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第十一章「闇の勇者」ラスト

そのバラバラだった身体は、痛々しい抜い後を残しているものの完全に癒着している。


その声を聞いて振り向いたテラーは驚いていた。

見るも無惨だが、間違いなくタモツが生きて立っている。


「おお、我が主が・・・」

テラーは涙を浮かべて、スカイの方を見た。


「これは今まで見たことがない見事な死者だ・・・」

スカイは感動のあまり、タモツを見つめたまま夢遊病のように呟いた。


まさに神秘だった。


そして、そのだらしなく垂れ下がった右手には、黒い瘴気のようなものを纏った長剣が引きずられている。


凄まじい強風がタンに情報を伝達する。

タンは信じられなかった。

「それは・・・精霊剣!?」


「そうこれは、精霊界の中でも賛否両論の剣。<闇の精霊剣>だ」

タモツは低い声で答えた。


タンは風の精霊に認められたことで風の精霊剣を得た。

ならば、タモツは闇の精霊に認められ勇者となったのだろう。


しかし、タンの中でも勇者とは正義の存在であり、闇の勇者など認められるはずがない。


「闇の精霊は人々の枯渇した精神の中に存在する。俺は生と死の狭間の世界でコイツに出会ったんだ」

タモツは剣を撫で、よろよろとタンに向かって歩いた。


「そして、俺は理解した。<渇望>と<本能>このチカラをコントロールした時、俺はアイツに勝てる!」


タモツはやがて走り出し、タンの纏う強風のシールドに勢いよくぶち当たる。


「渇望のエネルギーを本能で出力する!」

タモツの剣から発生した闇がシールドとなり、風と闇の食い合いが始まった。


「くッ・・・なんてパワーだッ!」

タンはタモツのステータスを見た。


タモツ 勇者レベル28


「俺は酒に対する甘えを捨てた!これからは休肝日を作る!」

共にお互いのシールド内に侵入し、無茶苦茶なチャンバラが始まった。


お互い剣の素人である。

しかし、その剣の衝撃は沼をも涸らしていく。


「その渇望。それが闇の推進力を作ることになるだぜ!」

タモツが叫ぶと闇の出力が上昇し、タンをシールドの外へ追いやって、そのまま空中に吹き飛ばした。


しかし、タンは追い風によって、空中で制止し悠々と地上に降りてくる。


地上に降りながらタンは祈りを捧げ、剣に風を集中させた。

タモツも剣を正面に構えてタンを待ち受ける。


「発ッ!」

タンがそう発して地面を蹴ると、タモツの目の前に瞬間移動した。


鍔迫り合いにもちこんで、からの風の開放。

コールドを葬った、爆ぜる風のゲイルプレッシャーだ。


その衝撃にタモツは歯を食いしばりながら、何かを解放した。


そう、それは酒気カウンターの全てだった。


「ならば、俺も勇者の秘奥を出すぜ・・・」

タモツがそう言って両腕を開き仰け反ると、それは波動となって発現する。


〜勇秘奥・アルハラ〜


タモツの本能は豪快な酒の津波となって、風をタンの身体ごと押し流していく。


酒に押し流されてもがくタン。

そして、凄まじい衝撃でタンの口の中にも酒が入ってくる。


「ぼぼぼぼぼぼぼッ・・・!」


未成年で酒を飲んだこともないタンにとって、この酒の量は言うまでもなく致死量だった。


(ああ、俺が死んでいく・・・)


酸欠と酒の辛味に苦しんだ後、タンの視界は真っ暗になっていった。


「硬え・・・」

やがてタンは岩の枕の痛みに耐えかねて起きた。


既に夜だった。


「起きたか」

タモツは左膝を右腕で抱えて、月を見ていた。

右手には酒瓶を抱えている。


「アンタ、酒を止めるんじゃなかったのかよ」


「休肝日を作ると言っただけだ。本能を刺激するためには自分自身を甘やかす日も作らなきゃならねえ」

月を見つめるタモツの目には執念のようなものが宿っている気がする。


「小僧、オメーなぜこの沼を攻めた?」


「俺は勇者だ。魔王を倒すためにチカラが必要だ」

タンは状態を起こし、タモツを見た。

タモツと同じ執念の目だ。


「だろうな。俺も勇者だ」

タモツはハッハッと笑った。


「勇者は勇気を持って流れを作る者。だったら魔人に支配されたこの世界を取り戻す流れを作るのが、俺たちの役目じゃねえのか?」


「だから、俺は死者を倒しレベルを上げようとした」


「お前はこの世界の素人か?もっと手頃な方法があるぜ」


この世界では地形の変動が頻繁に発生するため、いきなり洞窟ができたり、魔物が発生したりする。


「他とは比較にならないほど大量の経験値を持った魔物がいるらしい。その魔物が出現する場所を探せば簡単に強くなれるはずだ。だから、協力しろ」


成り行きで戦うことになった相手だが、タンとしては断る理由がない。


「お前は風による機動力で世界を自由に動くことができるし、俺は闇から自由に出現できる。精霊の能力は探すのにも都合が良いし、お互いの位置に移動するにも都合が良い」


「ありがとう、タモツさん。希望が見えたよ」

タンは一人を好む性格だったが、魔人に支配された今、世界を敵に回す恐怖があった。


しかし、初めて共に戦う仲間を得たのだ。


「フッ、俺はこの酒を飲み終えたらすぐに動く。お前もまあ適当に探せや」

タモツは照れながら酒を飲み干し、闇の中に姿を消した。

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