46話 藤野 玄人、本当の世界を知っていきます。
四千字越え!びっくりな展開かもしれません!
そういえば、九十五点って、どこで間違えたんだ?……あ。神はいるかってところかな?俺、女神様にあってるもんな。
と、そんなことを考えていると。
「では、次の授業に……あ、そうだ!藤野君は別で授業があるらしいので、校長先生のところまで行ってくださいね!今後一週間は、教室ではなく校長室へ直行してください!」
校長室?なぜだろう。
「わかりました」
疑問を持ちながらも、従っておく。
俺は鞄ーーといっても、今日教材を貰うのだと思っていたから持ってきただけで、何も入っていないーーを持ち、校長室へ向かった。
「失礼します」
俺はノックを三回してから、中へ入る。するとそこには、キャルロットやジャックがいた。
「あれ?二人ともどうしたんだ?」
「ああ、それについては今から話すよ」
そう言ったのは、インフェルノウルフだった。
「え?お前、今どこから出てきたの?」
「気にするな。そこらへんは、まあ、神の力みたいなもんだ」
なるほど、なんとなく納得できる!
「あれ?校長先生は?」
「今はトイレに行ってるわ」
と、キャルロットが教えてくれた。
「で、なぜ我々がここにいるか、なんだが……」
どうせ、仲がいいから教師が教えるよりいいとかだろうな。
「他の人間より我々の方が、仲がいいからな。教師が教えるよりいいだろう?後、他にも色々都合がいい。言ってしまえば、後者がメインだ。というより、勉強させる気はさらさらない」
まあ、我々のところにフェルンが含まれてそうなあたり、違和感を拭えない感じはするけどな。
「色々おかしい気がしなくもないけど……ま、いいや。で、何をするんだ?」
「そうだな。校長が出てくるまで待って、その後は王宮に向かう」
ん?んんん?あれ?確か十日後って言ってたよな?
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「だめだ。時間は待ってくれない」
「いや、この前は十日後って話だったぞ!?」
「あー、それはね。玄人のこと話したら『さっさと連れてこい。わしがこの眼で見定めてやる』って」
え、それやばいやつでは?よくラノベであるやつでは?
「後、もう一人の都合がつくのが今日だけだったのでな」
「……わかったよ。行こう。っていうか、校長先生は?」
「俺見てくるぜ」
そう言って、ジャックがトイレのドアをノックする。
「大丈夫っすか〜?」
すると、中から聞こえてきたのは苦しみが色濃く出ている声。
「……腹痛い……死にそう……昨日食べた刺身があたった……」
なにやってんすか。
それからキャルロットが聖魔法をかけてなんとか回復させた後、校長先生の魔法で空を飛んで、王宮へ向かった。
「お疲れ様。通してもらえるかしら?」
キャルロットが二人の門番に呼びかけると、彼らは声を揃えて「合言葉をどうぞ」と言った。それに対してキャルロットは。
「昨日の晩御飯はお好み焼きっ!」
と、自信満々に答えたのだった。ちなみにこの時、キャルロット以外––––門番含む––––は、笑うのを必死にこらえていた。
「どっ、どうぞ」
「ええ、ありがと。じゃ、行きましょう?」
先を歩いていくキャルロットについて行く。中に入ると、メイドや執事などみんながみんな、彼女の方を向いて「おかえりなさいませ、キャルロット王女」と言うものだから、そういえばキャルロットは王女だったなあ、と実感した。
そして、王室に着いた。
「どうぞ」
二人の門番が、重そうなドアを開ける。
「失礼します」
そう言って入って行くキャルロットに倣って俺たちも続く。そして、王座まで十メートルくらいのところで、俺は達は跪いた。
「あ、おかえりキャルちゃん!」
聞こえてきたのは、能天気な声。俺はふと顔をあげてしまう。
「みんな、顔上げていいよー!」
その声に、全員が顔を上げる。そこにいたのは。
「あれ?女神様?」
「うん!久しぶりだね、玄人くんっ!」
まてやこら。「玄人くんっ!」じゃねえよ。
「女神様は王様なの?」
俺はふと疑問に思ったことを口に出してしまった。
「んーん、違うよー!王様はそこにいるよー」
そう言って指差した王座の方には、スマホをいじる男がいた……え、スマホ?
「まてまてまてまて色々おかしいだろうが」
「うんそうだね今から話すから落ち着いてくれるかなまずその手を離すところからはじめいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!」
「はっ!」
俺はいつのまにか掴んでしまっていた女神様の頭から手を離した。すると、「あだっ!」と言って、彼女はしりもちをついた。
「ご、ごめん」
「まったく、レディーは大切に扱ってよね!それじゃ、王ちゃーん!こっちきてー!」
「わかった」
王ちゃんと呼ばれたその男性が、王座から降りてきた。
「それじゃ、話し始めようか」
「まず、何から聞きたい?」
そうだな、とりあえず……
「なんでスマホがあるんだ?後、なんで女神様がここにいる?」
俺がそう聞くと、女神様が答えた。
「スマホの方は長くなるから、私がここにいる理由からね!んーと、神の力?かな?ちょくちょく遊びにきてるんだよねー」
ありがたみが薄い!神のありがたみがっ!
「それから、スマホなんだけど……まずは、この国のことからかな」
え、そんなに遡るの?もしかして、スマホってこの世界からの輸入品なの?
