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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
103/145

悪気はない





 フィルがルーンたちの部屋に来たのは、シオンに呼びに行くようにと頼まれたかららしい。

 彼の部屋に行く途中、廊下には微妙な沈黙が流れていた。


「…………」


 フィルはまだ少し落ち着かない様子で、隣にいるルーンをちらりと見る。

 ルーンは視線を逸らしたまま、腕を組んでいた。


「………」


 胸の奥が、さっきから騒がしい。

 どくどくと鳴り続ける胸の音に、フィルはどうしようかと戸惑っていた。

 その空気を気にする様子もなく、フィラーラは嬉しそうに彼らの前を歩いている。


「……金色の子よ」


 その時、ルーンの後ろを歩いていたホワイトがフィルに声を掛けた。

 ぴくりと肩を震わせて振り向くと、ホワイトは淡々と言葉を紡ぐ。


「私のルーンは美しい。何を着ても、何をしていても」

「ちょ、何言ってるのよ!」


 表情を変えず、言葉を連ねるだけのホワイトだが、その言葉には重さがあった。

 ホワイトの言葉に驚いて、ルーンも振り向く。


「金色の子。先ほどから君は私のルーンを見ているが、何も言わない。言いたいことがあるのならはっきりと伝えるべきだ。私のルーンは美しい。金色の子も、そう思っている」

「なっ、」


 ホワイトに悪気はない。

 フィルは目を見開いて、頬を赤く染めた。

 ルーンは眉尻を下げる。


「そうだろう。金色の子よ」

「…………」


 フィルは小さく頷く。


「……、まぁ、…綺麗だとは思う」


 その言葉を聞いて、ルーンは視線を逸らした。


「…別に、貴方に褒められるために着たわけじゃないわ」


 いつもの調子で言ったつもりだったが、声が少し硬い。

 フィルは少し困ったように頭を掻いた。


「よぉ」


 その時、彼らの背後から声が響く。

 振り向くと、そこにはジェイクがいた。

 彼は、フィル、フィラーラ、ホワイト、ルーンの姿を順に見つめる。


「……」


 その目がルーンに止まって数秒、ジェイクは眉をひそめた。


「……誰だ?」

「ルーンだよ!」


 フィラーラが元気よく答える。

 ジェイクはもう一度ルーンを見た。


「……マジで?」

「何よその反応」


 ルーンが睨む。

 ジェイクは腕を組みながら、じっと彼女を観察した。


「いや……」


 少し笑う。


「思ったより似合うじゃねえか。やっぱ人間、着るもので雰囲気変わんな」

「思ったよりって何よ」


 ルーンはそっけなく答える。

 その横でフィラーラは得意げだった。


「わたしが選んだんだよ!」

「なるほど。フィラーラのセンスか」


 ジェイクは頷きながら、ちらりとフィルを見る。

 フィルの顔が赤いことに気付き、彼はにやりと笑った。


「お前、顔赤いぞ」

「!」


 フィルは慌てて顔を触る。


「あ、赤くなんて…!」

「さっきからちらちら見て、こいつのドレス姿に興奮しちまったか?」

「し、してませんよ!」


 否定するも、顔の赤みは一向におさまる気配がなく、フィルは眉をひそめて視線を逸らした。

 少しだけ、居心地が悪そうな表情。


 そのやり取りを聞いて、ルーンも彼と同様に居心地が悪くなった。

 胸が妙に落ち着かない。


 ジェイクは、今度はルーンを見る。


「ルーン」

「何」

「お前も顔赤いぞ」

「は?そんなわけないでしょ」


 ルーンは即座に否定した。


「いや赤いって」

「赤くない」

「赤い」

「赤くないってば」


 ルーンはジェイクを睨み付ける。

 彼は変わらずのにやけ顔だった。

 その様子を見て、フィラーラは楽しそうに笑う。


 ホワイトだけは少し離れた場所で、静かに二人を見ていた。

 そして、ぽつりと。


「私のルーン。金色の子。二人とも心拍が上がっている」


 全員の視線が一斉に向く。


「……あなたは余計なことを言わないで」


 ルーンが低く言った。

 ホワイトは首を傾げる。


「事実だ」

「事実でも言わなくていいのよ」


 ルーンは深く息を吐いた。

 そしてまた視線を逸らす。


 フィルとルーンの間には、さっきまでなかった妙な空気が流れていた。



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