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ブルーテイル・ハピリス‐世界に嫌われているダークエルフが世界を救っては駄目ですか?‐  作者: aki.
3、ダークエルフ

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ルーンちゃんの魅力を!





 昼休み開始の鐘が鳴り終わってしばらく。学び舎の中庭は、昼食を広げる生徒たちの笑い声と、風に揺れる木々のざわめきで満たされていた。


 その中で、不意に響いた大声が空気を切り裂く。


「ルーンちゃんの魅力を伝えたい!」

「……何?」


 木に止まっていた鳥たちが一斉に飛び立ち、ベンチに腰掛けて本を読んでいたルーンがゆっくり顔を上げる。隣で紅茶を飲んでいたショウコも、飲むのをやめてマキノを見た。


「ルーンちゃんの魅力を伝えたい!!」

「いや、二回言わなくても…」


 ショウコの冷静な返しにも、マキノは真剣そのものだった。拳を握りしめ、燃えるような目で二人を見つめている。


 昼食を食べていた周囲の生徒たちも何事かと視線を向けていたが、マキノは気づいていないのか、あるいは気にしていないのか、そのまま勢いよく続けた。


「ルーンちゃんがこの学び舎にやって来てもう二ヶ月経つのに、まだみんなルーンちゃんのこと避けてる!」

「……二ヶ月やそこらでそんな変わらないよ」


 ショウコは言う。

 ルーンは再び視線を本へ戻し、淡々とページをめくった。


「そもそもこの二ヶ月の間、他の教室の生徒とは接していないわ。避けられたままなのは当然よ」


 ぱらり、と紙の擦れる音が鳴る。

 それと同時にマキノは勢いよく二人の間へ滑り込むように座った。


「それに、私は別に誰からも好かれようなんて思っていないわ。貴女たちが私を理解してくれているのなら、それで十分よ」


 文章を追いながらルーンは言う。

 しかしマキノは納得できないらしく、ぶんぶんと首を横に振った。


「そんなの悲しいからルーンちゃん!」


 中庭に再び声が響く。


「私は、ルーンちゃんに私たち以外の人たちとも仲良くしてほしいの!ルーンちゃんにとって、この学び舎での生活が楽しいものになってほしいの!卒業まで、ええと……ルーンちゃんはあと四年もあるんだし、その時まで友達が私たちだけだったら嫌でしょ!?」

「……私は構わないけど」


 必死に言葉を紡ぐマキノとは対照的に、ルーンの返答は静かなものだった。

 ショウコは小さくため息をつき、カップをベンチに置く。


「ルーンさんの魅力を伝えるって言っても、何か案はあるの?」

「よくぞ聞いてくれました!」


 待ってましたと言わんばかりに、マキノの表情がぱっと明るくなる。

 彼女はスカートのポケットから四つ折りの紙を取り出し、得意げに広げた。


 ショウコが覗き込み、目を瞬かせる。


「何これ?ドレス?」

「ウェディングドレスだよ。この後の家庭科の時間で先生に見せるんだ」

「作るの?」

「うん。時間は掛かると思うけど、ショウコちゃんが手伝ってくれればすぐに終わるよ」

「何で私が手伝う前提なのよ」


 ショウコはじとりと目を細めた。

 本から目を離したルーンも、その紙を見る。


 そこに描かれていたのは、純白のウェディングドレスだった。

 幾重にも重なるレース。胸元には花を模した装飾があり、裾には細かな刺繍が流れるように描かれている。

 素人の落書きとは思えないほど丁寧なデザインだった。


「……どうしてそれを?」


 ルーンが聞くと、マキノはゆっくり彼女の方を向いた。

 その瞳は、妙にきらきらしている。


「ルーンちゃんって、絶対ウェディングドレス似合うと思うんだよね!」

「…………」

「綺麗系だから真っ白なの映えるし!しかも髪は紫!もう神秘的!それをみんなに見せれば、"ルーンさんって怖い人じゃないんだ……"ってなると思うの!」

「意味が分からないわ」

「ショウコちゃんはわかるよね!?」

「分からない」


 即答だった。

 マキノは「えぇぇ……」と肩を落とす。しかしすぐに復活し、ルーンへさらに詰め寄った。


「お願いルーンちゃん!一回だけでいいから着てほしい!」

「嫌よ」

「即答!?」

「そもそも何故ウェディングドレスを着なければならないの。魅力を伝える方法なら他にもあるでしょう」

「でもルーンちゃん、絶対似合うし……」


 まだ諦めきれない様子のマキノに、ショウコは半ば呆れながら言った。


「というか、家庭科の授業でウェディングドレスなんて作れるの?」

「たぶん!」

「たぶんで突っ走らないでちょうだい」


 そんなやり取りをしていると、不意に別の声が聞こえる。


「あ、いた。ルーン!」


 三人が振り向く。

 そこにはフィルが立っていた。彼は人混みを避けるように中庭を歩き、こちらへ近づいてくる。

 ルーンは本を閉じ、膝の上へ置いた。


「ここにいたのか。捜したよ」

「フィルさん、こんにちは」

「こんにちは、マキノ。ショウコも」

「どうも」

「どうかしたの?」


 ルーンが尋ねると、フィルはどこか困ったように眉尻を下げる。


「それが……」


 彼はルーンの隣へ座り、手に持っていた鞄を膝の上に置いた。

 そして短く息を吐いたあと、ゆっくりとかぶせを開く。


「きゅうっ!」


 その瞬間、高く愛らしい鳴き声が響いた。

 鞄の中から顔を覗かせたのは、小さな動物。青い毛並みに丸い瞳、長い耳はぴこぴこと揺れている。


 その動物を見て、ルーンは目を見開いた。



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