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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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お迎え





 雪原に、重い蹄の音が響いた。

 次々と現れた馬がルーンたちの周囲を囲む。


 白銀の鎧を身にまとった騎士たちが整然と陣形を作り、彼らを取り囲んだ。

 荒い息を吐き、馬たちのいななきが空気を震わせる。


 その中から、一頭の黒い馬が進み出た。

 背に乗っているのは、銀色の髪を持つ若い男。鋭い視線が一行を見渡し、そして、ある人物のもとで止まる。


「ようやく見つけた!」


 男は目を見開き、声をあげる。

 その言葉は真っ直ぐにフィルへ向けられていた。


「…………」


 シオンは剣に添えていた手をゆっくりと下ろす。

 騎士たちの動きを観察していたが、敵意や殺気は感じられない。

 少なくとも、今この場で戦うつもりはないようだった。


 ――そのとき


「フィル……!」


 黒馬の後方から、女性の声が響く。

 金色の髪を揺らしながら、一人の女性が慌てて馬から降りた。

 足元の雪を気にする様子もなく駆け出し、スカートが汚れるのも構わずにただ一直線にフィルのもとへ向かい、勢いよく抱きつく。


「……!」


 ジェイクとフィラーラが同時に目を見開いた。

 フィルもまた同じで、抱きついてきた女性を見下ろし、体を強張らせる。


「ああっ……本当に貴方なのね、フィル!」


 女性は涙を流しながら言う。


「ずっと逢いたかった……!」


 震える声だった。

 その様子を見ていたシオンのもとへ、もう一人の女性が歩み寄る。

 声に気付いて顔を向けると、そこにはデメテラがいた。


「驚かせてごめんなさい」

「こいつらは何だ?」


 ジェイクが腕を組んで尋ねる。

 デメテラは眉尻を下げ、銀色の髪の男の方へ視線を向けた。


「彼らは王都の騎士団よ」


 小さく息を吐く。


「……フィルが嫌がるかなって思ったんだけど、報告しておかないとって……」


 その言葉の途中で、黒馬に乗っていた男も馬から降りた。

 雪を踏みしめながら、シオンたちの方へ歩み寄る。


「よかった。ご無事で」


 安堵したようにそう言う。

 その声を聞いて、ようやくフィルは体を動かした。

 抱きついていた女性の肩に手を置き、ゆっくりと離す。


「デメテラから聞いて驚いたよ」


 男は苦笑する。


「まさか、兄さんの方から帰ってきてくれるなんて」


 フィルは男を見つめる。


「……オレを捕まえに来たのか?」


 低い声だった。

 男は一瞬きょとんとしたあと、両手をあげて慌てて首を振る。


「え?まさか!そんな事しないよ! ……僕たちは兄さんを迎えに来たんだ」


 そう言うと、男は一歩下がり、胸に手を当てて深く頭を下げた。


「僕たちは勘違いをしていた」


 静かな声で続ける。


「兄さんに着せた罪は取り上げる」


 そして、さらに深く頭を下げた。


「この通り、許してほしい!」


 その言葉に合わせるように、周囲の騎士たちも一斉に馬から降りた。

 鎧が雪の上で鈍く鳴る。

 彼らも同じように胸に手を当て、頭を下げた。


 その光景を見て、シオンたちは思わずフィルの方を振り向く。


「…………」


 フィルは黙っていた。

 眉をひそめ、目の前の男を見つめている。


「…………」


 その横顔を、ホワイトはじっと見つめていた。


「お前は何者だ?」


 シオンは口を開いて、男に問う。

 その問いに男は顔を上げて、はっとした。


「すまない。申し遅れた」


 姿勢を正し、名を名乗る。


「僕の名はサクヤ・フォンベルク・アーバン。王都アーバンの城に仕える騎士団の団長であり」


 雪原にその名が響く。

 そこで一度言葉を切り、口元を緩ませてから静かに続けた。


「そして――アーバン王家に生まれた、第二王子だ」


 周囲の空気がわずかに張り詰める。

 雪の上で、誰も言葉を発さない。


 フィルはゆっくりと目を細め、男…サクヤを見つめていた。



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