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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
105/150

街散策





「ルーン!一緒に行こっ!」

「いいけど。…その前に着替えね」


 フィラーラに連れられて、ルーンは彼女と共に城を出た。

 王都の大通りは、朝から人で溢れている。


 商人の呼び声。

 荷車の軋む音。

 焼きたての肉の匂いと、香辛料の香り。


 さまざまな声と音が混ざり合い、街全体がざわめいていた。


「わぁ……!」


 足を止め、フィラーラは目を輝かせた。


「すごい!人がいっぱい!」


 あちこちに視線を向けながら、きょろきょろと歩く。

 その横で、ルーンは小さく息を吐いた。


「はぐれるから走らないで」

「走ってないよ!」


 そう言いながら、フィラーラの足取りは明らかに速い。

 ルーンが少しだけ歩幅を広げて後ろをついていくと、彼女の肩に乗っていたブルーテイルが小さな青い体で空中を跳ねるように飛び、フィラーラの肩に着地した。


「きゅっ!」


 ブルーテイルの方に顔を向けて、フィラーラは嬉しそうに笑う。


「ブルーテイルも一緒に探検しよ!」

「きゅう!」


 ブルーテイルは元気よく鳴いた。

 しばらくそのままの状態で歩いていき、何かに気付いてぴょんと移動する。


 ブルーテイルが向かった先は近くの屋台だった。

 串焼きの香ばしい匂いが漂っている。


「きゅう!」


 ブルーテイルが身を乗り出す。


「ブルーテイル、落ちるわよ」


 ルーンが冷静に言った。

 フィラーラは屋台を見上げて目を輝かせる。


「ルーン、これ食べたい!」

「いいけど。私は食べないわよ」

「駄目!ルーンも食べるの!」

「………。仕方ないわね」


 ルーンは少し呆れたように言いながらも、屋台の主人に声をかける。

 串焼きを二本受け取り、フィラーラは嬉しそうにその一本を受け取った。かぷりとかぶりつく。


「おいしい!」


 ブルーテイルも興味津々で串を覗き込んで、鼻をひくひくと動かした。


「あなたは食べられないわよ」


 ルーンが言うと、ブルーテイルは少し残念そうに鳴いた。


 ――その時。


「きゅい?」


 ブルーテイルが突然、何かに反応し、ぴょんと屋台から飛び降りた。

 そして、そのまま走っていく。


「あ、待って!」


 フィラーラが慌てて追いかけた。

 ブルーテイルは人混みの間をすり抜けて進んでいく。目を離すとすぐに見失ってしまいそうだ。


「フィラーラ、待ちなさい!」


 ルーンもすぐに後を追う。

 市場の賑わいを抜け、人の流れをかき分ける。


 気が付くと、そこはさっきまでとは違う場所だった。

 人通りの少ない、静かな裏通り。

 石造りの建物が並び、店もまばらだ。


「……あれ?」


 フィラーラが周りを見回す。

 ルーンも追い付き、同じく周りを見渡した。


「ここ、静かだね」

「ブルーテイル!」

「きゅう!」


 声を頼りに、ルーンたちは走っていく。

 少し走ると、その先にあった小さな家の前でブルーテイルがぴょんぴょん跳ねていた。


 古い看板が揺れる、白と青の小さな家。

 窓の中には、見たことのない道具がいくつも並んでいた。


「魔道具屋ね」


 ルーンが呟く。

 ブルーテイルは窓の近くで楽しそうに跳ねていた。


「きゅう!」


 フィラーラはその様子を見て笑う。


「ブルーテイル、こういうの好きなのかな」

「そうかもしれないわね」

「きゅうっ」


 扉のドアノブを見る。そこには"くろーず"と可愛らしい文字で書かれたプレートが掛けられていて、中には入れないみたいだった。


「残念。ちょっとだけ入ってみたかったのだけど」

「きゅう…」


 ブルーテイルを抱き上げ、ルーンは肩を竦める。

 フィラーラは、ふと空を見上げた。


「ルーン。王都、すごいね」

「?」


 静かな声で言う。


「お店もいっぱいあって、人もいっぱい」


 ルーンは、少しだけ周りを見渡す。

 遠くから聞こえる市場のざわめきはおさまらず、それどころか先ほどよりも騒がしくなっているような気がした。


「……ええ」


 小さく答える。


「確かに騒がしいけど」

「でも楽しい!」


 フィラーラはにこっと笑った。

 その笑顔を見て、ルーンはほんの少しだけ口元を緩める。


「……そうね」


 そして言う。


「そろそろ戻りましょう」

「えー、もう?」

「迷ったら面倒だから」

「迷ってないよ」

「今まさに迷っているわ」


 ルーンはそう言って歩き出す。

 フィラーラは少し笑いながら、その後を追った。


 ブルーテイルも楽しそうに二人の周りを跳ねながら、ついていく。

 王都の賑やかな声が、再び近づいてきていた。



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