道
*
「……はぁ……」
「? 姫?どうされましたか?」
給仕の方がカナエ姫に訊ねる。
「……ねぇ、ヨシノさん……。やっぱり貴女も開戦賛同派なの?」
「……まさか。私も戦争なんてしたくはないですよ。ただ……」
「ただ?」
ヨシノは暫し逡巡した後、
「自衛のための戦力、というのは必要かと思われますよ? 私たちは死ぬ覚悟というものは出来ています。……しかし姫に代わりというものはいません」
「それじゃあ……まるで私を守るために命を投げ打つって事じゃない……」
「まるで、ではなくその通りにございます。リョウ殿達が毎日毎日あんなに全力で訓練に励んでいるのは、他ならぬあなた自身の為でもあるのですよ?」
「……私なんかの為に、皆が命を捨てるようなことする必要ないよ……。国を失った姫なんて、価値はないもの……」
「……まぁた思考がネガティブになっておりますよ? 姫?」
突然聞こえてきた声にカナエとヨシノは声の方向へ振り向く。
「「リョウ(殿)……」」
そこには、カナエの側近リョウ・アドマイトがいた。
「まったく……いつも申し上げておりますが……姫は些か弱気でございます。我々が訓練に励んでいるのは、もちろん国を取り戻すため、そして、貴女様を守る為でございます。それで、いざ戦闘になった際に、貴女様が毅然とした態度で臨まなくてどうしましょう?」
「分かってるわよ……。でも、開戦しなくても道はあるでしょう? ほら……例えば……例えば……」
「浮かばないんですね? 」
「うぅ……」
図星をつかれて、カナエが固まる。
「……うぅーー!もういい! 訓練でも何でも勝手にしなさい! でもいい!? 死ぬことだけはぜーったいに許さないんだから!」
もう寝る!! と言ってカナエが奥の部屋へと行く。リョウはそれを見ながら、
「……若いねぇ〜」
「……リョウ殿。貴方も18でしょう?」
「……いや、あの御方は闘うだけの俺らとは違いますよ……。自分の考えというものをしっかりと持っておられる。……だから、迷いというのは多いんだと思いますよ」
そう言って、リョウも訓練に戻る。その頃、自室に戻ったカナエは
「……剣……か……」
自分の部屋に置いてある剣を見て溜息を一つつく。
(……私は……そんなに弱気なのかな? リョウ……貴方は、どうして戦うことが出来るの? 私には、無理だよ……)
カナエの迷いは、そして弱気は、更に加速していく。




