24 作戦開始
「時刻は0:10。迎撃作戦開始。」
作戦の開始時刻となった。静寂の中を作戦に参加するSST8、千装隊長、特殊派遣部隊は出動車に乗り込む。また、このとき世界鍵二十七式は1号車と2号車にそれぞれ一つずつ載せられた。
特殊派遣部隊の出動車、1号車には千装隊長、2nd、4th、5th、追崎、計良が、
京葉隊の出動車、2号車には1st、3rd、7th、8th、八代、アウトロードが乗っていた。
確認が済んだ後、2台の出動車は京葉基地を後にした。
2号車は湾岸線を、1号車は東京湾アクアラインを通って川崎基地へと向かう。世界鍵二十七式が両方の車両に乗せられたのは、確実に一つを失わないようにするため。どちらの世界鍵にも自爆装置をつけてあるので、もし片方が襲われてもそれを破壊すれば問題はない。
そしてアンが襲撃してきた方に、川崎側で待機している黒淵隊長と川崎隊隊長、止境隊長が援護に向かう、という形だ。
「1号車はアクアラインへ、2号車は湾岸線へ移動!」
「アイツら、大丈夫だといいんだが…。」
「大丈夫だよ!SST8が4人ついてるし、それにいざとなったらあの隊長も来てくれるんだし。」
「まあ、そうだな。よし、俺たちも俺たちの作戦に集中しよう。」
「木更津北を通過しました。もう少しでアクアラインに入ります。崩壊連星が何か仕掛けるとしたらそこです。皆さん、十分警戒を!」
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「(この装置、結局俺が握ることになったな。どうすべきか…。)」
不安そうに装置を握りしめる八代の手に、ガイードが手を重ねて囁いた。
━〈大丈夫ですよ。あなただけが握ってるわけではありません。〉━
「〈…ありがとう。〉」
「みんな、緊張はしていないかい?」
1stは優しく話しかけた。
━緊張してます。━
「そりゃもうばっきばきに。」
━「…。」━
「ははは、だよね。特に八代くんとガイードは今回が初の合同作戦なんだろう?」
「おや、初だったのかい?」
「そりゃ緊張するだろう。なあに、俺たちを頼れば本艦連戦など大したことないさ!」
「崩壊連星ですよ!間違えないで下さい!」
「こっちはみんな余裕がありそうだ。でも、相手はあの崩壊連星。世界鍵は奪われても、命が奪われるようなことはあってはならない。命第一で頼むよ。」
「そうだよ。生きてなきゃ何もできないからね。ほら、もうそろ蘇我だ。仕掛けてくるとしたらこの辺りだろう。構えとくんだよ!」
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「ねえアン姉ちゃん!本当に僕これから1人で動かないといけないの?」
「ええ、そうですよ。ごめんなさいね、ダイ。」
「うう…嫌だよ。…でも、僕やってみせるよ。僕だってアン姉ちゃんの助けになりたい!」
アンはダイを抱きしめた。
「まあ、この子ったら。ダイは私のそばにいるだけで十分助けになっているというのに。でも、ダイのその意志を無駄にしはしません。さあ、お互い参りましょう。」
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2号車。東関東自動車道、湾岸千葉。
「…!?1st!」
運転席に座っていた7thが叫んだ。それに応じた1stはマグネシアを呼び出し、出動車のドアを開けた。
「あの白いトラックを!」
━これはぱっと見大ピンチ!やってみせようマグネシア!━
出動車の横を炎と共に白いトラックが飛んでいく。なんとか出動車との衝突は避けられたものの、それは壁に当たって爆発した。
「く…すまない。」
━切り替えること。あの人の分まで戦うこと!━
「して、こっちに来たかアン!」
「どうも皆さん。千装隊長以外の方とは初めましてですね。こんばんは。」
