44話 藤野 玄人、翌日を迎えました。②
「えーっと……フェルン?」
俺は悶えている美少女に聞く。
「あ、ああ……って、なぜお前がその呼び名を知っている!」
俺が答えようとすると、リビングからダークネスウルフが出てきた。
「フェルン!こっちだよ!はやくはやく!」
「––––っ!お前か、ダークネスウルフ!フェルンという呼び名を広めているのはっ!」
フェルンは、顔を赤くしながらプンスコと怒る。かわいい。
「いいじゃんそんなこと!それより、話があるから来たんだよ!はやくって!」
「んもぉぉぉ!分かった、行けばいいんだろっ!」
ドシドシと音を立てながら、フェルンは歩いていく。俺も、それに続いた。
「で、どうしたんだ?」
フェルンが落ち着いてから、話を始めた。
「ああ。昨日、王や王女を交えて話さなければならないと言っただろう?その話だ。それで、話す日なのだが……」
早いな、もう決まったのか。っていうか、キャルロットには話したのだろうか。
「十日後になった」
わお、割とすぐだな。
その話をしてからは、特にすることもなく、二人(二匹かも知れない)は帰っていった。
「そういえば、学校はいつから始まるんだ?」
今から聞きにいくか。
コンコン、と俺は職員室のドアをノックする。
「失礼します」
えーっと……こういう時は、どなたに伺えばいいのだろうか。
そう考えていると、目が合った先生が話しかけてくれた。
「どうしたんだい?藤野君」
どうやら、俺の名前は割と広まっているらしい。名乗ってもいないのに、俺の名前が出てきた。
「えっと、俺、編入が決まったんですけど、いつから登校したらいいんでしょうか」
「おお、おそらくどの先生方も知っているよ、おめでとう。ええっと、いつからだったか……ああ、そうだ、明後日からだな。その日に、テストがあるよ」
あー、聞きたくない。
「わかりました、ありがとうございます」
俺は失礼しました、と言って職員室を出た。
……と、向こうから男子生徒が歩いてきているのが見えた。
「おっ、玄人じゃねえか!」
ジャックだった。
「おはよう、ジャック」
「おっすおはよー」
ということは、今は休み時間だろうか。
「今、授業はやってないのか?」
そう聞くと、ジャックは小さな声で、俺だけに聞こえるように言った。
「いや、トイレって言って抜け出してきた」
なんていうか、予想通りっていうか。
「んなことより、お前、今度王様と話すんだろ?」
彼はいきなりそんなことを言ってきた。
「え、なんで知ってるんだ?」
「あー、フェルンから聞いたんだよ」
ジャックも、フェルンって呼んでるのか。っていうか、その呼び名を知ってるってことは、おそらくダークネスウルフとも話したんだな。
「ま」
そこから、ジャックは真面目な顔をして言った。
「正直、知った時は困ると思う。もしもそうなったら、俺を頼ってくれよ」
「ああ、ありがとう」
「んじゃ、俺は授業に戻るわ。もうすぐ、怪しまれる頃合いだからな」
こいつ、サボりのエキスパートだろ。
「ああ、頑張れよ、授業」
「おう、玄人も頑張れよ。明後日テストあるしな」
「お、おう……」
よし、街の本屋で参考書でも見てみるか……めんどいからいいや。
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