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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
3、ダークエルフ
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コロコロコロ四郎を捕まえろ





『わー!来ないで!来ないでー!』


 甲高い悲鳴を上げながら、コロコロコロ四郎は広場を飛び回る。

 しかし、その声とは裏腹にコロ四郎はふわりと宙返りすると空中に小さな魔法陣を展開させた。


 パシュンッ!と、光の弾が放たれる。


「っ!」


 修介は咄嗟に刀を振るい、それを弾いた。

 弾かれた魔法は地面にぶつかり、小さな爆発を起こす。

 ほぼ同時に別方向から飛んできた攻撃も、ルーンが木の盾で受け止めた。

 乾いた衝撃音。

 コロ四郎はその隙にまた距離を取る。


 速い。とにかく速い。

 上下左右、予測不能な軌道で飛び回り、少しでも近づけば魔法で迎撃してくる。

 追いつくことすら難しかった。


「くそっ!あいつマジで!」


 修介が顔をしかめ、再び飛んできた魔法を刀で弾きながら叫ぶ。

 ルーンは盾を構えたままコロ四郎を見据えていた。


 魔法が使えれば話は早い。

 動きを封じる魔法を使って捕まえられれば一瞬で終わる。

 だが、授業中の魔法の使用は禁止。

 ルールを破れば最悪失格になるだろう。


「っ、これじゃ攻撃も出来やしない!」


 修介が苛立たしげに吐き捨てる。

 ルーンも眉を寄せた。


「あの子の動きを先読みできればいいんだけど……難しそうね」


 しばらく追いかけ回した末、二人は一度足を止める。

 すると、コロ四郎もぴたりと停止して、ふわふわと宙に浮かびながら笑顔でこちらを見下ろした。


『ふふーん』


 そんな声が聞こえてきそうな顔。


「余裕そうな顔がスゲェむかつく」


 修介の額に青筋が浮かび、刀を握り直す。


「……バレない程度に少しだけなら魔法を使ってもいいかしら」


 その隣でルーンが小さく呟いた。

 すると、ピコン。と、即座にスマートが反応を示す。


『駄目です!』


 いつになく力強い声。


『私、見てますよ!見たら速攻ケイン先生に伝えます!』


 画面には監視員のような顔文字。


「…………」


 ルーンは眉をひそめた。


『あと十分!あと十分!』


 コロ四郎が元気よく叫ぶ。


 二人の表情が険しくなった。

 残り十分。

 このままでは間違いなく時間切れだ。


「どうする?」

「そうね……」


 修介はルーンを見る。

 ルーンは顎に手を添えた。


 考える。コロ四郎の速度。

 攻撃頻度。移動範囲。

 そして二人の位置関係。

 やがて一つの案が浮かぶ。


「挟み撃ちができれば、なんとかなるかもしれないわ」

「挟み撃ち?」

「私たちのどちらかが囮になるの。あの子の注意を引き付ける。その間にもう一人が後ろへ回るのよ」


 ルーンは説明し、コロ四郎を見据えながら続ける。


「そして隙ができた瞬間、一気に捕まえる」


 修介もコロ四郎へ視線を向けた。


「挟み撃ちか……。やってみる価値はありそうだが。成功する確率は?」

「成功するかしないかは私たちの腕次第よ。確率なんてないわ」

「……」


 聞くと、ルーンは即答する。

 それを聞いた修介は頭を抱えそうになった。


「…俺、確実に成功するやつしかやりたくないんだけど」

「だったら、貴方が捕まえる方をやればいいわ」

「は?」

「囮は私がやる」


 ルーンは盾を持ち上げながら言う。

 修介の目が大きく見開かれた。


「今なんて?」

「だから。囮は私がやる。確実に成功させたいんでしょう?なら捕まえるのは貴方がやった方がいい」

「本気か?あの機械野郎と一人でやり合うつもりかよ。その盾で?」

「大丈夫よ」


 修介は木の盾を指差す。

 ルーンは口元を緩めた。

 不思議と迷いのない笑み。


「なんとかなるわ」


 そう言うと、ルーンは地面を蹴って一気に駆け出した。


「ちょっ……!」

『わっ!また来たー!』


 コロ四郎は反応し、慌てて飛び上がって逃げる。


「…………」


 ルーンは真っ直ぐコロ四郎へ向かっていった。

 その背中を見送りながら、修介はしばらく呆然と立ち尽くす。


「……あの女、何考えてんだ」


 頭をがしがしと掻く。

 あまりに無謀な作戦に、ため息が漏れた。

 だが、そうでもしない限りコロ四郎は捕まらないだろう。


「……ったく。失敗したらマジで許さねぇからな」


 刀を握り、ぼそりと呟く。

 不本意だが、勝つためにはルーンの作戦に乗るしかない。


 そして彼も地面を蹴り、ルーンとは別の方向へ走った。

 コロ四郎の死角へ回り込むために。


 残り時間は八分。

 もう迷っている暇などなかった。



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