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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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カラー・ホワイト





 白煙の向こうから、掠れた声が聞こえた。


「るーん、……わたしの、わたしたちのるーん」


 言葉は途切れ途切れで、それでも執拗に紡がれ続ける。

 やがて煙がゆっくりと晴れていき、シオンはすぐさま周囲を見渡して仲間たちの姿を確認した。


 ジェイク。フィラーラ。フィル。

 そして――ルーン。

 全員、無事だ。


「おい!いきなりぶっ放してくるとか反則だろ!」


 ジェイクが苛立ちを隠さず叫ぶ。

 シオンは何も言わず、ただ静かに剣を構え、その切っ先を“それ”へと向けた。


「……わたし、じゃまをする……るーん、じゃまをする……わたしたち、じゃまをする……」


 それ…ホワイトはゆっくりと歩き出す。

 まるで壊れた人形か、あるいは屍のように、ぎこちない足取りで。


 一歩。また一歩。

 ただ、ルーンの方へ向かってくる。


 ルーンは胸を押さえ、思わずフィルの背後へ身を隠した。

 普段は滅多に怯えを見せない彼女の様子にフィルは眉をひそめ、そしてなるべく彼女の視界にホワイトが入らないよう、わずかに体を動かして立つ。


「わたしの……わたしたちのじゃま……はいじょ、……はい、じょ」


 ホワイトの腕が、ゆっくりと持ち上がる。

 またあの光の球を放つつもりのようだ。


「っ、」


 シオンが地面を蹴る。

 雪を蹴り上げながら一気に距離を詰め、迷いなく剣を振り払った。


 刃がホワイトの体に深く食い込む。

 しかしホワイトは、避けることも防ぐこともなかった。

 そのままシオンの一撃を受ける。


 腹部が裂け、大量の血が噴き出し、赤い液体が雪を染め、地面へ広がった。


「………るーん、るーん」


 ホワイトの体が大きく揺れる。

 しかし、表情は変わらない。

 苦しむ様子もない。

 まるで何も感じていないかのように、ただ立っている。


 シオンは眉をひそめ、すぐに距離を取った。


「今度は俺の番だぜ、シオン!」


 ジェイクが叫びながら駆け出す。

 振りかぶった拳が、ホワイトの顔面を思い切り打ち抜いた。

 衝撃で体が吹き飛び、数メートル先へ転がる。


 どさり、と音を立てて倒れ――動かなくなった。


「きゅう……」


 ブルーテイルが小さく鳴く。

 その体は未だ震えていた。


「…………」


 ルーンはフィルの後ろからそっと顔を覗かせ、倒れたホワイトを見つめる。


 その瞬間、ぴくり、と。

 ホワイトの体が動いた。

 くねるように体を揺らしながら、ゆっくりと――立ち上がる。


「きもちわるい……」


 フィラーラがぽつりと呟いた。


「るーん、……るーん……」


 立ち上がったホワイトは、再びルーンの名を呼び始める。


 それからもシオンとジェイクは攻撃を続けた。

 剣が斬り裂き、拳が叩きつける。

 けれど何度倒しても、ホワイトは立ち上がってきた。


「くそっ、こいつ不死身かよ!」


 ジェイクが舌打ちする。


「るーん、るーん……。わたしたちのるーん。たす……て……」


 ホワイトが、掠れた声で呟く。

 その言葉に、ルーンははっとした。

 胸に添えていた手を、ぎゅっと握りしめる。


 ――助けて。


 そう言った気がした。


「そうだ。……あの子、今までの子のように苦しんでるんだ」

「きゅう…」


 ルーンは恐る恐る、一歩前に踏み出す。

 近付いていこうとした時、その腕を咄嗟にフィルは掴んだ。


「近付いちゃ駄目だ」


 低い声で、はっきりと言う。

 そして小さく首を振った。

 ルーンは振り返り、フィルを見上げる。


 それから、ふっと口元を緩めた。


「大丈夫。心配ないわ」


 そう言って、フィルの手をそっと外す。


「ルーン――!」


 名を呼ぶ声を背に、ルーンは歩き出した。

 雪を踏みしめながら、ゆっくりとホワイトへ近づいていく。


 ホワイトは、ただルーンを見つめていた。


「わたしの……るーん……わたし、の」


 震える手が伸び、ルーンの頬にそっと触れた。


「大丈夫。助けてあげるからね」


 冷たい指。

 ルーンはその手に触れ、その言葉と同時に淡く光る魔法陣を静かに展開させた。



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