1位への執着
学校へ登校して彼のクラスが偶然目に入った。教室を覗くとそこには彼がいた。
「あ……」
「……くそ!違う!」
紫之宮は頭を掻きむしる。
「おはよう。」
「!」
紫之宮は恋を無視して漫画を描こうとする。
「わぁ、うまい!」
「ダメだ!ダメ!」
「へ?」
紫之宮は描いていた漫画をぐちゃぐちゃに丸める。
「ああ!」
「くそ……」
「せっかく描いたのに……」
「全然ダメなんだよ!」
「そんなことないと思っ……」
「ある!君には分からない!プロの僕が2位なんて許されない!」
「え?!プロ?!」
「……」
「本当に?」
「ああ、僕は漫画家の紫之宮とおるなんだよ。」
「え?!紫之宮とおるってあのファンタジー漫画の?!」
「……そう。」
「すごい!プロに会えるなんて!」
「凄くも何ともない!2位なんだからね!」
「……紫之宮君。」
「1位じゃなきゃダメなのに……」
「そんな事ない!」
「?!」
「1位じゃなくてもあなたがプロだと言う事実は変わらないよ!」
「!」
「紫之宮君!あなたの漫画はすごいよ!私なんかの言葉じゃあなたを励ませないかもしれないけど!あなたの漫画は人を惹きつける魅力がある!」
「!」
「だからっ……」
「君なんかに何がわかる!」
「……わからない!けど!1位じゃなくてもあなたの作品が素晴らしいことに変わりはないよ!」
「!」
「紫之宮君……」
紫之宮はバンッと音を立てて机を叩いた。
「きゃ?!」
それに驚いた恋は転ぶ。
「!」
「いたた……」
恋の鞄から漫画が散らばった。
「これは……君が?」
「あ!」
落ちた漫画を紫之宮が拾う。
「……」
「み、見ないで!ダメ!」
「……なんだろう。君の漫画は中途半端で絵もそんなに上手くない。でも……」
「?」
「でも、漫画が好きだと言う気持ちが伝わってくる。」
「!」
「……紫之宮君も、漫画が好きでしょ?」
「……好きだったよ。でも、……今は好きじゃない。描いているうちに満足してしまったり、飽きてしまった。」
「……紫之宮君。」
「君の漫画が、羨ましいよ。こんな楽しそうに僕には描けない。」
「紫之宮君。描けるよ!きっと!また楽しく描ける!」
「どうしてそんな事がいえるんだ!」
「だって、漫画を描くことって楽しいもん!」
「!」
「楽しいことは楽しいってまたきっと思えるはずだよ!」
「……そう、かな?」
「うん!」
紫之宮はうつむいた。
「………ありがとう。恋野さん。」
「ほえ?……」
「また描き直してみるよ。」
「う、うん!」
それから数週間がたった頃、紫之宮が恋の教室を訪れた。
「恋野さん。」
「!紫之宮君!」
「見てくれ。」
「へ?!」
紫之宮の手には1話分の漫画があった。それを恋に渡す。恋はそれを読んだ。
「どうかな?」
「す!すごい!絵のレベルが高いだけじゃなくてストーリーもすごい!」
「……君のおかげだよ。」
「へ?」
「君の言葉のおかげでまた納得のいくものが描けたんだ。」
「そんな、私は何も……」
「ありがとう。」
そう言って紫之宮は漫画を持って教室に帰っていった。
「恋!」
「心ちゃん!」
「なんか分からないけど良かったじゃん?」
「うん!」




