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蛇と薔薇  作者: 墺離
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番外編~兄弟子の話

蛇の兄弟子回想。短いです。

今日は俺の弟弟子(おとうと)の話でもしようか。


あいつは昔から魔法の探求一筋でその他のことには興味がなかったせいか初めて会う人間には"根暗"だの"陰湿そう"だのと暗いイメージをもたれがちだったが、本当は根が真面目で何事にもまっすぐで・・たまに頑固なところがあったりするがいいやつだと俺は知っている。


・・・まぁ確かに、目元は細くてつりあがってるし研究ばっかで外に出ないから肌は病人みたいに白いし、おまけに手入れされていない髪は伸ばされ放題で子供が見たら確実に泣くレベルの見た目ではある。

いや決して顔立ちは悪くないのだ、髪を切って少しでも笑えば(といって一度笑ってみろといったときにはこれでもかというぐらい悪事を企んでいそうな笑い方をされたが・・・)もっと人当たりも良くなるだろうに。


確かに魔法に携わるものとして探求にいそしむのは悪いことではない。


だがそれがだけが全てではないだろう、と何度か説教じみた助言はしているもののあいつは「必要ない」の一言でいつも終わらせてしまっていた。


嘆かわしいことに、あれが師の後を継ぎ、城付きの筆頭魔術師なった後もそれは変わらなかった。


だからあいつがある日突然言い放った「母性に目覚めたかもしれない」という爆弾発言には驚きはしたものの、その貴重な変化に嬉しさを覚えた。


そのまま放置しておけば絶対面白くなること間違いないという思いも手伝って、師が何とかその多大なる間違いを訂正しようと躍起になるのを妨害し始めて早10年、あいつのどうしようもない頭の解釈によって生まれた「母性(ははおやごころ)」にはますます磨きがかかり、その頃には隠居した師でさえ元に戻すことを諦めていた。


・・・・・・・・・・・・・だがしかし、久方ぶりに会いにきたかと思ったらいきなり胸倉掴まれて上半身が引きちぎれるんじゃないかというぐらいに前後に揺らされ化粧まみれの顔で泣きつかれた時は正直心臓が止まるかと思ったし、やっぱりあの時しっかりと訂正しておくべきだったかなと少し後悔したのは事実だ。



「ちょっとーーーーーーーーーー!!!!!!どうしよう~~~~~~!!!!!」


「・・・とにかく話は聞いてやるからとりあえずその鼻水だらけの厚化粧で近づくな」


「あら失礼しちゃうわ!!目と口以外は基本自前よ!!」


「・・・・・・・・・・」


どこから突っ込んだものか・・・


「それで?一体何をそんなに」


「そ う な の よ っ!!」


かつての面影は半分もない・・・あらぬ方向に変わり果てた弟弟子は化粧が崩れるのもお構いないにその目に再び涙をためて叫んだ。


あの子(・・・)が最近私を避けるのーーーー!!」


「・・・は?」


ニ度(にたび)上半身を激しく揺らされ話どころではなくなった。



                      *



漸くすると落ち着いたのか彼(仮)はぽつりぽつりと話し始めた。

それを要約すればこれが母性を向ける相手-・・つまり薔薇姫に最近あからさまにさけられている、ということ。


「ほんのちょっと前までは"蛇ー蛇ー"って私の後ろついてきたりしてほんっと可愛かったのに・・・・最近じゃろくに会いにきてもくれないし、城であっても目はそらされるし・・・」


・・・・・・・・・・それはごくごく一般的な反応じゃないだろうか。

とは後々面倒くさいので口にはださない。


そもそも常識的に考えてこれ(・・)に懐くほうがおかしいのだ。

城内で一番の変人と名高く、あからさまに見た目(いろんな意味で)不審者、遭遇したくない人NO1に上げられるこいつにあの薔薇姫は臆することもなく懐いていた。

生まれたときから身近にいたせいもあるのだろうが・・・あの姫も相当な変わり者だろう。


しかしその関係は今、一方的に崩されてしまっているようだ。


(それはつまりなんだ、思春期ってやつか?)


確か10を過ぎたばかりのはずだ。まだまだ幼いようにも見えるがこの時代10を過ぎれば"少女"は"女性"へといち早く変化していく時期だ。


「ねぇっどうすればいいの!?」


「あ~・・その何だ・・・こうなる前にお前、姫さんに何かいったりとか言われたりとかしなかったか?」


「え?そうねぇ・・・」


幼く無垢なだけの少女はやがてそうではなくなる。次第に現実を理解してくるものだ。


「そういえば」


「あるのか?」


「2ヶ月ぐらい前かしら、"蛇は『おかま』なの?"って聞かれ」


「それだな」


「えぇっ!?何でよ!?」


すぱっと言い放った俺に奴は絶叫した。


「・・・ちなみにお前は何て答えたんだ?」


「"違うわ、私はあなたの母親よ"ー・・って、ちょっと!!人の話聞いてるの!?寝てんじゃないわよっ!!」


「寝てるんじゃねぇよ、脱力してんだ!!」


馬鹿だ、こいつ本当に馬鹿だ。


「大体年頃の女の子がオカマ野郎に"母親です"っていわれて喜ぶわけねぇだろうが!!」


「誰がオカマよ!!私はオカマなんかじゃないわ!」


「鏡見ていっぺん出直して来ーーーーーーーーーーーい!!!!」


何でよぉ!!と五月蝿くわめく彼を椅子に縛-・・座らせると俺は一息つくためにお茶を飲みに部屋を出たのだ。

・・・・とにかく誰でもいいからもう一人突込みがほしい気分だ。










コレはさすがにまずいとおもった兄弟子はこの後懇々と蛇に説教をかまし、その勘違いな思いを訂正させるにいたるのでした。



ちなみに以下薔薇姫と蛇の会話詳細。

姫の中でオカマ=男色家のイメージがあるみたい。


『ねぇ蛇、蛇は"おかま"なの?』


『あら誰がそんこといったのぉ?』


『みんながいってたわ』


『あぁら、それはそれは・・(後でしっかり探しだして・・・ふふふ)。違うわよぉ』


『そうなの?』


『えぇ』


『よかった!!じゃあ、もう一つ聞いてもいい?』


『なぁに?』


『蛇は私のこと好き?』


『えぇ、大好きよ』


『本当!?』


『えぇ、だって私は貴女の"母親"ですもの』


『・・・・・・・・・・・・』





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