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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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最後のカラーは





 扉を開けて中に入ると、金属が擦れる小さな音が聞こえた。


 部屋の奥では、シオンが椅子に腰掛け、剣の手入れをしている。布で刃を丁寧に拭きながら、黙々と作業を続けていた。

 ルーンたちが入ってきた気配に気付くと、彼は顔を上げ、手を止める。


「来たか」


 ゆっくりと剣を鞘に収めながら、短く言った。

 立ち上がり、ルーンたちの方へ歩いてくる。


「(何か言ってくれるかな)」


 フィラーラは少し期待したように、シオンを見つめた。

 青いドレスの裾を少しだけ整えながら待つ。


 しかし、シオンは何も言わなかった。

 しばらくして、ルーンが口を開く。


「用があるって聞いてきたのだけど」

「ああ」


 シオンは頷くと、近くに置いてあった荷物袋を開いた。

 中から取り出したのは一枚の地図。


「今後のことを聞きたい」


 そう言って、それをルーンに渡した。


「……そうね」


 受け取ってルーンは小さく呟き、近くのテーブルへ歩く。

 地図を広げたその瞬間、胸元のブローチが小さく光り、ブルーテイルが姿を現した。

 小さな体でふわりと飛び出し、地図の上にぴょんと降りる。


「きゅう!」


 元気な鳴き声を上げ、飛び回る。

 シオンもテーブルへ向かおうとした、その時。


「ちょい待て」


 突然、肩をがしっと掴まれる。

 肩を組むようにして、シオンの動きを止めたのはジェイクだった。


「……何だ」


 シオンは眉をひそめてジェイクの方に顔を向ける。

 ジェイクはにやりと笑った。


「お前、何とも思わないのか?」

「何の話だ」

「ルーンだよ。……あと、フィラーラもか」


 ジェイクは顎で二人を指す。

 そして、少し声を潜めて言った。


「お前、女どものあの格好見て何かご感想とかねぇわけ?」

「……?」


 シオンの眉間の皺がさらに深くなる。

 言われて、彼は改めてルーンとフィラーラを見た。


 青いドレスのフィラーラ。

 水色のドレスを着たルーン。

 二人を交互に眺める。


 フィラーラは、また少し期待した目でシオンを見つめていた。

 今度こそ何か言われるかもしれない。


 しかし。

 シオンは淡々と、


「何か変わったのか」


 口を開き、そう言った。

 沈黙が落ちる。

 フィラーラの肩が、ほんの少し下がった。

 ジェイクは、シオンのその反応にすぐに吹き出す。


「はは、やっぱりお前はそんな反応だよな。つまんねぇ男だ」


 肩を竦める。

 そう言って彼はシオンから手を離し、テーブルの方へ歩いた。


「………」


 フィラーラは少しだけ眉尻を下げながら、シオンを見つめる。


「……?」


 シオンは意味が分からない様子で、軽く首を傾げていた。



+



「私たちがこれから行く場所は、ここよ」


 テーブルの上に広げた地図を、ルーンは指で押さえる。

 彼女が指を差したのは、東の大陸の北に位置する森だった。


「グリーンは、ここにいるわ」

「きゅうっ」


 ブルーテイルが元気よく鳴き、ぴょんと跳ねる。

 その周りを囲むように、フィルたちも地図を覗き込んだ。


「出発は?」


 シオンが短く聞く。

 ルーンは顎に手を添えた。


「そうね。なるべく早く出発したいところだけど……」


 少し考え込む。

 すると、フィラーラがぱっと手を上げた。


「はいっ。わたし、街、探検したい!」


 目をきらきらさせながら言う。

 それを聞いたジェイクもすぐに便乗した。


「俺も行きたいところがある」


 腕を組みながら、さらりと言う。

 さらに、ホワイトも口を開いた。


「私のルーン」

「……その呼び方やめて」


 すぐにルーンが返すも、ホワイトは気にせず続けた。


「私も少しやることがある。グリーンのもとへ行くのは待ってくれないだろうか」

「そういや気にしてなかったが、まだお前いるんだな」


 ジェイクが腕を組んだまま言う。

 ホワイトは静かに答えた。


「私はこれからも私のルーンと共にいると決めた」


 淡々とした声。


「私のルーンの行くところ、私も行く。決して離れぬと誓った」

「……さいで」


 少し間を置き、ジェイクは息を吐いた。

 そして三人の顔を見て、ルーンは小さく考え込む。


 フィラーラ。

 ジェイク。

 ホワイト。


 それぞれ順に視線を向ける。

 やがて、ため息を吐いて顔を上げた。


「仕方ないわね。それじゃあ、出発は明日にしましょう。……シオンとフィルも、それでいいわね」


 そう言ってから、シオンとフィルの方を見る。


「ああ。大丈夫」


 フィルはすぐに頷いた。

 一方、シオンは少しだけ考える素振りを見せ、


「問題ない」


 そして、頷く。

 こうして、次の旅の出発は一日後に決まった。


 テーブルの上では、ブルーテイルが楽しそうに地図の上を跳ね回っていた。



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