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ブルーテイル・ハピリス‐世界に嫌われているダークエルフが世界を救っては駄目ですか?‐  作者: aki.
4、わたしのくろいほうせき

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確認





「ジェイク。貴方、何を考えているの?」

「………返す言葉もない」


 朝の客間での騒動が終わってから数時間後。もうすぐ午後になろうかという頃、ルーンはジェイクと共に清龍の家を離れ、宿屋へ向かって歩いていた。

 先ほどまでの騒動についてジェイクから弁明と謝罪の言葉を聞いたルーンだったが、どうにも納得がいかず、彼女は隣を歩くジェイクを見やり、深く息を吐き出す。


「目を覚ましたら姿がないから、どこに行ったのかと思ったら……客間でお酒って。一体、いつから飲んでいたの?」

「…………」

「……ジェイク」

「………チビとお前が寝てから。それからずっと。フィルと桃華に邪魔される時まで」


 ジェイクの声は、話しているうちにだんだん小さくなっていく。

 ルーンはじとっとした目で彼を見つめ、そのまま再び呆れたように息をついた。


「……はぁ」

「んだよ。そんな目で見んな。酒は俺の人生なんだ。仕方ねぇだろ」


 ジェイクは居心地が悪そうに顔を背ける。


「……あの子は貴方に懐いているわ。あの子は貴方のことを慕っている。だから、今後は控えてちょうだい」

「………」


 ルーンは淡々と告げた。

 その言葉にジェイクは口を閉ざす。頭に浮かんだのは、ルーンにそっくりな幼い少女の姿。


「………わーったよ。これからは朝飲むのは辞める」


 ジェイクは眉をひそめ、苦虫を噛み潰したような顔で首に手を置いた。

 朝から酒を飲まない。

 それは、彼にとってなかなかの苦渋の決断だった。


「……………」


 ルーンは再度息を吐く。

 朝だけじゃなくて、もうずっと飲まないでほしいのだが、それを言ったら流石に可哀想だろう。


「……てか、俺たちが出て来て、あいつは大丈夫なのか?」


 その後、ジェイクがふと思い出したように尋ねる。


「問題ないわ。私たちがいない間は、押し入れに隠れているようにって言ってあるもの」

「……そりゃまた、窮屈な話だな」

「仕方ないでしょう。今はそれが一番安全なのだから」


 ルーンは歩みを進めながら答える。ジェイクはそれ以上何も言わなかった。

 そしてルーンは足を止める。宿屋へ到着し、二人は入口をくぐって中へ入った。落ち着いた雰囲気の漂う廊下には、ほのかに木の香りが漂う。


「いらっしゃいませ」


 ジェイクが周囲を見渡していると、廊下の奥から一人の女性が歩いてきた。

 紺色の着物を身にまとったその女性は、二人の姿を認めると柔らかな笑みを浮かべて丁寧に頭を下げる。


「お泊まりでしょうか?」

「いいえ。そうではないわ」


 ルーンは女性へ顔を向ける。


「この宿に、ダリアンという男性が泊まっていないかしら?」

「ダリアン様、ですか?……少々お待ちください」


 女性は少し考えるように首を傾げ、そう言うと廊下の奥へと踵を返して歩いていった。


「……」


 ルーンは遠ざかる背中を目で追い、ジェイクは腕を組む。

 数分後、女性が戻ってきた。


「お待たせいたしました。ダリアン様は二階のお部屋にご宿泊です。ご案内いたしましょうか?」

「……いいえ。結構よ。場所を教えてくれれば自分たちで行くわ。ありがとう」


 ルーンは首を横に振る。

 部屋の場所を教えてもらうと彼女は軽く礼を述べ、靴を脱いで階段を上った。ジェイクも黙ってついていく。

 二階にはいくつもの部屋が並んでいて、ルーンは迷うことなく廊下を進んだ。教えてもらった部屋の前で立ち止まり、襖へ手を伸ばす。


「……」


 トントンと叩いて返事を待つ。

 少し経てば、襖の向こうから声が聞こえてきた。

 すっと襖が開くと、中からダリアンが出てくる。


「はい。どなたで……。あ、これはこれはルーンさんとジェイクさん。こんにちは」

「おはよう、ダリアン」

「おう」


 二人は軽く挨拶を交わした。


「どうぞ、お入りください」


 ダリアンに促され、ルーンとジェイクは部屋の中へ足を踏み入れる。

 畳の敷かれた部屋には、テーブルが置かれていた。障子の開けられた窓からは穏やかな風が吹き込み、室内の空気を静かに揺らしている。

 ダリアンは襖を閉めると、テーブルの上に置かれていた湯飲みを片付けた。それから座布団を敷き、そこへ腰を下ろす。ルーンとジェイクも向かい側に座った。


「……ちびルーンさんはいないんですね」

「あの子は置いてきたわ」

「そうですか。……それで、貴女たちは何故ここへ?僕に用事でも?」

「用がなければ来ないでしょう?」

「……それもそうですね」


 ルーンの言葉にダリアンは苦笑する。そして、口元にわずかな笑みを浮かべて彼は二人を見つめた。


「では、早速聞きましょうか」

「…………」


 ルーンはその様子を気に留めることなく、窓から吹き込む風で揺れた髪を指先でかき上げる。


「ここに来たのは、確認のためよ」

「確認?」

「ええ。ジェイクにはもう聞いたから、今度は貴方の番」

「…………」


 静かに息を吐き、ルーンは落ち着いた様子で言葉を続けた。

 ダリアンは黙る。確認。その言葉を聞いた瞬間、彼はルーンが何を尋ねようとしているのかなんとなく理解した。


「……………」


 おそらく、彼女が次に口にするのは。



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