45話 藤野 玄人、テストを受けました。
それからは、特に何事も起こらず、平穏な日だった。
「おー、ついに今日、テストか……」
心配だなぁ。本当に全く勉強してないからな。
「ま、悩んでも仕方ないな。行くか、学校」
「今日は編入生を紹介しまーす」
教室の中から声が聞こえてくる。
って、編入したときの自己紹介ってこんな緊張すんの?やばいやばいやばい!
「はーい、入ってくださーい」
荒ぶる心臓を抑えながら、ドアを開ける。
う、うおおお……教室、久しぶりに入るっ!
「え、あいつって……」「あの、決勝の……」「おい、やばいな」「え、ええ」
俺が中に入ると、生徒は……いや、クラスメイトは俺のことを指差して周りと話している。
「はーい静かにー。じゃあ、自己紹介よろしくね」
「はい。俺の名前は藤野 玄人です。これからよろしくお願いします」
俺は、日本で得た技術の一つである、綺麗なお辞儀を駆使する。
「はいっ、ありがとー。じゃあ、向こうの一番後ろの席に座ってねー」
俺は指定された席まで歩いていく。
「よいしょ」
俺が席に着いたのを見て、先生が話し始めた。
「じゃー、テストしましょうか!」
先生がパチン、と指を鳴らすと、机の上に紙が現れた。
「はーい、じゃあ始めてください!」
えっ、筆記用具どこやったっけ?ってか、持ってないな。
そう思い、周りも見ると、みんな指で書いている。俺もそれに倣って、指で書くことにした。
「えーっと、なになに……」
どうせ何もわからないだろうけど、一応やってみるか。
『魔力は体の何を通って流れているか、答えなさい』
わかりません。
おっ、書けた。よし、次だ。何も良くないけど。
『神はいるか』
わかりません。
『スキルは誰でも使えるか』
おっ、これならわかりそう……いや、赤ちゃんって使えるのだろうか?ということで。
わかりません。
『魔法は誰が生み出したか』
わかりません。
……といった具合に、全てわかりません。と書いておいた。途中で一問計算のようなものがあったけど、公式とかわかんないし、それもわかりません。だ。
それから、待つこと十分ほど。
「はーい、そこまでー」
先生が手を叩きながら終了の宣言をした。
「それじゃ、後ろから前に回答を送ってくださーい。今、先生が採点しちゃいます!」
全員が回答を前に回し、先頭が先生に渡す。
再び待つこと二十分。話せる相手もいないので、ずっと黙っていた。チラチラ見てくるのはいたが。
そういえば、キャルロットやジャック、のこりの四人も、別のクラスなんだな。ついでにディアブルも。
「おおおお!」
先生が声を出しながら採点している。あの手の動き的に丸だろう。つまり、高得点者がいたということだ。誰だろう。いいなぁ。
「ふっ、藤野君!」
えっ、おれ?
「は、はい」
「惜しい!九十五点です!でも、これは間違いなくトップでしょう!おめでとうございます!」
あ、あれ?
「す、すげえ!」「流石ね!」「何者だよ……」「今度教えてもらお」
クラスメイト全員が拍手している。勘違いされるのは困るので、言ってしまおう。
「いや、『わかりません。』って書いただけなんですけど」
ふぅ、これで大丈夫……
「すっ、素晴らしい!そうです!それが正解なんです!この国の人はみな、問い全てに答えがあると思っていますからね!『わからない』!そう答えることができる!それは、とても素晴らしいことです!」
「「「おおおお!」」」
……なんか、これからめんどくさくなりそうな気しかしないなぁ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




