第4章 ⑥
「悠人!!」
砂埃が舞う中、康太が絶叫する。
急いで駆け寄るが、シンを離すわけにはいかない。さらに被害が大きくなる。
ただ瓦礫の前で立ち尽くすことしかできない。
「おい! お前がやったのか!?」
康太はシンの拘束をより一層強くして問いただす。
「地震は起こしたが、それより先は偶々じゃ。しかしこれだけしてもまだ邪魔するか」
シンはまるで他人事のように倒壊したやぐらを眺める。
康太はシンを睨みつける。どうにかしてコイツに痛い目を見せてやらなければならない。
しかし今は悠人の救出の方が優先だ。
康太は崩れてしまったやぐらの奥に彼女を見つける。悠人は何とか間に合ったようだ。
「浦部さん!」
康太が呼びかけると、彼女は寝起きのようにゆっくりと起き上がる。無意識の状態から抜け出したようだ。
「……え、どういうこと?」
浦部さんは目の前の光景にぼう然となった。
「悠人が下敷きになってる!」
「え!? 悠人くん……!」
彼女は慌てて立ち上がり、悠人を助けるべく倒壊したやぐらの残骸の中を捜索する。
擦りむいて血が出ている腕を抑えながらも、悠人を発見する。
幸い悠人に意識があったらしい。
上に覆い被さっていた柱を彼女が退けると、何とか這い出てきた。
「悠人くん! 大丈夫?」
「あぁ、問題ない」
「ごめんなさい。私のせいで」
「いや、僕が油断したせいだ」
悠人は強がっているが、頭や身体のいたるところから血が流れている。もしかしたら骨も折れているかもしれない。
「ここにいたら駄目だ! できるだけ遠くに逃げろ!」
「いや、それじゃあ駄目だ」
康太の言葉を、悠人はすぐさま否定する。
「今のシンはどこに逃げても関係ない。地震を起こせるくらいだからな」
力が増している今だと、彼女の家も安全圏ではないし、伊舟全域が危ないだろう。まだ鳴いているタイミングがわかる方が安全だ。
「それにまだ聞きたいことがある」
悠人はそう言うと、彼女の肩を借りて足をひきづりながらシンのもとに近づいていく。
「彼女の母親を怨霊にしたのはお前なんだろ?」
「……あぁ、そんなこともあったな」
「悠人くん、どういうこと?」
彼女が神妙な面持ちで尋ねてくる。まだ彼女には伝えていない。
確信がなかったから。だけどシンが犯人だと分かった以上は隠す必要はない。
「僕たちはシンに希死念慮の原因が母親だと聞かされていた。だけどそれは嘘だった」
どうしてシンは彼女を狙い、希死念慮を誘発することができるのか。シンを疑い出してから、考えていた。
「彼女の誕生日は、母親の命日でもある。つまりシンの祭事の日でもあった。力が増していたお前は母親の死に介入して怨霊に仕立て上げた」
怨霊についての史料の中にあった『神の介入』。シンはそれを実行したのだ。
「とうしてそんなことを?」
康太が訝しげに尋ねてくる。
「怨霊を取り入れて、神としての力を増強するためだ。彼女の希死念慮を起こせるのも、母親を喰らったからだろ。だけど母親は抵抗した。シンに取り込まれる前に彼女を産んで祖父に預けた」
シンが語っていた、母親が彼女を殺そうとしているなんてまったくの嘘だ。
それどころか母親は彼女を生かすために奔走した。
シンによって怨霊にされながらも彼女を逃したのだ。
「ここから先はお前の説明通りだ。彼女が死ななければ、怨霊を取り込んだ意味がない。完全な状態じゃないからな。だから彼女を殺そうとするんだろ」
シンの自供と史料から読み解いた真実だ。
「全部お前の仕業だろ。何か間違えているか? シン」




