↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーテイル・ハピリス‐世界に嫌われているダークエルフが世界を救っては駄目ですか?‐  作者: aki.
4、わたしのくろいほうせき

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

309/334

まだ残っていた





 シオンとジェイクの戦いが始まると同時に、ダリアンとエイル、ヴィーの戦いも再び動き出した。


「はあっ!」


 ヴィーが刀を振り下ろす。

 ダリアンは槍の柄でそれを受け止め、すぐさま反撃に転じた。エイルが横から弾を撃ち込むと、ダリアンは身を翻して回避する。


 金属同士の擦れる音が、森のあちこちで響いていた。


 シオンはジェイクの拳を剣で受け流し、返す刃で彼の肩を狙う。だがジェイクはそれを紙一重でかわし、再び拳を叩き込んだ。


「どうした、シオン!もっと来いよ!」

「……言われなくても!」


 彼らの攻防は少しも途切れることがない。

 その様子を少女はじっと見つめていた。ジェイクたちに力を分け与えた後、彼女は戦いに加わることもシオンたちの邪魔をすることもしていない。


 ただ、静かにその場に立っていた。


「…………」


 少女はふと視線を横へと向ける。そこには呪念石が眠る建物があった。


「(……まだ、完全に魔力が戻ったわけではないけれど)」


 少女は自分の手を見つめる。

 今の彼女はルーンの姿をしている。まだ自由に力を扱えるわけではないが、それでも、今ならば。


「(扉の鍵を壊して、中へ入るくらいはできるかもしれないわね)」


 少女はそう考えると静かに足を動かし、建物へ向かって歩き出した。


「……っ?」


 しかしその時、足元で何かが弾ける。

 少女は反射的に立ち止まり、視線を落とすと、進行方向の地面が横一線に焼け焦げていた。黒く焦げた地面から細い煙が立ち上っている。

 少女はゆっくりと顔を上げた。その視線の先にいたのは、弓を構えたアラタ。弦には淡く光る矢が引き絞られている。その隣には、エーの姿もあった。


「そこで止まって……!」


 エーが叫ぶ。

 その声には、かすかな震えが混じっていた。顔色は悪く、立っているのも辛そうに見える。

 彼女たちはゆっくりと移動し、呪念石の眠る建物の前に立った。


「……そういえば、貴女たちが残っていたわね」

「はぁ、……っ、この先へは行かせない……!」


 エーは息を切らしながら答える。

 少女はそんな彼女を見つめ、わずかに首を傾げた。


「……随分と体調が悪そうね。大丈夫?」

「…………」


 エーは答えなかった。

 代わりに、足元へ魔法陣を展開させる。淡い光が地面に広がり、彼女の手の中に一本の剣が現れた。


「にゃあ」


 肩に乗っていたルミーが、小さく鳴く。


「ごほっ……!」


 不意に、エーの口から咳が漏れる。


「エー、あまり無理は……」

「……大丈夫。君はそのまま、彼女に矢を向けてて」


 アラタが心配そうに声をかけるが、エーはそう言って剣を握りしめる。


「………ごほ…っ」


 アラタは眉尻を下げた。

 彼女の顔色は、やはりよくない。

 今にも倒れてしまいそうなほど苦しそうだった。


「…………」


 アラタはエーを見つめる。

 どうしてだろう。エーを見ていると胸がざわざわする。

 彼女のことを以前から知っているような気がするのに、何も思い出せない。もしかすると、エーもシオンと同じく自分の失われた記憶に関係しているのだろうか。

 そんな考えが頭の片隅をよぎるが、しかし今はそれどころではない。目の前には、呪念石を奪おうとしている少女がいる。


「…………」


 アラタはエーから視線を外し、短く息を吐いた。弓を構え直す。光の矢が少女の胸元へと狙いを定めた。

 少女はそれを見て、少しだけ目を細める。


「まさか、そんなふらふらな体で私と戦うつもりなのかしら。…随分と舐められたものね」


 彼女は髪をかきあげた。その声にはわずかな苛立ちが滲んでいる。

 エーは剣を両手で持ち、構えを取った。そして深く息を吐く。


「(大丈夫)」


 自分に言い聞かせる。


「(私は大丈夫)」


 握った剣の柄が、手のひらに食い込む。


「(呪いが何だっていうんだ)」


 エーは目を閉じ、胸の奥にある不安を押し込めた。


「(呪われた人と戦うなんて、もう何回も、何十回もやってる)」


 これまでだって、何度も乗り越えてきた。


「(白い羽根が穢れたくらいで、どうってことない)」


 彼女はゆっくりと目を開く。


「(……死にそうになるだけ)」


 だから、大丈夫。

 エーは剣を握る手に、さらに力を込めた。足元に魔法陣が広がり、そこから何匹かの妖精が姿を現す。

 小さな光を纏った妖精たちは、エーの周囲をふわふわと飛び回った。そのうちの二匹が、彼女の指示を受けてアラタのそばへと飛んでいく。


「!」


 アラタは一瞬だけ妖精たちに視線を向け、すぐに少女へと向き直った。

 エーは剣を構えたまま、一歩前へ出る。少女はその姿を見て、静かに息を吐いた。


「………どうしても通してくれないみたいね」


 低い声だった。

 先ほどまでの余裕のある笑みは、すでに消えている。

 少女の足元に、黒い魔法陣が広がる。地面に描かれた紋様が、ゆっくりと光を帯び始めた。


「だったら……」


 手を伸ばす。

 その指先に、黒い魔力が集まっていく。


「貴女たちを殺してでも、奪い取るわ!」


 そして、叫びと同時に魔法陣から炎が噴き出した。黒い炎が渦を巻き、少女の手から勢いよく放たれる。

 炎は一直線に、エーとアラタへと迫っていった。


「っ!」


 アラタは弓を引き絞り、エーは眉をひそめる。

 二人の目の前に黒い炎が迫り、森の中には激しい熱風が吹き荒れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。