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第22話 仲間を増やして街に戻る



 俺の契約魔獣となったドラゴンのラティカ・ゾネリカ。


 人間の姿へと変身したラティカは美しい女性で、そして裸だった。



「なんで裸なんだ」


「なぜと聞かれても。そもそも、先ほどまでの我が服を着ていたように見えるか?」


「まあそれはそうだが……」


 

 言われてみれば、先ほどまでのラティカは服を着ていなかった。 

 元の姿の時に服を着ていないのに、変身したら服を着ているはずもない。

 そう考えれば、服を着ていないことは理解できるな。



 ラティカは裸の姿のまま、手を頭の後ろへと回して腋や胸を強調している。


「裸なのはわかったが、なぜポーズをとる」


「いやなに。人型になった我の、せっかくのお披露目なのでな。どうだ主殿。我の美しさに見惚れたか?」


「確かに見惚れるほど美しいけどさ、目に毒だから服を着てくれない?」


「ふむ。主殿はペットに服を着せるタイプか?」


「お前いま人間の姿だろ! 普通の人間は服を着るんだよ!」


「しかしな、人間でも服を着ない者はおるだろう?」


「いないよ。どこにいるんだそんな奴」


「海では大体そうだったぞ」


「それは海だけの話だ」


 特別な場所を基準に考えるな。

 あと海だとしても、全裸はなかなかないと思うぞ。


「他の公共の場では服を着るもんだよ。その姿で街中に入れると思うなよ?」


「わかったわかった。そこまで言うならば服を着よう。我は主殿とともにいたいしな。だが残念なことに、我はドラゴンであるがゆえ服を持っていない」


「あー。まあ、そりゃそうか」


 俺はアイテムボックスからアイナの服を取り出す。


「ごめんアイナ。アイナの服をラティカに着せてもいいか? 街までの間だからさ」


「…………」


「アイナ?」


 返事がない。

 アイナの方をみると、彼女はラティカの姿をみて呆けていた。


 放心しているな……。


 無理もない。

 ドラゴンに出会ったかと思えば、人間に変身したのだから。


 普通の人間が処理できる範囲を軽く超えているだろう。


 俺?

 俺は異世界に来た頃から、もうなんでもありだと思ってるから。



「おい。大丈夫かアイナ?」


「――! は、はい。なんでしょうかご主人様」


「ラティカに君の服を着せたいんだけどいいか?」


 『アイテムボックス』から取り出した服を彼女に見せる。

 アイナには『アイテムボックス』のことは説明せず、物を収納できる魔法が使えることを伝えている。


「え、ええ。ご主人様がご所望ならば、私は異論ありません」

 

「ありがとう。ラティカ。これを着てくれ」


「感謝するぞ、主殿。そしてアイナ殿」


 ラティカが近くに寄ってくる。


 歩くたびに、その巨大な胸がたゆんたゆんと揺れていた。


 その姿は10代の男性にとっては魅力的すぎる。

 思わず目を奪われてしまった俺を誰が責められようか。


 そしてその様子はもちろん当の本人にもバレている。


「なんだ。やはり我の体を見たいのではないか。ほら、もっと近くで見るといい。主殿なら、穴があくまで見て構わんぞ」


「…………」



 美女の裸だ。

 それも巨乳の裸だ。

 なんならもう爆乳の域にまで達している。


 このままずっと見ていたいという気持ちもなくはないが、他に誰もいない洞窟で裸の状態という謎の状況のせいで違和感がある。


 そのおかげで、俺の理性はかろうじて欲望に打ち勝つことができた。


「さっさと服を着ろ、ラティカ」


 そう言って服を渡した。


「また見たくなったら声をかけるがよい。いつでも見せようぞ」


「後でな」


 ラティカの言葉に否定はせず、「後で」と頷くことが精いっぱいだった。 


「や、やっぱりすごい体……」


 アイナは着替えるラティカを見ながらそう呟いている。


「私だって胸大きいのに。それよりずっと大きくて、それに顔だってすごい美人で。ずるい……」


「おいアイナ。もしかしてさっきまで呆けてたのって、ラティカが人間に変身したことが衝撃だったんじゃなくって、ラティカの美貌が衝撃的だったってだけ?」


「はい」


 そうなんだ……。

 気持ちもわかるけどさ。


 めったにお目にかかれない美貌だからな。

 グラビアアイドルよりもスタイルがよく、女優よりも美人だし。


「アイナもすごい美人だし、スタイルいいだろ。自信を持て」


「ですがご主人様。このままだとラティカさんばかりと相手をするようになり、私はお役御免ということも……」


 目を伏せて暗い顔になるアイナ。


「わ、私はいらなくなって、捨てられてしまうかも……」


 

