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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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ホワイト捜索





 雪山の空気は、相変わらず刺すように冷たかった。

 ルーンたちは、白く続く雪道を進む。


 先頭を歩くのはルーン。

 両手には、例のダウジングロッド。

 折れ曲がった針金の先端を前方へ向けながら、彼女は周囲を注意深く見渡していた。


 だが――

 未だにロッドは、ぴくりとも動かない。


「………」


 ルーンは眉をひそめ、小さく息を吐いた。

 その後ろを歩いていたフィルは、少し歩調を早めて彼女の隣へ並ぶ。


「……ル、ルーン」


 少しだけ、歯切れの悪い声だった。


「なに」


 返事をすると、彼は言葉を選ぶように、一拍置く。


「あ…えっと、…治ったっていってもさ、まだ毒は完全には消えきったわけじゃないから……その」


 フィルは視線を逸らしながら続ける。


「無理は…するなよ」

「………」


 ルーンは前を向いたまま、それを聞いていた。

 顔を向けることはない。

 しかし、ただ――小さく静かに頷く。

 それ以上の言葉はなく、二人の間に、どこかぎこちない空気が流れる。


 その様子を、少し後ろからジェイクが眺めていた。

 腕を組み、眉を上げる。


「なぁ」


 隣のシオンへ顔を向けて、声を掛けた。


「あいつら、何かおかしくね?」

「……そうか?」


 シオンは、前を向いたまま答える。

 まるで興味がないと言わんばかりの口調。


「いや絶対――」

「ルーン、今、成長ちゅう」


 ジェイクが口をへの字に曲げて言うと、すぐ横から声が挟まった。


 フィラーラだ。

 彼女は口元を緩め、どこか楽しそうに言う。

 含みのある言い方。

 ジェイクは眉をひそめて、彼女を見た。


「お前、何か知ってんのか?」


 しかし、聞いてもフィラーラはクスクスと笑うばかりで答えてはくれなかった。



+



 雪を踏む音だけが続く。

 それからしばらく歩き、何時間か経った――その時。


「きゅ?」


 ブルーテイルが、小さく鳴いた。

 それと同時にルーンの手の中のロッドが、かすかに震える。


「!」


 彼女はぴたりと足を止め、周囲を見渡した。


 そして――見つけた。

 少し離れた場所。

 真っ直ぐ視線を向けた先に、ひとつの影。


 雪の中に、ぽつんと立っている。

 ルーンはゆっくりと歩き出し、シオンたちも後に続いた。

 距離が縮まるにつれ、その姿がはっきりしてくる。


「あれは……」


 それは――人間だった。

 白と黒が混じる体。

 長い金色の髪が、雪風に揺れている。

 服は何も着ていない。

 生まれたままの姿。


 そして――

 額には、白く輝く宝石が埋め込まれている。


 男のようにも見える。

 女のようにも見える。

 どちらともつかない、不思議な姿。


 ルーンたちは思わず顔を見合わせた。

 しかし足は止めず、ゆっくりと近づく。


 彼女たちの姿を、それが視界に捉えた――その時。


「…………る、……ん」


 掠れた声が響いた。

 ブルーテイルが、ルーンの肩の上でびくりと震える。


 それの視線が、真っ直ぐルーンへ向けられた。


「……るーん」


 再び、声。

 男の声と女の声が混じった声。

 ルーンの胸が、どくりと鳴る。


 手の中のダウジングロッドが、激しく震え始めた。

 間違いない。

 目の前にいるあれが――カラー・ホワイト。


 だけど。

 それは、今まで出会ってきたカラーとは、あまりにも様子が違った。


「……るーん」


 もう一度。

 はっきりと。

 それは――

 ルーンの名前を呼んだ。


「っ、」


 胸の奥が強く脈打つ。

 フィルがルーンの前へ出た。

 盾を構え、庇うように立つ。


「………るーん、……わたしの、…わたしたちの…るーん」


 ホワイトが、ゆっくりと手を伸ばす。

 掌へ光が集まり始めた。

 淡い輝きは瞬く間に膨れ上がり、それはやがて、大きな光球となる。


 その瞬間――

 フィルの右手が震えた。


「!」


 刻まれた刻印が、熱を帯びる。


「……っ」


 銀色の輪を貫通するほどの鋭い痛み。

 フィルは眉をひそめ、咄嗟に右手を押さえた。


「わたしの、るーん……」


 声が揺れる。


「わたし、の、……ののののの」


 言葉が壊れる。

 光球が、弾かれるように放たれた。

 一直線に、勢いよく迫る。


「伏せろ!」


 シオンが叫ぶ。

 同時に剣を抜き放つ。


 一閃。


 鋭い斬撃が光球へ叩き込まれ、轟音が雪山を揺らした。


 爆発。

 白煙と爆煙が巻き上がり、周囲を一瞬で覆い尽くす。


 視界が真っ白に染まり、何も見えなくなった。



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