第23話 街で
俺達3人(正確には2人と1匹)は、洞窟を出て王都に着いた。
俺とアイナはギルドカードを持っているが、ラティカは持っていない。
身分証のないラティカは門番に見とがめられるんじゃないかと思って警戒したが、なにごともなくあっさりと通ることができた。
「若いのに大変な目にあったね。ゆっくり休んでくれ」
と、ラティカは言われていた。
絶対誤解されてるだろうな……。
きちんと装備を整えている俺とアイナとは違い、ラティカは冒険に似合わない私服だ。
しかも着ている服は明らかにサイズがあってないし、何かしらの事情持ちだと思われたのだろう。
いや、事情があるってのは間違いではないんだけどね。
実は数百年封印されていたドラゴンだという事情が。
それを言っても信じられないだろうし、信じられたらそれはそれで大きな騒ぎになるから、誤解されたままでいいけど。
何はともあれ、問題なく門を通れたのだからヨシとする。
「ほおおおおお! これはすごい! すごいぞ! 人間の街というのは、ここまで大きくなったのか!」
王都に着くや否や、ラティカはそう感嘆の声を上げていた。
彼女は目をキラキラさせて王都の街を眺めている。
完全にお上りさんだな、この光景。
「見てくれ主殿! あんなに大きな建物が! あれはなんだ。初めて見たぞ!」
「あれは冒険者ギルドだよ」
「ではあれは!? こっちは!? 遠くにあるもっと大きいのは!?」
「それは商店で、そっちは教会で、あの大きいのは王宮で……ってちょっと落ち着け」
「これが落ち着いておられるか。何を隠そう、我は人間の街が好きなのだ!」
「ああ、うん。まあその反応を見ればわかるさ」
王都についてからずっとはしゃぎっぱなしである。
これで街なんて興味ないと言われた方が驚きだ。
「すごい。すごい……! 数百年の間にこんなに様変わりするのか。人間とはすごいの」
「ラティカが封印される前の王都は全然ちがったの?」
「そもここに王都などというものはなかった。都はもっと別のとこにあったぞ」
「じゃあ封印されていた間に遷都したってことか」
「王都となる前にも街はあったが、この光景とはもっとちがう、さびれた小さい街だった。それも嫌いではなかったが、やはり街というものは大きくて、高くて、活気がある方が良いの!」
「ふうん。大きい街ね……」
俺は改めて王都を見渡す。
確かに大きいが、現代日本の基準で考えればこれでも小さい方だ。
東京などとは比べるべくもない。
ま、あの摩天楼と比較されたら異世界のどの街でもそうなのだろうが。
なんなら地球にある国の都市の中でもトップテンに入るくらいには大きい街だからな。
……一度、ラティカを東京に連れて行ってみたいな。
王都を見た時よりもさらにすごい反応を見せてくれるだろう。
『一時帰宅』はスキルを持っている当人のみしか帰れないが、なんとかして他人を連れて行くことはできないだろうか。
そんなことを考えながら、俺達は服屋へと向かった。
女性としては格段に背の高いラティカに合うサイズの服を見つけるには時間がかかった。
何軒か服屋を巡り、ようやく見つけることができた。
「どうだ、主殿? 似合ってるか?」
着ているのは黒いワンピース。
180cmのラティカが着れるくらい丈は長い。
「とても似合ってる。まるでラティカのために作られた服みたいだ」
「ふふ、ふふふ! そうか、そうか。そんなにか。まあ、着ている者が良いからな」
「そうだね。何を着ても似合うだろうけど、でも、その服は特に似合ってると思うよ。ラティカはすっごい美人だからね。俺が見た中でも一番の美人だ。うん。世界で一番美しいよ」
「~~~~~~!」
ラティカは俺に褒められて声もあげられないくらいニコニコと笑顔になって喜んでいる。
俺が言ったことはお世辞でも大袈裟でもない。
ラティカの美しさはずば抜けている。
地球にいた頃、ドラマや映画で美人を目にする機会はあった。
他にもモデルとかアイドルとか、テレビやネットを通してだが、いろんな人を目にすることはあった。
それら全員を含めたとしても、ラティカは群を抜いた美人だった。
「ふふ。主殿からたくさん褒められてしまった。ふふふふ。いいな、服というものは。うん」
どうやらラティカも気に入ってくれたようだ。
「しかし主殿。この服は大変良いと思うが、戦うには動きにくいぞ。我は冒険者になり主殿の下で戦うのだろう?」
彼女の言う通り、ラティカにはアイナと同じように冒険者になって戦ってもらう。
「我はとても強いドラゴンであるから、服に拘束されて動きが鈍ることなどないが、戦闘時に服を気にせず動いたら破れてしまうぞ」
「クエストに行くときのための服は買うよ。さすがに女性用でラティカに合うサイズの戦闘服はないから、男性用のものを着てもらうけど」
「承知した。だが、ならば普段の服も別に男物でもよいのではないか?」
「いや、ラティカも女の子なんだから、女性用の服の方がいいでしょ。それに、俺もラティカの可愛い姿を見たかったってのもある」
「う~~~! 主殿!」
俺の言葉を聞いたラティカは、ぎゅっと抱き着いてきた。
「そうかそうか! 我の可愛い姿を見たかったのか! まったくもう! 主殿はもう! 嬉しいことを言ってくれる!」
「嬉しいのはわかったから。人の目もあるからちょっと離れてくれ」
抱き着かれて密着しているから、大きくて柔らかいものが当たっている。
お腹の細いラティカの体で大きいものは一つ(正確には二つ?)しかない。
ラティカみたいな美人に、こんなの当てられたらもうさすがにいろいろ我慢できなくなる。
「ず、ずるいですよラティカさん。私だって、外でご主人様に抱き着いたことなんてないんです! 離れてください!」
アイナも助けてくれて、ラティカはようやく離れた。
引きはがすときの理由がちょっとおかしくないか?
「すまん、主殿。感極まってしまった」
「いやいいよ。ラティカが嬉しかったのなら、俺も嬉しいし」
その後はクエストに行くときのための服を買い、店を出た。
ちなみにラティカは装備は要らないと言っていた。
「あんなものは体の弱い人間の着るもの。素で強い我のようなドラゴンには不要よ」
とのことである。
剣聖としての見立てでわかるが、ラティカは見たところ人間の姿でもかなり強い。
恐らくそんじょそこらの攻撃を食らってもけろっとしていることだろう。
あの洞窟にあった結界くらい強力な術を使われれば話は別だが……あれは恐らくSランクやAランク相当のスキルによるものだ。
そういう敵と出会うことはなかなかないから、心配する必要はない。
「服も買ったし、次はギルドの方へ向かうか」
「かしこまりました。ご主人様!」
「承知した、主殿」




