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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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わたしのるーん





 雪原に、静かな光が広がった。


 ルーンとホワイトの足元から、淡く輝く魔法陣がゆっくりと広がっていく。

 幾何学模様が雪の上に浮かび上がり、静かに脈打つように光を放っていた。


「…………」


 ルーンは目を閉じ、ホワイトの胸へ触れる。


「白の精霊よ――」


 静かな声で呪文を紡ぐ。

 その瞬間、魔法陣が強く輝いた。

 溢れ出した光は無数の粒子となり、二人の周囲を包み込む。まるで雪の代わりに光が降り始めたかのようだ。


「………」


 ホワイトも静かに目を閉じる。

 感じるのは、ルーンの魔力。

 柔らかく、温かな流れが、ゆっくりと体の奥へと流れ込んでくる。それはまるで凍りついていたものを溶かしていくようだった。


 ホワイトの体が強く光り輝く。

 白い光がその輪郭を飲み込み、姿が崩れ、形を変えていった。

 やがて光が静まると、そこに残っていたのは――大きな白い宝石。


「…………」


 ルーンは閉じていた目を開く。


 目の前に浮かぶ、純白の宝石。

 それが、ホワイトの本来の姿だった。


「きゅう」


 小さな声が響く。

 ブルーテイルがルーンの腕を伝い、ぴょんと宝石へ跳び移った。

 宝石の表面を、一滴の雫が静かに伝う。


 ブルーテイルはそれを口に含んだ。

 その瞬間、小さな体が七色に輝く。


「きゅうっ!」


 虹色の光が体の周囲に弾ける。

 元気な声で鳴き、ブルーテイルは嬉しそうにその場で飛び跳ねた。

 その様子を見届けるように、白い宝石が再び光を放つ。


 光がほどけ、形を成す。

 やがてそこには、先ほどと同じ姿のホワイトが立った。白と黒の体をゆっくり揺らしながら、ルーンを見つめる。


「ありがとう、私のルーン」


 そして、口を開いた。

 先ほどまでの途切れ途切れの声ではなく、はっきりとした流暢な言葉。


 それを聞いてルーンは、ほっとしたように口元を緩めた。


「よかった……」


 そう呟いた次の瞬間、体がふらりと揺れる。

 倒れそうになった体を、ホワイトがすぐに抱き止めた。


「きゅう」


 ブルーテイルが心配そうに鳴く。

 ルーンの顔は青白かった。


「だい、じょうぶ……」


 掠れた声でそう言うが、その体は明らかに力を失っている。

 ホワイトはルーンを抱き締めたまま、ゆっくりと口を開いた。


「私のルーン。……だいぶ体力が落ちている」


 静かな声だった。


「それは、私の仲間たちを救ってきた証」


 そう言いながら、ホワイトはシオンたちの方へ顔を向ける。


「彼らは、私のルーンの仲間たち。私のルーン、助ける。私と彼らの役目」


 呟きながら、ルーンを抱く腕に少しだけ力を込める。

 その様子を見て、フィルは眉をひそめた。


「私のルーン。私は、私のルーンを助ける」


 ホワイトはルーンを見つめる。


「私の魔力を、君に与える」

「………魔力を?」


 ルーンは顔色を青くしたまま、ゆっくりとホワイトを見上げた。

 ホワイトはそっと手を伸ばし、ルーンの頬に触れる。


「私のルーン。私の魔力、私のルーンに与える」


 静かに、言葉を続ける。


「そうしたら、私のルーンは、私の妻となる」

「え……?」

「魔力を与える。繋がる。妻となる証」


 そう言うと、ホワイトはゆっくりと顔を近づけた。

 唇が、ルーンの額に触れる。


「………」


 ルーンは抵抗することもなく、静かに目を閉じた。


 その光景を見て、ジェイクとフィラーラは思わず目を見開く。

 フィルは表情を強張らせ、ただ黙ってそれを見つめていた。右手に刻まれた刻印の痛みは、すでに消えている。


 やがてホワイトは唇を離す。

 ルーンを見ると、先ほどまで青白かった顔色は血の気を取り戻していた。


「きゅう!」


 ブルーテイルが嬉しそうに鳴く。


「私のルーン。私の魔力与えた」


 ホワイトは微笑む。


「これから私のルーンは、私の妻」


 静かな声で続ける。


「……私は、私の妻と共に、これからを過ごす」


 そう言って、ホワイトはルーンの肩口へ顔を埋めた。

 ルーンは目を伏せたまま、何も言わずにホワイトを見つめていた。


 その時。

 遠くから、かすかな音が響く。


 ――足音。


 シオンたちは顔を見合わせ、音のする方へ視線を向けた。

 離れた場所で、白い煙が上がっている。

 それはゆっくりとこちらへ近付いてきていて、しばらくその様子を見ていたフィルが、はっと目を見開く。


「あれって……」


 煙の向こうから現れたのは――馬だった。

 一頭ではない。何頭もの馬が雪を蹴り上げながら、一直線にこちらへ駆けてくる。


 そしてその馬には。

 白銀の鎧を身にまとった人物たちが乗っていた。



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