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ブルーテイル・ハピリス‐世界に嫌われているダークエルフが世界を救っては駄目ですか?‐  作者: aki.
4、わたしのくろいほうせき

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途中参戦は苛つく





「シオンくん!?」


 エーが思わず声をあげた。

 ダリアンの槍がヴィーへと振り下ろされる。その一撃が届く寸前、横合いから剣が割り込んだ。

 ガキィンッ!!と、鋭い金属音が森に響き渡り、銀色の刃が槍を受け止め、火花が散る。シオンの突然の乱入に、その場にいた誰もが目を見開いた。


「……また、人が増えましたか」


 ダリアンはわずかに眉をひそめる。


「途中参戦は苛ついてしまうので、やめていただきたいんですがね!」


 言い終えると同時に、ダリアンは槍を強く押し込んだ。

 シオンは剣を傾け、その力を受け流す。だが、ダリアンは間髪入れずに槍を引き戻し、今度は横薙ぎに振るった。

 シオンはそれを剣で弾き返し、数歩後ろへ下がる。


「シオン!ちょうどいい所に来た!そいつらを説得してくれ!」


 ジェイクが声をあげる。

 しかしシオンは彼の言葉に応じることなく、鋭い視線を向けた。


「……ジェイク。何故お前がここにいる。それに、そのルーンもどきは何だ」

「もどきって私のことかしら?」


 シオンの言葉に、ルーンの姿をした少女が眉をひそめる。少女は不服そうにしていた。

 その仕草も、声音も、顔立ちも。どこをどう見ても、彼女はルーンそのものだった。


「…………」


 だが、シオンには違いが見えていた。

 少女の体を覆う、黒い靄。それは彼の知るルーンには存在しないものだった。姿形が同じであっても、その身に纏う気配がまるで違う。

 シオンは少女を警戒しながら、剣を構え直した。


「誰か、状況を説明しろ」

「あいつらは呪念石を狙ってて、それを今、俺たちが阻止してるところ」


 ヴィーが答える。

 その言葉に、シオンは一瞬だけ視線を動かした。


「呪念石を?」

「ああ。どうやらこいつら、どうしてもあれを手に入れたいらしいぜ」


 ヴィーは刀を構えたまま、ジェイクたちを睨みつけた。

 そこへ、アラタも近づいてくる。


「えーと……俺たちは、どっちの味方すればいいの?」


 アラタはジェイクたちとシオンたちを交互に見た。突然の状況に、判断がつかないようだ。

 シオンは答える代わりに、ヴィーの隣へと歩み寄る。その行動を見て、ジェイクは目を丸くした。


「おい!そっちの側につくのかよ、シオン!」

「……悪いな。呪念石を奪われるわけにはいかないんだ」


 シオンは静かに答える。


「……つまり、貴方も敵になるのね」


 少女が微笑みながら言った。

 その表情に、シオンは剣の柄を握る手に力を込める。

 ジェイクは眉をひそめ、小さく舌打ちした。


「ジェイクさん、あちらは四人となりました。対してこちらは三人のまま。少しだけ不利になりましたが、どうしますか?」


 ダリアンが尋ねる。


「どうするっつわれても……」


 ジェイクは髪を掻きながら、シオンたちを見渡した。

 四対三。確かに不利だ。このまま戦いを続けても勝てないかもしれない。そう思っていると、少女がふいに目を伏せ、口元に笑みを浮かべた。


「ふふっ…。ちっとも不利な状況にはならないわ」


 少女は楽しそうに言う。

 すると彼女の足元に黒い魔法陣が展開され、それはジェイクとダリアンの足元にも同時に現れた。


「!」

「なんだ?」


 二人は驚き、足元を見下ろす。

 地面に描かれた魔法陣が、じわりと黒い光を放ち始めた。その光は瞬く間に二人の体を包み込む。


「……貴方たちに、私の力を分けてあげる」

「何?」


 ジェイクが顔を上げる。

 少女は答える代わりに、静かに呪文を唱え始めた。聞き慣れない言葉が森の中に響き渡る。

 その瞬間、ジェイクとダリアンを包む黒い光が不気味に揺らめいた。まるで生き物のようにうねりながら、二人の体へと吸い込まれていく。


「っ、!?」


 ジェイクの胸が、どくりと大きく鳴る。


