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第3章 ③

 薄暗い砂利道を、俯き歩く。

 夏至が近づいているというのに、いつもよりも辺りが暗く感じるのは、気分が落ち込んでいるからだろう。

 柵から引き揚げて目を覚ました彼女には、感謝と謝罪を何度も繰り返された。その後の彼女は、上機嫌だったのが幻だったかのように気落ちしてしまった。

 とてもデートを続けるような空気ではなく、口数少ないまま山を下りて彼女を家まで送り届けて、別れた。決してデートではないけれど。

「助けられたのだからいいだろ」

 前を歩いていたシンが吐き捨てる。明らかに機嫌が悪い。それもそうだ。今回はシンがいなかったら絶対に間に合わなかった。彼女に死なれたら困るシンが神経質になるのも当然だ。

「ごめん。助かった」

 悠人が謝罪をするが、シンはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 それにしても随分と隙を突かれた。完全に目を離した瞬間の出来事だ。まるでどこかから監視されていたように。

「シンって怨霊が見えてるの?」

「いや、声が聞こえるだけだ。見えてはおらん」

「どこかで監視してるのかな」

「どうだろうな。しかし怨霊側も腹は立っているであろう。なんせお前には3度も邪魔をされているのだからな」

「それもそうか」

 怨霊に恨まれたら大変そうだ。しかしここまで邪魔して何もされないということは、無関係の人間に手出しはできないのかもしれない。

「おい、小僧」

 シンがぶっきらぼうに呼びかけてくる。

「なぜ浦部楽を助ける?」

「なぜって……」

 悠人は言葉に詰まる。まさかシンがそんなことを聞いてくるとは思わなかった。康太だったら茶化して聞いてくるけれど、シンにそんな意図はないだろう。

「あの話を聞いたら助けないわけにはいかないでしょ」

 母親に殺意を向けられ続けているのが、どれだけ辛いかは少しばかりは分かっているつもりだ。彼女がそのことに気づいていないなら、なおさらだ。

「だがワシの話を聞かなくても助け続けていただろう?」

 シンは悠人のことを試すように、顔を覗き込む。

「それは、そうだけど」

 鋭い指摘に戸惑っていると、シンは畳みかけるように口を開く。

「お前の人助けは献身などではない。被虐を顧みない自己犠牲からくるものだ。自分には価値がないと考えているからだ。そんな生き方ではすぐに息絶えるぞ」

「なんかシンに心配されるとは思わなかったわ」

 悠人は顔を歪めながら、言葉をこぼす。

「心配ではないわ、馬鹿者が!」

 さらに怒らせてしまったようで、シンはもう一度不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

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