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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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北の大陸へ到着





「かめ?」


 ルーンは眉をひそめ、引き上げた生き物をじっと見つめた。


「かめって海の生き物でしょ?……海の生き物って溺れないと思うのだけど……」

「きゅう」


 ブルーテイルがルーンの肩から軽やかに飛び降り、甲羅の生き物へと近付いていく。

 小さな鼻先でつつきながら、興味深そうに首を傾げた。


「場所が悪かったんじゃね?」


 ジェイクは顎に手を添え、首をひねる。


「あっ!」


 そこで、声が聞こえた。

 振り向くと、そこに立っていたのはフィルとフィラーラ。


「その亀、どうしたの?」


 近付いてきたフィルに問われ、ルーンは簡潔に答える。


「釣り上げたの」

「釣り上げ?……、そっか」


 するとフィルは、わずかに眉尻を下げて肩を落とす。

 亀を見つめ、フィラーラは小さく「可愛い」と呟いた。


「貴方、このかめ知ってるの?」


 フィルの反応に、ルーンが問う。

 フィルは静かに頷いた。


「こいつは、キタノタートルっていうんだ。北の大陸の海域に生息してる海の生き物だよ」


 フィルは亀の顔を指差す。


「ほら、顔のところに二本の線があるだろ?これが特徴なんだ。…こいつがここにいるってことは、たぶん、もうすぐ大陸も見えてくると思う」


 言い終えて、彼は小さく息を吐いた。

 その微妙な表情の変化に、ジェイクが眉をひそめる。


「フィルは北の大陸出身なのよ」


 それに気付いたルーンが、ぽつりと補足した。

 ジェイクは「ああ」と短く声を漏らし、再び海の方へ視線を向ける。



 ――それから二時間ほど後。


 ルーンたちを乗せた船は、北の大陸の港町へと到着した。



+



 タラップを渡り、桟橋へ足を下ろす。

 その瞬間、冷たい風が容赦なく彼らの肌を刺した。


「さっぶ!」


 すかさずジェイクが肩を竦め、小さく震える。


「………」


 船を降りたルーンは、周囲をゆっくりと見渡した。

 真っ先に目に入ったのは、町の至るところに点在する白い塊。足元にもそれはある。


「きゅうっ」


 ブルーテイルが白い塊の上に飛び乗る。

 シャクシャク、と乾いた音が鳴り、動くたびに小さな足跡が刻まれた。


「雪が気に入ったみたいだね」


 その様子を見て、フィルが少しだけ口元を緩める。


 そして、小さくした船を回収し、ルーンたちは桟橋を離れた。


 しばらく歩いていると、ふいに目の前を白い何かが横切る。

 それはルーンたちの前でぴたりと止まり、きょろきょろと辺りを見回した。小さな鼻が、ひくひくと忙しなく動く。


「可愛い!」


 それに真っ先に反応したのはフィラーラだった。

 近付いていき、彼女はしゃがみ込んでそっとその生き物に触れる。

 指先に伝わるのは、ふさふさと柔らかな感触。

 ルーンたちも自然と近付き、その生き物をまじまじと観察した。


「こいつは、うさぎか?」


 ジェイクが首を傾げる。


「雪うさぎだよ」


 フィルが答えた。


 雪うさぎ――北の大陸に生息する生き物で、主に雪山で見られる存在だという。

 この町にいるのは、少し珍しいらしい。


「ん、」


 ふと、ルーンの視線がその首元に留まった。


 赤い首輪。

 そこに揺れる金色の装飾。

 装飾には文字が刻まれていた。


「ここに何か書いてあるわ」

「………す、のお?」


 フィラーラが、小さく刻まれた文字を読み取る。


「……スノー?」


 フィルが、その名前に反応してぽつりと呟いた。


 その時。


「スノー!」


 前方から、切羽詰まった声が響く。


 足音が近付き、顔を上げると、クリーム色の髪を揺らした一人の女性がこちらへ駆け寄ってきた。


「スノー、こんなところにいた!」


 女性は息を切らして、うさぎを抱き上げる。

 安堵の色がにじむ声。

 ルーンが一歩前に出て、声を掛けた。


「そのうさぎ、貴女の?」


 女性は顔を上げる。

 彼女は、ルーンたちの姿を見てきょとんとした。


「貴方たちは、…旅の人?」


 ルーンは静かに頷く。


「…!」


 ルーンたちの顔を順に見つめていった女性は、ひとりの人物の姿を目にすると表情がはっと変わった。

 彼女の視線の先にいたのは、フィル。


 フィルは女性の顔を見つめ――そして、気まずそうに視線を逸らした。


「フィル?……貴方、フィルよね?」


 女性が一歩、また一歩と近付く。

 ルーンたちは一斉にフィルの方を振り向いた。


「あー、…えと…ひさしぶり?」


 女性はフィルの姿を、まじまじと見つめる。

 口を開いて恐る恐る声を掛けると、やがて――彼女の眉尻が、ゆっくりと下がった。


「っ、」


 その瞳に涙が浮かんでいるのを見て、フィルは息を詰まらせた。



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