「ぐっ……!」


 彼は思わず胸元を押さえ、その場に片膝ついた。


「ジェイクさん!」


 エーが声をあげる。

 ヴィーとエイルも、突然の出来事に目を見開いた。


「てめぇ、何してやがる!!」


 ヴィーが少女へ向かって怒鳴る。

 しかし少女はまるで気にする様子もなく、クスクスと笑っていた。


「ふふっ。せっかく私の味方をしてくれるんですもの。役に立ってもらわなくちゃね」


 少女は呪文を唱え終える。

 ジェイクとダリアンの足元にあった魔法陣が音もなく消えていき、しばらくしてジェイクはゆっくりと立ち上がった。

 ダリアンもまた、何事もなかったかのように姿勢を正す。


「……!」


 シオンは剣を握る手に力を込めた。

 二人の周囲を漂う空気が、明らかに変わっている。先ほどまでとは違う。肌を刺すような、重く、冷たい気配。それは二人の体から溢れ出しているようだった。

 エイルたちもその変化に気づいたのか、それぞれの武器を構え直す。

 アラタは慌ててエーのそばまで走り、彼らの様子を見つめる。


「さあ。行きなさい、ジェイク、ダリアン。あの人たちに、貴方たちの強さを見せてあげて」


 少女は髪をかきあげながら、優雅に告げた。

 次の瞬間。ジェイクの姿が、その場から消える。


「っ……!」


 シオンは目を見開く。

 ジェイクはすでに、目の前まで迫っていた。腰を落とし、地面を強く蹴り上げた勢いのまま拳を振り抜く。


「っ!」


 シオンは咄嗟に剣を構えた。

 ガァンッ!!剣と拳が激突する。

 シオンの体が、わずかに後ろへ押し込まれた。


「っ、……!」


 歯を食いしばる。凄まじい力だった。剣を握る両腕に、ずしりと重い衝撃が走る。

 もしも足を踏ん張っていなければ、そのまま後方へ吹き飛ばされていただろう。シオンは剣越しにジェイクを見据える。


「シオン。俺は今、最高に嬉しい気分なんだぜ」


 ジェイクは口元を緩ませた。


「いつかお前と本気の勝負がしてぇと思ってたんだ。まさかこんな形で叶うとはな!」


 楽しそうな声。

 ジェイクの瞳が、真っ直ぐにシオンを捉える。その瞳は、鮮やかな赤に染まっていた。

 シオンは一瞬、その色に目を奪われる。だが、すぐに剣を力任せに振り抜いた。


「っ!」


 ジェイクの拳が弾かれる。

 シオンはその隙に後方へと跳び、距離を取った。

 視線を向けた先では、エイルとヴィーがダリアンと交戦している。槍を振るうダリアンの動きは、先ほどよりも鋭くなっていた。

 エイルが銃で受け止め、ヴィーが横から刀を突き出す。しかし、ダリアンは二人の攻撃を巧みに捌き、余裕のある笑みを浮かべていた。


「おやおや。先ほどよりも、少しばかり動きがよくなりましたかね?」

「くそっ……!」


 ヴィーが歯噛みする。

 その様子を一瞥したシオンは、再び視線を戻した。

 ジェイクの背後。黒い靄を纏った少女が、こちらを見つめている。

 シオンが睨みつけると少女はその視線に気づき、にこりと微笑んだ。まるで、この状況を楽しんでいるかのようだ。


「………俺もだ、ジェイク」


 シオンは静かに口を開く。


「俺も、お前とは本気でやってみたいと思っていた」


 そして、剣先をジェイクへと向けた。


「っ、……そうでなくちゃな!探求者としてはよぉ!!」


 その言葉を聞き、ジェイクの表情がさらに明るくなる。彼は拳と拳を強く突き合わせた。

 ゴッと鈍い音が響き、再び構える。赤く染まった瞳が強く輝いた。


「そんじゃあ、やろうぜ!本気の殺し合いをよ!!ぶっ殺されても文句言うなよ!!」


 ジェイクは大きく叫ぶ。

 言い終えると同時に地面を蹴り上げ、一直線にシオンへと駆けた。

 シオンもまた剣を構え直し、迫り来るジェイクを見据えて地面を強く蹴る。そして。


 ガァンッ!!


 衝撃が森を震わせる。

 二人を中心に、鋭い風が吹き荒れた。木々の葉が激しく舞い上がり、地面の土が巻き上げられる。

 互いに一歩も引かぬまま、剣と拳が何度もぶつかり合う。


 シオンとジェイク。

 二人の力が今、真正面から激突した。



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