第二十七部 転入生 第六章
「あ、いたいた」
などと陽菜さんが走ってきた。
それで、動揺していたが、とりあえず隠した。
やばい真実を知ってしまったのがばれたらまずい。
どうしょうか?
「何がやばい真実なの? 」
などと香織が読唇術で俺の心を読んで聞きやがった。
いや、有希に読唇術がばれるだろうが。
「さっきからというか、今日の授業から神楽耶は何も言ってないのに香織とか心を察するよね。彩もそう言うとこがあるけど」
「ああ、唇の動きで思っている事が読めるのよ」
などと香織が平気で言ってしまう。
良いのか?
「へぇぇぇ、面白い特技があるのね」
「内緒ね」
「分かった」
「それで済むんだ」
などと俺が真顔で突っ込む。
そうしたら、そんな話で逃げなかったもんで、陽菜さんが俺の前に来ると俺の手に手錠をかける。
それと同時に背後から挟み撃ちにしようとしていたらしくて、槙が俺に後ろから手錠をかけた。
「確保ぉぉぉ! 」
槙が嬉しそうだ。
「はあああああ? 」
俺が動揺して聞いた。
「律蔵さんから逃がすなって言われたのよ」
「そーそー」
などと陽菜さんと槙が協力していやがる。
「ホテルで迎え撃つんじゃないのか? なんで、俺が囮? ええええ? 」
と言いながら、何となく察していた。
計画が変更になったのだ。
相手が想像以上の大物だった為に、ホテルでの囮が無理になったのだろう。
逆に殲滅されるくらいまずかったのかもしれない。
いや、まさか……そんなはずが……。
「その通り、それと向こうが対話の相手に神楽耶君を指定してきたのよ」
「はああああああああああああ? 」
「リアルにだますために、現状筆頭の妖の王の候補である我が君の名前を御前が言ってたらしいです」
などと今更に<蒼月>さんから情報を貰った。
「即逃げれば良かったぁぁああぁぁ! 」
「ああ、我が君、やはり逃げるんですね。そうじゃないかと律蔵さんからも聞いていたので」
「ふぁぁあぁ! あの爺さん、またそう言う事をしやがってぇぇぇ! 」
俺の怒りが止まらない。
また、やられた。
しかも、先に読まれていたか。
「まあ、相手が妖の王になる存在じゃないと、今後についても話があるだろうから、意味が無いしね」
陽菜さんが苦笑している。
「ほら、しょうがないよ」
などと嬉しそうに槙が笑った。
笑いやがった。
畜生、展開が変わり過ぎだろ。
「話すと言っても俺は子供だし」
「だから、逆に長生きすれば凄く息の長い話になるでしょ。妖同士の話なんだし」
「まだ決まってないじゃ駄目なの? 」
「我が君を指定してますしね」
「御前殺す。獅童を分離した後、めちゃめちゃにしてやる」
「多分、お爺さん、そう言う風に御前に神楽耶がキレるのも読んで利用しようとしているんじゃないのかな」
「はっ! 」
俺が爺さんにやられた数々の事を思い出す。
「なんだろ、このデジャブ。俺んちと一緒じゃん」
槙がちょっと悲しい顔をして俺を見ていた。
「だからと言って、俺が対応すんのかよ」
などと俺が呻く。
「もう少し、女性っぽく喋れば良いのに」
「やかましいわ! 」
槙が調子に乗っているように見えてムカつく。
「まあ、とにかく、向こうが会うって言っているらしいから、一旦、律蔵さんの家に行って今後どう動くか見極めないとね」
陽菜さんが苦笑した。
「あー、結局、俺に来るか」
俺の絶望感が凄い。
「あ、俺、嫌な予感がするわ」
などと槙がいきなり言い出す。
こいつ、逃げる気じゃないだろうな。
真面目にしれっとフェードアウトしようとしていた。
微妙に凄い奴だな。
などと思っていたら巨大な何かが槙の腕を鷲掴みにした。
「一応、わしが頼まれたからな」
「ああ、<ひとつ>さんだ」
彩が笑った。
身長二メートルを超える巨大な筋肉の塊のような鬼がいつの間にかいて、槙の腕をつかんでいた。
「ひょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 何、これ? これが鬼の棟梁の<ひとつ>さんんんん? 」
槙の動揺が激しい。
「一応、家臣として勤めるわけだから、当然、槙君も一緒に会って貰うって、六兵衛さんが……」
「はあああ? 曽祖父ちゃんは自分の就職がかかっているからっていい加減にしろよ! 俺は関係ないじゃん! ふざけんなっ! 」
などとじたばたするが、<ひとつ>さんの万力のような腕に掴まれたらなぁ。
「さすがねぇ。私が同時に神楽耶君を取り押さえる動きをしたら、その後に逃げるだろうから、油断させている間に<ひとつ>さんに掌握してもらう計画だったのよ」
などと陽菜さんが笑う。
碌なもんじゃねぇや。
最初から狙ってたんのか、これ。
最悪だな。




