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ブルーテイル・ハピリス‐世界に嫌われているダークエルフが世界を救っては駄目ですか?‐  作者: aki.
4、わたしのくろいほうせき

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呪念石を求めるな





 ルーンは自室の襖を開ける。

 後ろからついてきたジェイクとダリアンが先に入ったのを確認してから、彼女も中に入って襖を閉めた。

 パンと小さな音が響き、ルーンは二人と向き合う。


「そんじゃ、何から聞こうか?」


 先に口を開いたのはジェイクだった。テーブルも椅子もない部屋で壁に背を預け、腕を組んでいる。その隣では、ダリアンが相変わらず穏やかな笑顔を浮かべていた。


「その前にいいかしら。……あの子はどこ?」

「あん?」


 ルーンは片手をあげて、ジェイクの言葉を制す。

 ジェイクは眉をひそめ、その言葉に彼はダリアンと顔を見合わせた。


「……あの子とは、ちびルーンさんのことですか?」

「ちび……。何、その呼び方?」

「彼女なら消えましたよ。ふっとね」

「……消えた?」

「ああ。シオンたちの話ではな」


 ジェイクは肩をすくめた。

 ルーンの表情が強張る。

 消えた?意味が分からない。それは、ただどこかへ行ったという意味なのか。それとも、文字どおり姿を消したという意味なのか。


「んじゃ、もういいか?」

「………ええ」


 気にはなるけれど、話の続きを聞こうとルーンは頷く。


「お前も、あいつと同じなのか?」

「同じって?」

「呪念石。探してんのか?」

「じゅねん……何?」

「あの黒い宝石のことですよ」


 ダリアンが口を挟む。

 黒い宝石。呪念石。

 あの黒い宝石は呪念石という名前なのか。


「…そう。あれは呪念石っていうのね」


 ルーンは顎に手を添える。


「で、質問の答えは?」

「……答えはイエスよ」


 ジェイクに促され、ルーンは二人を見つめる。答えると、ジェイクの目がわずかに細まった。


「貴方たちに隠しても意味はないから正直に言うわ。私は、呪念石を探している」


 隠すつもりはなかった。ここで嘘をついても意味はない。


「どうして、あいつを俺んとこに?」

「時間が取れなかったからよ。私は今、学び舎の生徒だからね」


 ルーンは少しだけ肩をすくめて部屋の隅に視線を向ける。壁には、きちんと畳まれた制服が掛けられていた。


「休みを取ればよかったのでは?」

「まあ、それはそうなんだけど…。どこにあるかも分からないものを探すのよ?すぐに見つかるなら、学び舎を休んででも出掛けるけど……」


 呪念石がどこにあるのか分からない以上、必要な時間も読めない。数日で見つかるかもしれないし、何か月もかかるかもしれない。

 そんな状況で学び舎を長期間休むわけにはいかなかった。それにシオンたちがいる手前、何の説明もなく家を離れれば怪しまれるだろう。

 今は、できるだけ普段どおりに過ごす必要があった。


「……なるほどな」


 ジェイクが短く頷く。

 今度はルーンが彼らに質問した。


「……さっき、"シオンたちの話では"って言ってたわね。シオン、貴方たちのところに行っていたの?」

「ああ。途中参戦してきたぜ。あの野郎、さっさとあっち側の味方になっちまってよ。…まっ、おかげで『いい勝負』ができたがな」


 ジェイクは肩をすくめたが、すぐに口元を緩める。どこか楽しげな声だった。

 シオンがジェイクたちのところへ行っていたことも、彼らと会い、何があったのかも初耳だった。


「…………」


 聞きたいことが次々と浮かんでくる。引き続き質問をしようとルーンは口を開くが、しかしそこで、スッと襖が開いた。

 開いた襖に三人はその方に顔を向ける。そこにはホワイトが立っていた。金色の髪を揺らし、こちらを見つめている。


「……ホワイト?」


 彼がルーンの部屋を訪ねてくるのは珍しかった。普段なら、必要がない限り自分から近づいてくることはない。


「何?貴方がここに来るなんて珍しいわね」

「普段ならば、この場への私の訪問は私のルーンが嫌がるからな。私は、私のルーンが嫌がることはしない」


 ルーンは彼の方へ体を向けた。

 ホワイトは淡々と答え、わずかに視線を動かす。


「……なら、何故ここに?」

「紺色の子から聞いたからだ。呪念石のことを」

「……!」


 ホワイトの言葉にルーンの顔が強張る。

 紺色の子。シオンだ。

 ホワイトはシオンに呪念石の話を聞いて、ここに来たのだと言った。


「まだ紺色の子の話は続いているが……。私は、私のルーンに忠告しに来た」

「……?」


 ホワイトは淡々と続ける。

 彼は一歩、部屋の中へ足を踏み入れた。表情は変わらない。だが。


「……私のルーン。呪念石を求めるのはやめろ」

「……!」


 いつもとは違う口調で彼は言った。

 ルーンは息を呑む。

 それは単なる忠告ではなく、何かを恐れ、何としてでも止めようとしているような重みがあった。


「………どうして?」


 ルーンが眉を寄せると、ホワイトは言葉を続ける。


「あの石は、誰の手にも渡ってはいけないものだ」


 淡々とした声。


「特に私のルーン……ダークエルフ族の者は、絶対にあれに触れてはいけない」

「お前、あれが何なのか知ってんのか?」


 ジェイクが聞いた。ホワイトに近づき、開いた襖に片手を置く。

 ホワイトは彼へ視線を向け、頷いた。


「ああ。よく知っている。話すつもりはないが」

「ねぇのかよ。話せよ、勿体ぶらねぇで」


 苛立ったように言う。

 しかし、ホワイトは顔色一つ変えなかった。


「悪いが、呪念石のことは機密だ。一般の人間に話すことは禁止されている」

「……禁止?誰に?」

「それも機密だ」

「…………」


 ジェイクは疑うようにホワイトを見つめる。その言葉は本当なのか嘘なのか。

 だが、ホワイトが呪念石について何かを知っていることだけは確かだった。

 ジェイクは息を吐き、腕を組む。


「…………」


 ルーンは二人のやり取りを黙って聞いていた。

 呪念石。誰の手にも渡ってはいけないもの。特にダークエルフは絶対に触れてはいけない。

 ホワイトの言葉が頭に残る。特に私…ダークエルフは絶対に触れてはいけないとはどういうことだろう。あの石には、何かがあるのだろうか。


 その時──


 ドタンッ!!


 突然、背後から大きな音が響く。


「……っ!?」


 それは、家中に響き渡るような大きな音。

 驚いたルーンたちは一斉に目を見開き、音のした方へ顔を向けた。



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