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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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朝から元気





 その頃。

 ルーンは、盛大に布団を揺さぶられていた。


「ルーン!ルーン!朝だよ!起きて!」


 耳元で弾ける声に、ルーンはゆっくりと瞼を開く。ぼんやりとした視界の中で、まず目に入ったのはフィラーラの顔だった。


「……おはよう。朝から元気ね……」


 まだ眠気の残る声でそう呟きながら、ルーンは上体を起こす。

 そして、ふと彼女の姿を見て首を傾げた。


「……何それ」

「ん?」


 フィラーラはきょとんとした後、すぐに気付いてにこっと笑うと、その場でくるりと回転した。


 ふわり、と裾が広がる。


「これ?似合う?デメテラに借りたの!」


 嬉しそうに胸を張る。

 彼女が身に纏っているのは、青いドレスだった。柔らかな布が光を受けて、朝の部屋の中で淡く輝いている。


「綺麗な服だねって言ったら、着てみる?って言われたから着てみた!」

「へえ……」


 ルーンは素直に感心したように眺めた。


「確かに、綺麗なドレスね」


 その時、部屋の扉が静かに開く。

 二人が振り向くと、そこにはホワイトの姿があった。

 昨日まではほとんど何も身に着ていなかった彼(彼女?)だが、しかし今日は違う。


 彼(彼女?)は、黒い衣服を着用していた。

 歩き方はぎこちなく、ぎし、ぎし、と動きにくそうにしながらホワイトはルーンの前までやって来る。


「あなた、それどうしたの?」


 首を傾げて聞くと、フィラーラが楽しそうに答えた。


「デメテラに服着ろって言われた。何も着てないままで、お城歩かれると迷惑だからって」

「あー…」


 ホワイトが着ているのは、タキシードと呼ばれる礼服だった。

 きちんと整えられてはいるが、どうにも動きと噛み合っていない。


 ホワイトはルーンの前で立ち止めり、そして、いつもの淡々とした声で言った。


「おはよう、私の妻」


 その言葉を聞いた瞬間、ルーンの眉がぴくりと動いた。


「……妻はやめて」

「何故」


 ホワイトは首をわずかに傾ける。


「私の妻は、私の妻だ」

「妻になった覚えはないわ」

「魔力を与えた。魔力を与える。妻の証」

「……。…普通に、ルーンでいい」


 そう言うと、ホワイトは少しだけ考えるように沈黙した。


 やがて頷く。


「わかった。妻と呼ばれるのが嫌ならば、これからは妻と呼ぶのはやめよう」


 そして続けた。


「私のルーン」

「……」


 ルーンは小さく目を閉じる。


「(“私の”もやめてほしいんだけど……)」


 言う気力も起きず、彼女はため息を吐きながらベッドの端に腰を下ろした。


「あのねっ、ルーンのも借りてきたの!」


 すると、フィラーラがぱっと声を上げる。

 テーブルの上に置いてあった紙袋を手に取り、彼女はそれをルーンへ差し出した。


「はい!」

「……?」


 受け取り、袋の中を覗く。

 中身を取り出すと、手には水色のドレスが握られていた。

 やわらかな色合いの布地。丁寧に作られた装飾。さらに袋の中には、ネックレスやイヤリングなどのアクセサリーがいくつも入っている。


「ルーンに似合いそうなドレス、わたし選んだの!」


 フィラーラは得意げに胸を張る。


「アクセサリーも、デメテラにアドバイス貰って、選んだ!」


 ルーンはドレスを持ったまま、静かに言った。


「……これを私にどうしろと?」

「もちろん、着るの!」

「断ってもいいかしら」


 即答だった。が、しかし。


「駄目だ、私のルーン」


 ホワイトがすぐに言葉を挟む。


「私のルーンもそれを着るのを推奨する。きっと似合う」


 淡々とした声で続けた。


「私は、私のルーンがそれを着たところを見てみたい」

「わたしも見たい!」


 フィラーラがぴょんと跳ねる。


「ルーンのドレス姿!絶対に可愛い!着たら、シオンたちに見せに行く!」

「えっ」


 ルーンは思わず目を丸くした。


 嫌な予感しかしない。

 しかしその予感を否定する者は、この部屋にはいなかった。


 結局。

 ルーンはドレスの着用を余儀なくされる。


「…………」


 朝早くから、ずいぶんと忙しいことだ。

 水色のドレスを見つめながら、ルーンは深く息を吐いた。



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