「えーっと、まずね、この国は、シャルミリアではあるんだけど、水の国ではないわ。以前キャルちゃんから説明があったと思うんだけど……この国は、大陸の中央に位置する、浮かぶ島なの」
ほー。となると、俺の頭の中の情報が八割がた崩壊するわけだな。
「でね。キャルちゃんからは魔族が住むって教わったけど……本当は、地球からの転生者が住んでるのよ」
「……え?」
「まあ、厳密に言えば、その子孫かな?」
「うん、わし六代目だよ」
王様が横から言ってきた。スマホいじりながら。
「ってことは、別に俺のスキルやらステータスやらは凄くないってこと?」
すると、女神様は首を横に振ってから行った。
「ううん、そうじゃないわ。スキルっていうのは、代を重ねるごとに力が薄まっていっちゃうから、あなたが強いことに変わりはないわ。まあ、ステータスはみんな同じようなものだけれど」
よ、よかった。ん?でも、それならさ……
「俺が転生するときに女神様が言ってた、『世界が危機』的なのも、こっちの人たちだけで解決できるんじゃないの?」
「そうでもないの。あのね、もうすぐで他の四つの国がほぼ同時期に戦争を始めて、ちょうどその頃に魔王が復活するみたいなのよ」
「それは女神パワーみたいなのでどうにかできないのか?」
俺がそう聞くと、女神様は悔しそうな表情で答えた。
「その、降りて来て生活とかは普通にできるんだけど……こっちだと、力があまり使えなくて……」
「あー……なるほどな。で、こっちの人たちだけで解決できないのはなんで?」
「この世界に魔法はあるけど、やっぱりスキルの方が強いのよ。でも、この国のみんなはスキルの力が薄れてきてるから」
「そうか。それで俺に協力してくれと」
「ええ」
「じゃあ、次の質問なんだけど」
別のことを聞こうとすると、女神様が少し焦ったように聞いてきた。
「まってまって、協力してくれるの?してくれないの?」
それに対して。
「協力はするよ」
「ほんと!?ありがとう!」
「あ、ああ。で、次の質問なんだけど」
「ええ!なんでもきいて!」
「なんでスマホがあんの?」
すると、王様がようやくスマホをいじるのをやめた。
「ん?これ?一つ欲しい?あげるよ」
なんだよ、いくつもあんのかよ。
「えーっと、それはね……」
女神様が言い淀み、フェルンが口を開いた。
「藤野 玄人、君が見ていたこの世界の多くが、幻影魔法だ」
俺、びっくりだよ。
「それ、本当か?」
「ああ。私とダークネスウルフ、あとは女神と校長……くらいか。この四人で君には幻影を見てもらっていた」
「ってことは、その四人は元から知り合いだったんだな」
「ああ、そうなんだが……気になるところはそこなのか」
いやだってさ、と俺は言う。
「まだまだこれから色々カミングアウトされそうだし、これで驚いちゃ精神的に持たないよ。どうせ最後はジャックが女だとか言い出すんだろ?」
「いや俺は男だ安心してくれっ!」
「今の言葉で玄人が平静を保てていないことはわかったわ」
そうか、驚けていない時点ですでに驚いていたってことか(?)。
「まあ、今見ている光景は幻影ではないがな」
「そ、そうか……で、なんでスマホがあるんだ?」
「それは、ここを出ればわかるから、後回しで頼む」
「あー……わかった。じゃあ、そろそろここに来ることになった理由の疑問を解決したいんだけど」
「ああ、なぜ我々が君を試していたのか、だったな」
「それについては、わたしから」
再び女神様の番らしい。
「えーっと、あなたをこの世界に転生させたのと、同じ理由よ」
なるほどな、結果的には強くするためってことか。
俺が頭の中でまとめていると、キャルロットが「あ」と何か思い出した様子で言ってきた。
「ちなみに、ジェネラルゴブリン三体もおんなじ理由ね」
その言葉を、俺は少しおかしいと感じてしまったが、それはすぐに解消された。
「あれは元々召喚士の使役するモンスターだし、まあ、なんて言うのかしら、私やジャックはあの程度のモンスターには負けないわ」
え、それってさ。俺より圧倒的に強いってことでは?
「え、ちょっと聞きたいんだけど。ここにいるみんなはレベル幾つなんだ?」
俺がそう聞くと、みんな口々に答えた。
「私は……二百くらいかしら?」と、キャルロット。「俺は二百六十くらいだったはずだ」と、ジャック。
「ふむ、私は……もうすぐ八百だな」と、校長先生。
え?ばけもん?
「わし、20年前に六百になってからソウルブック見てない」と、王様。
残りの三人は、レベルなどないらしい。
つまり、こういうことだ。俺以外、普通じゃない。
「で、次に聞きたいことは何かな?」
「え、ええっと〜……」
下手に聞いたら殺されそう。
「ま、気軽になんでも聞いてくれよ!」
と、ジャックが言ってくれたが、そんなことできないだろ。
「そ、そうだな……」
これだけは聞いておかないと。
「俺は結局どうすればいいんだ?」
その質問に答えたのは、女神様。
「とりあえず、戦争を止めて魔王は処す。くらいかな?あ、多分こっちにも攻めくるから、頑張ってね!」
よし、もう一回。
「まてやこら」
ここまで読んでいただきありがとうございます。




