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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
3、ダークエルフ

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204/273

だるまさん…?





 第三のゲームを目の前にして、ルーンは思わず眉をひそめた。


「これは……」


 コース上には等間隔でハードルが並べられている。

 第三のゲームは、ハードル走。

 しかし、ただのハードル走ではなかった。


 ハードルの上空には数台の円盤が浮かんでいる。

 金属製のそれは静かに宙を漂い、中央部分で赤い光を点滅させながら周囲を見回していた。まるで生き物の目のようだ。


 さらに円盤の下には筒のようなものが取り付けられていて、それを見上げながらルーンは首を傾げる。


「あれは何かしら?」

「あれは水鉄砲だな」

「水鉄砲?」

「ほら、見てみろ」


 修介が答え、前方を指差した。

 その先では只今絶賛別の生徒たちが挑戦している真っ最中。

 二人一組のペアが慎重にハードルへ近づいていっている途中だった。


「気づかれないように慎重にな」

「ゆっくり。…ゆっくり…」


 そろり。

 そろり。

 できるだけ気配を消すように進んでいた。

 だが。ふいに円盤の赤い光がぴたりと止まり、ぐるりと瞬時に方向転換させて彼らを捉える。


 次の瞬間。

 シュバッ!と、勢いよく水が発射された。


「ぎゃーっ!?」


 悲鳴が響く。

 水をまともに浴びた生徒たちは全身ずぶ濡れになりながら慌てて飛び退いた。


 それを見たルーンは目を瞬かせる。


「……何あれ?」

「たぶん、あの円盤に見つかっちゃいけないんだろうな」


 修介は顎に手を添える。


「だるまさんが転んだ、みたいな感じか?」

「だるまさん……何?」

「ん?知らない?」

「知らないわ」


 即答だった。

 修介はきょとんとし、意外そうな顔をする。


「子供の頃にやらなかった?」


 ルーンは首を横に振った。


「ダークエルフは、そういう遊びはしないのか?」

「さぁ。…私の育った環境はちょっと特殊だったから、単純に私だけが知らないのかもしれないわ。他の子は普通にやってたのかも」

「へぇ」


 修介は少し驚いたようだった。


「どんな遊びなの?」

「ええと、簡単に言うとだな」


 聞かれて、修介は説明を始めた。


 "だるまさんが転んだ"のルールは単純明快。

 鬼がいること。

 鬼が背中を向けている間だけ動けること。

 振り向いた瞬間は止まらなければならないこと。

 少しずつ距離を縮めて鬼に触れれば勝ちになること。

 そして動いたところを見つかれば負けになること。


「……つまり、それで言うと…あれが"鬼"なのね」


 説明を聞き終えたルーンは再び円盤へ視線を向けた。


「そんな感じだ」


 修介が頷く。

 その時。二人の近くを漂っていた円盤が、ふよふよと接近してきた。

 赤い光が伸び、細い光線がルーンと修介の体をなぞる。


 すると、ピコン。と、突然、ルーンのポケットから音が鳴った。


「?」


 取り出したスマートからひっきりなしに音が鳴り続ける。

 画面が自動的に点灯し、点と線で描かれた顔が表示された。


『認証完了。コード2015。挑戦者登録。登録完了』


 機械的な音声が流れて、言葉を紡ぐ。


『一般組、ルーンさん。ポイントを授与。現在の貴女のポイントは三十』


 ほぼ同時に修介のスマートからも音が鳴る。

 二人は顔を見合わせた。


「ポイント?」


 ルーンが首を傾げる。

 するとスマートが勝手に返答した。


『あの円盤に見つからないように、ポイントを守りながら進んでください』

「守る?」

『見つかって攻撃を受けた場合、攻撃一回につき一点減少します』


 なるほど。

 ようやく仕組みが理解できた。

 今度は修介が質問する。


「ポイントが全部なくなったらどうなるんだ?」

『ポイントがすべてなくなった場合のペナルティはありません。ただし、次のゲームで少し不利になります』

「不利?具体的には?」

『ごめんなさい、修介さん。そこまでは教えられません』


 修介の眉が上がる。

 画面ににっこり笑う顔文字が表示された。


『頑張ってください』


 画面が静かになる。

 ルーンと修介はしばらく無言で立ち尽くし、そして再び目の前の円盤を見た。


 赤い光が、ゆっくりと左右へ動く。


「……よくわからないけど」


 ルーンはスマートをポケットへしまった。


「あの円盤に見つからなければいいってことね」

「だな」


 修介も頷く。


「先生ら、これ考えてる時めちゃくちゃ楽しんでただろうな」


 呆れ半分。感心半分。

 そんな声だった。

 だがその表情にはやる気が浮かんでいる。

 こういった挑戦的な状況は嫌いではないらしい。


「さあて」


 修介は円盤の動きを観察した。

 赤い光。旋回する速度。

 向きを変える間隔。

 しばらく見たあと、小さく頷いた。


「よし。タイミングを見て慎重に行くぞ。俺の合図で動くんだ」

「わかったわ」


 ルーンも真剣な表情になる。

 二人は身を低くした。

 目の前では円盤がゆっくりと巡回している。

 赤い光が離れる。今だ。


「行くぞ」


 修介が囁き、ルーンは頷く。

 そして二人は息を合わせ、静かに動き始めた。



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