"「報告!1号車、アンと接敵!交戦を開始します!」"
停止した出動車の中から隊員たちは出て、高速道路の淵に立つアンと対峙する。だがここは高速道路だ。後ろから事情を知らない一般人がクラクションを吹かせている。
「おい!何止まってんだ!そこ退け!」
「挨拶の途中ですよ。無礼者は出て行きなさい。」
声色に怒りを含んだアンは再び車を浮かせた。1stは先ほどと同じくマグネシアで捕まえようと試みたが既に遅く、高速道路から車は投げ出された。悲鳴と轟音が入り混じった音が下の国道の方から響く。
「さっきのは本気じゃなかったのか!?」
「…悪くはない響きですが、イマイチですね。」
「8th!自爆はせずそれを使え!ここで戦うと死人が増える!」
「まさか実戦投入とはな!」
7thの合図で8thは世界鍵二十七式を取り出して頭上に掲げたかと思うと、一瞬で隊員とアンを異世界へ送った。
「これが新型…!コイツを盗まれるわけにはいかねえな。」
「これが新型の世界鍵の性能。知らせてもらっていた情報と同じですね。
さて、悲鳴の数が大きく減らされたのは残念ですが、ここなら貴方達も思う存分暴れられますね。私、ハンデは嫌いですので。」
「勝手なことを!でもアンの言う通りここなら民間人の心配をする必要はない。みんな、全力で行くぞ!」
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同時刻、1号車。
「2号車がアンと接敵!交戦を開始したようです。」
「分かった!黒淵隊長と止境隊長に連絡を!」
「はい!」
「ミツキ君の方だったか…不安!」
「大丈夫だ。SST8もついてるし、すぐに援護も来る。アイツらならきっと無事だ。」
とは言いつつも特殊の2人は不安に駆られていた。どこか落ち着きのない様子で出動車に乗っていると、再び報告が入った。
「え!?彼ら異世界に入ったそうで世界鍵は目的ではないそうです!」
「何!?じゃあ目的は!」
「不明です!」
「そんな馬鹿な…じゃあ一体何を目的にしているんだ?」
皆が動揺していたそのとき、フロントガラス越しに衝撃的な光景が広がっていた。
「前の自動車が!」
橋の上の自動車が打ち上げられ、下の暗い海に落ちていく。
「千装隊長!俺たちは民間人の救出に当たります。」
「え、私!?…あ、そういうことか!」
「了解。私たちも行くぞ!」
追崎と計良は出動車から降り、事故現場の方へ駆け出した。
「アヤカ、オージャで俺たちを持ち上げてもらえるか?」
「ごめん、今日連れてきてる子たちだと片方しか!」
━俺が行こう。俺の方が触れられる範囲が広い。━
━( ̄▽ ̄)よし、ジュンビはいいね?━
━( ̄▽ ̄)トウキにシートベルトはありません。━
━( ̄▽ ̄)くれぐれもムリのナいように!━
オージャはチェイサーを持ち上げて、アクアブリッジの下へ降りる。海の中へと沈んでいく自動車にチェイサーは触れた。
しばらくするとチェイサーは声の届くところまで上がってきて、追崎に叫んだ。
━今だ!━
「『リワインド』!」
━『リワインド』!━
海に沈んでいた自動車は浮かび上がり、アクアブリッジの上へ戻ってきた。
「っし!成功だ!」
━なんとか大丈夫だったみたいだな。━
━( ̄▽ ̄)ふうー疲れたー。━
「お疲れ様。でも、まだ休んでられないよ。」
━分かってる。溺れる前にに早く救おう。━
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「魂装、装甲III!」
━「装着完了。」━
自動車が打ち上げられた事故現場に、千装隊長とSST8は到着した。そこにはうずくまっている少年が1人いた。
「あれは…子供でしょうか?」
「事故に巻き込まれて車から脱出したのかもしれない。保護しよう。」
2nd、4th、5th、6thが少年の方へと近づこうとしたとき、5thが3人を引き留めた。
