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32 第7章:新魔王軍の刺客、武闘派将軍ガロア

第7章 第2節


新魔王軍の玉座の間でクーデター派幹部たちが前魔王ルシアの処刑と首の持ち帰りを満場一致で決議したその日の夜。

新魔王軍において「最強の暴力」と「絶対的な破壊力」を誇る、魔王軍一の武闘派将軍ガロアは、自らの執務室で禍々しい漆黒の巨大斧を磨き上げていた。


ガロアは全身が鋼鉄の如き硬い外殻と、熔岩を思わせる赤黒い筋肉に覆われた身の丈二メートルを超える巨漢の魔族だった。狡猾な政治や謀略を嫌い、ただひたすらに「強者との戦い」と「暴力による支配」を信奉する生粋の戦闘狂(バトルマニア)である。


「ほう……あのポンコツ前魔王ルシアが、人間の村で男と一緒になってこたつでゴロゴロしているとな?」


ガロアは低く野太い笑い声を響かせた。

「クーデターのゴタゴタで新魔王軍の士気が下がっていたところだ。ちょうどいい。逃げ出した前魔王の首を叩き切り、我が斧の錆にして城の門に晒してやれば、愚図どもを一網打尽に引き締める最高の見せしめになるというものよ!」


ルシアがかつて放っていた『全戦意蒸発』のデバフのせいで、以前はガロアもどこか気だるさを感じていたのだが、ルシアが失踪して以降、彼の体内にはみなぎるような暴力衝動と殺気が満ちあふれていた。自分こそが新魔王軍の真の覇者であると信じ込むガロアにとって、前魔王の首級を挙げることは、自らの正当性を証明する絶好の機会だった。


「お言葉、頼もしい限りでございます、ガロア様!」


執務室の扉が力強く押し開かれ、ガロアの側近である副官が姿を現した。

「我が軍が誇る精鋭中の精鋭――『重装甲親衛隊』の編成が完了いたしました。魔界でも最高の硬度を誇る黒曜石のフルプレートアーマーを纏い、対人・対魔用の大型破城鎚(はじゅうづち)と魔導重砲を備えた100名の精鋭が、すでに城門前で待機しております」


「よし……!」

ガロアは磨き上げた巨大斧をガチャンと肩に担ぎ、獰猛な笑みを浮かべた。


「たかが人間の村落の片隅に隠れ住むポンコツ女と、元勇者崩れの一人や二人、我が親衛隊の圧倒的な重装甲と突撃の嵐の前に、一瞬で踏み潰してくれるわ! 全軍に出撃を命じろ! 目指すは、地図の端にある忌々しき『廃村』だ!」


「はっ!!」


副官が深く頭を下げ、すぐさま外へと駆け出した。


夜の魔王城の広場には、ガロアの号令のもと、ずらりと並んだ重装甲親衛隊の姿があった。

全員が魔界の最高級鉱石で作られた重厚な黒い鎧に身を包み、その巨体からは周囲の空気を凍りつかせるような凄まじい殺気と威圧感が立ち上っている。彼らは新魔王軍の中でも選りすぐりの武闘派であり、一国を単騎で滅ぼした実績を持つ怪物たちの集まりだった。


「進軍開始ッ! 一匹残らず叩き潰せぇ――ッ!!」


ガロアの咆哮を合図に、100名の重装甲親衛隊が大地を揺るがす足音を立てながら、王国のはずれにある名もなき廃村に向けて、漆黒の進軍を開始した。


彼らの頭の中にあるのは、「前魔王の首を斬り落とし、自分たちの武勇を天下にとどろかせる」という血生臭い栄光の二文字だけだった。

自分たちがこれから向かう場所が、あらゆる殺気や戦闘意欲を無慈悲に蒸発させ、極上のサウナと水風呂で骨抜きにする「極楽の魔境」であることなど、この時のガロアたちは露ほども知らなかったのである。


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