25 お互い
「おいアン!お前の目的はこれか!?」
8thは世界鍵二十七式をアンに見せた。しかしアンはそれを見た瞬間クスリと笑った。
「まさか本当にそう思っているとは。」
「違うのか!?じゃあ何故ここへ!」
「そんなの言う訳ないじゃないですか。」
"「くっ…こちら2号車!現在異世界湾岸千葉!アンは世界鍵が目的ではない!しかし真の目的は不明!」"
隊員たちを嘲笑っていたアンの前に、アウトロードが歩いていく。
━「アン。忘れたとは言わせねえぞ。」━
「おや、貴方は?」
━「お前が殺した奴の相棒だ。」━
「ふむ…申し訳ありませんが、記憶にありませんね。でもまあ良いでしょう?記憶に残らなくとも一瞬一瞬が美しければそれで良」
━「『ターボ・プロップ』」━
「人の話を遮らないで下さい。」
飛び出したアウトロードに対して冷酷にそう言い放ち、側にあった空車をぶつけた。アウトロードは車を蹴り飛ばす方に注意を払ったため、アンに攻撃は当たらなかった。
「アウトロード!無闇に突っ込んだって駄目だ!」
━「黙ってろ!これは俺の戦いだ!」━
1stが声をかけてもそれはアウトロードには届かない。再びアンに突っ込んで行ってしまった。
「7th、私たちはアンの攻撃を引きつけよう。」
「撹乱ですね。分かりました!」
「1st!俺たちはアンの攻撃からの防御をメインに動こう。」
「了解。でも僕は攻撃でも動くよ。マグネシア、今日は頑張ってもらうぞ。」
━気を引き締めて、勇気を持って!━
SST8が手際よく役割を分担して戦闘に参加する姿を見て、八代とガイードは焦っていた。そんな2人の肩に1stは触れた。
「そして、君たちが主力だ。」
「は、はい!」
━本当に私たちに務まるんでしょうか?━
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作戦を立てる際、黒淵隊長も電話越しに参加していた。
「これでは1号車が火力不足か?」
"「いや、これで大丈夫だよ。八代とガイード、アウトロードと千速が主力を張れる。」"
━「フン。」━
「え、俺たち!?」
━確かに前新しい技を習得して3週間ほど練習しましたけど、流石にSST8を出し抜けるほどとは…。━
「それに、主力となると敵と接触する機会が増える。実践経験が少ない彼らにとってそれは危険なのでは?」
"「そのためのSST8だよ。君たちの支援の実力と活躍は5年前の幕張事件を筆頭によく知っている。相手がアンであっても大丈夫だよ。」"
「そ、そうですかね。」
SST8は黒淵隊長に褒められたのが嬉しかったのか、顔を少し赤くして照れていた。
「皆は私とライフブレイカーという暴れ馬をずっと支えてきてくれたんだ。新人1人を支えるくらい、なんら問題ないだろう?」
「問題ありません!」
「0人でも支えられます!」
「お願いします誰か1人はついて!」
SST8はとても嬉しそうに答えた。
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「大丈夫。僕たちが全力でサポートする。君たちは君たちのやりたいように動けばいい。それが戦闘であれ、"説得"であれね。」
それでも2人には不安が残っていた。それは戦闘面でなく、違う理由として。
だが1stはお見通しとでも言うような目で2人を見た。
「アウトロードのこと、頼んだよ。千装隊長のためにも。」
1stは笑ってみせた。
「…はい!」
━任せて下さい。━
━そろそろ終いにしなさいお話!突っ立ってたら来るのは死!━
1stと八代とガイードはアンの方へと駆け出した。
「僕は右の3台をやる!マグネシアは左!」
飛んできた6台の自動車は1stとマグネシアが抑えた。
「ふむ、防がれますか。…後ろですね?」
「ちっ、8th!」
「任せろ!」
背後から7thはフラッシュを投げたが、アンはそれに気づいており弾き返した。すかさず8thが盾で守ったお陰で自爆には至らなかった。
「すみません!」
「仕方ない、相手が相手だ。」
━「どこ見てんだこのクソ野郎!」━
「ふむ…悪くはないですね。」
