った!」
「命の恩人だあ!ありがとうスタビライザー!」
「こっちも運び終わったところだ。よくやった!」
「中々やるね、特殊!」
「ありがとうございます!」
━( ̄▽ ̄)ガンバったのボクたちのホウだけどね〜?━
「それは勿論分かっている。ありがとな、チェイサー、オージャ。」
━フン、これくらい朝飯前だ。━
「お前飯食わないだろ。」
「それで、戦いの方は…千装隊長たちはまだ交戦中かな。」
4thはオージャとは別に観測用のドローンを飛ばしていた。そこから映像を確認しようとしたとき、連絡が入った。
「ん?千装隊長から連絡が来てないか?」
「本当だ今確認……!?みんな、行くよ!」
「な、何があったんだ!?」
4thは駆け出し、2ndは黙ってそれに続き、計良と追崎たちも戸惑いながら駆け出した。
「千装隊長が橋の下に繋界を開けて欲しいって!そのためにはオージャの協力が必要なの!」
━( ̄▽ ̄)えーまたー?タスけてロウキー。━
「協力を依頼している立場で頼りきりになる形で申し訳ない!SST8として情けない限り。ただ急がないとまずいんだ!」
彼らの目にも、子どもの姿に戻って泣き喚いているダイの姿が映った。
「子供になってる!」
「あの砂の男の姿のダイは倒されたんだろう。ただ相手は崩壊連星の仲間だ。一筋縄で行くわけがない!きっとまだ隠し玉がある!」
「よく分かんないけどとにかくやればOKてことね!オージャ、もう一回よろしく!」
━( ̄▽ ̄)シカタない、ボクたちもアブないならやらなきゃね。━
「世界鍵はこれを使って。」
「え、これって最新のやつじゃ」
「いいから!責任は私たちが負う!」
「繋界を作ることだけに専念するんだ。」
「…分かりました!よし、行くよ!」
━( ̄▽ ̄)レッツゴー!━
オージャは最新の世界鍵を抱えて千装隊長たちが立っている場所の下に向かった。
━( ̄▽ ̄)モクヒョウチテンにトウタツ!さあ、ヒラ━
そのとき、オージャの上の橋にヒビが入り、砂が大量に降ってきた。
━( ̄▽ ̄)うわっ!まずい、セカイカギが!━
オージャの7号はその砂に世界鍵を巻き取られてしまった。世界鍵は海に向かって落下していく。
「7号、大丈夫だよ!」
━( ̄▽ ̄)いや、セカイカギが!━
━( ̄▽ ̄)オとしたものばかりカンガえるな!━
━( ̄▽ ̄)ナカマがいるよ!━
もしもに備えて計良は8号と9号を7号の下に潜り込ませていた。橋が軋む音と落ちる砂の中、世界鍵は8号がキャッチし、作動させた。
そのとき、ついに橋が壊れた。
━( ̄▽ ̄)マにアえー!━
世界鍵は無事に0.5秒で繋界を作り出した。作戦は成功だ。
━( ̄▽ ̄)やったー!━
「ナイスオージャ!そして…私たちを助けてー!」
━( ̄▽ ̄)ええっ!?って、こ、これナニ!?━
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「…流石だね、千装隊長。」
ダイは立ち上がる。その顔には君の悪い笑みが浮かんでいた。雰囲気も、目の色も、砂の形も全てが異なっていた。
━「何をした?」━
「コイツを飲んだんだ。」
ダイは薬瓶を揺らしてみせた。
「これがあれば僕は魂の力を最大限引き出せるんだ…もう戻れないけどな。」
━「お前にはアンがいるんじゃないのか!?」━
ダイの体から砂が溢れ出る。既に戦闘の衝撃でボロボロの橋は、砂の重みでヒビが入っていく。
「ああ…?いいんだ。アン姉ちゃんはこの作戦の成功を望んでる!アン姉ちゃんは僕の成功を望んでる!そうすれば…。」
橋は崩壊する。
「喜んでクレる。」
ダイの体はみるみる砂に包まれていき、その包んだ砂は人の形へと変わっていく。大きな砂の怪人と化したダイは、既にオージャが開いていた繋界の中へ落ちていく。
「引き込まれる!?」
「俺の手を捕め!」
「ありがとう!アヤカは!?」
「なんとか無事…!」
━( ̄▽ ̄)オ、オモい…。━
「コラ!帰ったら解体するよ!」
ダイは砂の手で隊員の足を掴む。
「まずい!」
「お前タチもだ!」
ダイは隊員を掴んだ砂の手を異世界へ落ちていく自身の体の方へと引き寄せた。
「ジゴクに引き摺り込んでヤル!」