「待て…もしかしたら。5th、エレクトロを念の為に出しておけ。」
「分かりました。出てこいエレクトロ。」
━ふむ、何か御用ですか?━
「警戒しておけ。」
━了解。━
5thから手回し発電機が頭部、コンセントの尾、電極の腕がついた魂が出てきた。
「千装隊長、俺たちが様子を伺ってきます。」
千装隊長は頷き、5thはうずくまっている少年に近づき、声をかけた。
「君、どうしたんだ?」
「ひ、ひいっ!い、い、いや僕は何も!」
「ここは高速道路の上で危ないんだ。両親は?」
「い、いな、いや、いま…ああ。」
「大丈夫か?」
「あああ、さっきから…質問…ばっかり!」
「エレクトロ!」
━いつでも参れますよ。━
「邪魔するな!」
ダイは立ち上がって小さな腕を振り上げたかと思うと、それは巨大な砂の腕となり5thとエレクトロを掴んだ。
「砂!?」
━申し訳ありません、砂には私の力は無力…。━
━「『砕』『縛』」━
千装隊長とライフブレイカーは右腕を錘に変え、砂の束縛を解いた。そして5thとエレクトロを持ち上げ、後ろへ避難させた。
━「大丈夫か?」━
「ありがとうございます、隊長。」
━ありがとうございます。申し訳ありませんが、私たちは今回直接戦闘には参加できなさそうです。━
━「気にするな。私たちがやる。やはり崩壊連星は2人いたか!」━
千装隊長はダイと対峙した。
「こ、こっち来る…じゃだめなんだった!か、かかって来い!」
千装隊長は少し考えてから口を開いた。
━「僕。すごい力を持っているじゃないか。」━
「えっ?あ、ありがとう!」
警戒心全開だったダイの表情は少し柔らかくなった。
━「私のは『装甲』の魂、ライフブレイカーっていうんだ。君と君の魂はなんていう名前なんだ?」━
「僕?僕はダイ!アン姉ちゃんの弟!」
"━「〈対象の名前はダイ。アンの弟らしい。〉」━"
千装隊長は他の隊員たちに小声で伝達した。
「魂の名前は分からないんだけど『砂』の魂の力だよ!」
"━「〈『砂』の魂の力を有している模様。〉"へえ、『砂』か。とても強そうでかっこいいな!どんなことができるんだ?」━
「えっとね、さっきみたいに手とか足を大きくしたり、砂の質量で生き埋めにしたり砂を長い手にして相手を掴んだり、蟻地獄みたいに足を…って!?」
━「ここまでか。やっぱり中身は子供だったな。色々話してくれてどうも。」━
「…散々僕をコケにして…アン姉ちゃんのためにも…!」
怒りで満ちたダイは太い砂の腕や足を小さな体から出していく。それは全身に纏われていき、肉体は青年程に成長し、声色もおどおどしていた少年とは大きく異なる。
「絶対に殺してやる!」
━「成長した?2nd、4th!2人は特殊と共に一般人の避難に当たってくれ。それと連絡も頼む!黒淵隊長たちの増援の判断は彼らに委ねてくれ!5thと6thは援護を!」━
"「こちら2号車!もう1人の崩壊連星、ダイとの交戦開始!黒淵隊長、止境隊長!増援の判断は委ねます!」"
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「崩壊連星は2人いたか。戦力的には千装隊長がいない1号車に行くべきだと僕は思いますが、黒淵隊長、どうしますか?」
「…これは少し待った方が良いかもしれないね。」
「どうしてですか?」
「一つ目はまだお互いに底力が未知数。元々データも少ない上にダイという子供は未確認だ。その上実はそのダイという子の方がアンより強かった、なんてことがあったらピンチに陥る可能性がある。
二つ目は…あの子たちの成長に繋がるからかな。」
「…本当に大丈夫なんですよね?」
「大丈夫。見捨てるつもりもないし、絶対に死なせないと誓うよ。でも、僕は思ってる。あの子たちは死ぬどころか、生まれ変わるんじゃないかなと。」