横から襲いかかったアウトロードの足はアンの腕に当たったが、拮抗した後アンに弾き返された。
「〈ここなら…〉」━〈いけます!〉━
アンが腕を振り上げたとき、八代とガイードは飛び出して空間を掴んだ。
「『天地貫槍』!」━『天地貫槍』!━
「おお!見たことのない攻撃ですね。面白いです。」
八代とガイードも3週間サボっていたわけではない。毎日黒淵隊長に見てもらいながら『天地貫槍』の練習をしており、問題なく出せるようになるまで成長はしていた。だがその1発1発が渾身の攻撃も、アンの魂を吸収した肉体には大した傷としては残らない。痛がるどころか、2人の攻撃に笑みを浮かべていた。
「全然効いてない…!」
━流石に強いですね。━
「報告!1号車の方でダイっていう新しい敵と交戦中のようだ!増援はまだ来れない!」
「くっ…怯むな!このまま戦い続けるんだ!」
「(ダイも上手くいっているみたいですね。良い喰らい付きです。これなら目的は果たせそうです。)」
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数日前、アンは大火やあの少女と同様、激しい脳の痛みと共にお告げを受けた。
「アン姉ちゃん!大丈夫?」
「…ええ。大丈夫です。」
片目を抑えながら出てきたアンの元にダイは駆けつけた。
「私と貴方に から作戦が言い渡されました。
「そうなの!?どんな作戦?」
「…そういえばまだダイは にお会いしていないから分からないんでしたね。」
アンは落ち着いて息を吐きながら、近くにあった椅子に座った。
「貴方の実行すべきこと、それは…"千装リンの殺害"です。」
「人を殺せばいいんだね!いつもと同じだ!」
「いいえ、今回の相手は今までの遊び相手ではありませんよ。千装リンはスタビライザー京葉隊隊長。若くして隊長の座についた期待のエース、とされているそうですね。」
「どうして僕がそんなの殺しにいかなくちゃいけないの?」
「彼女は"理超"を実現する可能性が高いと が判断しました。その場合 の脅威となり得る。だからこそ早めに摘んでおかなくてはならないのです。」
「そうなんだ…僕、できるかな?」
「千装隊長が怖いですか?」
「ううん。1人なのが…怖い。」
「あらあら。そんなことでしたか。」
アンはダイを抱きしめた。
「大丈夫ですよ。貴方なら絶対にできます。」
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━「こっち見ろクソが!『ターボ・プロップ』!」━
「マグネシア!ズラす方向で行こう!」
━それに同意!全回避は無理!━
「『天地貫槍』!」━『天地貫槍』!━
「ほら、こっちに飛ばしてこなくていいのかい?」
「これでも喰らって下さい!」
「気をつけろよ!」
「(視界が悪い上に攻撃も激しい。そしてこちらの攻撃はもう通用しないようですね。)」
アンは手を左右にゆっくり突き出した。
「ならばこちらもしっかりと戦わせて頂きましょう。」
「ん?なんだいこの揺れは。」
「…!?皆さん横です!」
7thが叫んだ途端、遮音壁が浮き上がり、隊員たちに向かって飛び出した。
「ガイード!」
「俺の後ろに隠れろ!」
八代とガイードは地面を引き伸ばして防御のための壁を作り出し、8thは盾を1stとマグネシアにも支えてもらって仲間を守った。隊員たちは必死に耐え、体を圧迫されながらも必死に瓦礫の中から這い出た。内出血の箇所には気味の悪いひんやりとした血の感覚が走る。
「あら、防がれてしまいますか。1人くらいは潰せると思ったのですが。流石SST8と期待の新人。咄嗟の判断力も優れていますね。」
「やっぱり自動車の操作だけではなかった!事故ならなんだって引き起こせるんだ!」
「それはどうでしょう?今のは偶然ということも」
━「んな訳ねえだろ!お前の『事故』の魂の能力だろうが!」━
「怖い怖い。でもこれで終わりではありませんよ。」
アンは高速道路上の街灯から縁石ブロックまであらゆるものを浮かび上がらせた。
「私も戦わせてもらいましょう!」