 彼女は不安なのだろう。

 俺から捨てられてしまうことが。


 昨日も一昨日も、彼女は俺の唯一の奴隷で二人きりであった。

 それが彼女に安心感を与えていたのだろう。


 しかし今からは奴隷(正確には契約した魔獣)が増える。

 もう彼女は唯一の奴隷ではないし、二人きりでもない。


 二人の関係に他者が入り込むことによって、今の関係性のバランスが崩れてしまう。


 それが彼女には不安なのだ。

 具体的には、俺がラティカばかり相手するようになってしまい、自分には見向きもしなくなることが不安なのだ。


「安心してくれ。ラティカが新しく奴隷になっても、俺はアイナのことは絶対に捨てないし売りもしない。しばらくは一緒にいるさ」


「しばらく……?」


 不安げな目をしてアイナは俺の方を見る。

 言葉選びをミスったかな。


「しばらくじゃない。ずっと一緒にいるさ」


 俺がそういうと、アイナの目に明るさが戻り、パアアアと花が咲くような笑顔になった。


「ずっと一緒ですからね! ご主人様!」


 喜びながらアイナがギュッと俺の腕に抱き着く。


「なんだなんだ。我を放って二人で仲良くしおって。妬けるの」


 服を着たラティカがこちらにやってくる。


「ラティカさん。これからよろしくお願いします」


「よろしく頼むぞ、アイナ殿。そう言えば、二人の関係をまだ聞いていなかったが。ご主人様という言葉から察するに、アイナ殿は主殿の召使か?」


「この子は奴隷だよ。一昨日俺が買った」


「なんと。我と同じ立場であったか。つまりは、アイナ殿は我の先輩ということだな」


「まあ、そういうことになるな」


 奴隷の先輩。

 なかなか聞かない言葉だな。



「しかし、サイズが足りないな……」



 ラティカの姿を見てそんな感想が飛び出る。


 アイナの服を貸したが、明らかにサイズがあっていなかった。


 まず丈が足りない。

 俺の身長170cmを基準に考えると、アイナの身長は160cmくらいで、ラティカは180cmくらい。

 身長が20cmも違うのだから、そら丈は足りなくなる。


 しかし一番窮屈そうなのは胸の部分だ。

 胸の大きいアイナに合わせたものを買ったつもりだったが、ラティカは彼女よりも更に胸が大きいため、胸の部分が明らかに余裕がない。


 胸のあたりがパッツパツとなっている。 

 ボタンがはじけ飛びそうだ。


 お腹の部分は、不思議と問題なく収まっているのに。


「服これ大丈夫か? 割とまずそうだが」


「うむ。窮屈なとこはいくつかあるが、一番は胸が……。これは生地も伸びておるだろうな」


「ご主人様から買ってもらった服が……。まだ着てないのに……」


「その……すまぬ」


「い、いえ。しょうがないですよ。胸が小さい私が悪いんです……」


「アイナは小さくないって。ラティカが大きすぎるんだ」


「すまぬな。我も好きでここまで大きいわけではないのだ」


「ラティカさ、体の大きさを変えることってできない? 一時的にでも少しだけ小さくするとか」


「主殿は小さい方が好きなのか?」


「もちろん大きい方が好きだけど。別に俺の好みの問題じゃなくて、服の問題だよ」


 大きい方がすき、と言った時に横のアイナが目を輝かせたのは今はスルーする。

 ラティカが自分の胸に触れてニヤリとしたこともスルーする。


「それで、変えられるのか?」


「無理だな。この姿は我が自由に設定しているわけではない。我が人型になるときに、最も我にふさわしい姿へと自動的に変わるのだ。自らの意思で肉体を変化させることはできぬ。唯一変えられるとしたら、この髪の長さくらいだな」


 ラティカは自分の長い髪に触れる。


「ということは、街まではこれで我慢してもらうしかないか」


「我としては別に服を着ずとも問題ないぞ?」


「お前以外の奴には問題あるんだよ」


 全裸で王都を歩いてみろ。

 一発で衛兵に捕まるわ。


「王都に着いたら新しい服を買うからな」


「おおう。さっそく主殿から我のための贈り物を約束されるとはな。我は幸せ者よ」


「わ、わたしはもう服を買ってもらってますからね……! この装備だって買ってもらったんです!」


「こらこらアイナ。ラティカに対抗するな」


 大人げない先輩だな、まったく。



「じゃあそろそろ王都に帰ろうか」


 一息つき、洞窟の出口に向かう。



 やれやれ。

 アイナの腕試しをするだけのクエストだったはずが、とんだことになってしまった。


 だが、仲間が増えたのは嫌なことではない。

 騒がしいのは嫌いじゃなかった。



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